- 完全ワイヤレスイヤホンで気になる“音ズレ”を技術視点で解決する!
- リップシンクの体感値とBluetoothコーデックを知る必要アリ!
- 汎用性を持たせた解決策は『低遅延モード』なのかも!
音ズレの訪れの解消。
完全ワイヤレスイヤホンで動画視聴やゲームをすると気になるのが“音ズレ”。Bluetoothコーデックによって、この音ズレ具合もさまざま。そこで、音ズレが訪れない完全ワイヤレスイヤホン選びを考えてみます。


ゲームも音ズレが気になるコンテンツのひとつですわね。

いわゆる『リップシンク』の問題やね。
目次
完全ワイヤレスイヤホンの音ズレ問題
至極当然のことですが、音声データをワイヤレスイヤホン/ヘッドホンに転送する際には、遅延(レイテンシー)というものが多かれ少なかれ発生します。
この遅延というものは音楽“だけ”を聞いているときには、多くの人がその遅延の存在を気にすることはほぼないでしょう。しかし、それが動画視聴やゲームをするという目的になった途端に、その遅延が音ズレという形で顕著に気になってきてしまいます。これがいわゆる、ワイヤレスイヤホンの音ズレ問題。

音ズレの訪れ!(激寒ギャグ)

ええ、0点ですわ。
そこで、今回のテーマなのが、完全ワイヤレスイヤホン利用時の音ズレをどう解消していくか、というもの。
ワイヤレスイヤホンの性質上、遅延ゼロ(ゼロレイテンシー)は当然無理。しかし、その遅延を人間が気にならない程度まで解消することは可能です。ですので、その音ズレ解消を技術的なアプローチから考えてみようというわけです。

それで壮大さを表現するのに、スターウォーズ風のドット絵を作ったわけですね?

そういうことやね!

ドット絵を作ったのはわたしだけどねー。
音ズレとリップシンク

完全ワイヤレスイヤホン利用時、特に音ズレを感じる場面があります。それは、ドラマや映画での、演者の口の動きと声がズレているというもの。おそらく、ここで初めて、音ズレの存在を強く認識する人も多いはず。

あれ…声が……遅れて………。

えーと、うちらはテキストだけだから音ズレは…起きないやんね。

…そうだったあーる。
画面に映し出されている人の口の動きとセリフのタイミングを一致させることや一致している状態を『リップシンク(Lip Synchronization)』と、映像業界では呼ばれています。
つまり、音ズレを感じる原因は、このリップシンクが音声データのワイヤレス転送によって不一致な状態になっている(リップシンクがズレている)からというわけです。日本音響学会に記載されている内容から考えると、人がリップシンクがズレていると感じる許容値のボーダーラインは、約125ms(=約0.125秒)と捉えてよさそうです。
要するに、このリップシンクのズレを感じるボーダーライン、125ms。これを下回るようなワイヤレス転送を行えば、今回のテーマである音ズレの解消が達成できるというわけになります。
音ズレとBluetoothコーデック

音声データのワイヤレス転送方式にもいろいろありますが、完全ワイヤレスイヤホンに限って見てみると、大半が『Bluetooth』という近距離無線通信規格を使って転送しています。そこで、ここからはBluetoothと遅延について考えていきます。

Bluetoothの『A2DP』というプロファイルを使って、音声データを転送してるって感じやね。

よく耳にする『AAC』とか『aptX』とかですなっ!
SBC | AAC | aptX | aptX LL | aptX HD | aptX Adaptive | LDAC | HWA | |
信号処理 | 48kHz/16bit | 48kHz/16bit | 48kHz/16bit | 48kHz/16bit | 48kHz/24bit | 48kHz/24bit | 96kHz/24bit | 96kHz/24bit |
遅延 | 約220ms | 約120ms | 約70ms | 40ms未満 | 約130ms | 50ms〜80ms | 1,000ms前後 | 不明 |
音ズレ | × | △ | ○ | ○ | △ | ○ | × | ? |
各Bluetoothコーデックの仕様
転送するビットレートによって遅延のレベルも変化してくるのですが、
- aptX
- aptX LL(aptX Low Latency)
- aptX Adaptive
という、3つのBluetoothコーデックを利用すれば、前述した音ズレは感じないと理論上は言えそうです。AACコーデックも、ビットレート次第では音ズレを感じないレベルかもしれません。
音ズレ解消の最適解

iPhone・iPad | Android |
SBC AAC |
※ |
デバイス別のサポートするBluetoothコーデック
※Androidの場合は端末によって、サポートするBluetoothコーデックが異なる。
音ズレが気にならないであろうBluetoothコーデックが分かりましたが、そのBluetoothコーデックが送信機側も対応していないといけません。ですので、多くのユーザーが利用しているであろう、iPhone・iPadとAndroidの2つに分けて、音ズレ解消の最適解を考えていきます。
iPhone・iPadの場合
iPhoneやiPadは『SBC』と『AAC』という、2つのBluetoothコーデックしか対応していません。なので、音ズレを解消するには“ワイヤレスイヤホン側の付加機能”が必要になってきます。
一部の完全ワイヤレスイヤホンには『低遅延モード』や『ゲーミングモード』といった名前で、Bluetooth転送による遅延を抑える機能を独自に持っているものがあります。ですので、iPhoneやiPadで音ズレを解消する最適解としては、これらの独自機能を持った完全ワイヤレスイヤホンを使う、というのがベストと言えそうです。
例えば、Razer『Razer Hammerhead True Wireless Earbuds』は、ゲーミングモードにすると60msまで遅延を抑えることが可能。ほかにも、EarFun『EarFun Free Pro』の低遅延モードを使えば、遅延を100ms以下にまで抑えられます。ですので、音ズレが気になるのであれば、このような製品を選ぶのが良さげ。
Androidの場合
Androidの場合は、デバイスごとで対応Bluetoothコーデックが異なってきます。ですので、『aptX』や『aptX LL』に対応している場合は、それらのBluetoothコーデックに対応した完全ワイヤレスイヤホンを購入して使えば万事解決。
もちろん、iPhone・iPadの場合で紹介したような、『低遅延モード』や『ゲーミングモード』を持った完全ワイヤレスイヤホンを使うのもアリ。より汎用性を持たせて使いたいのであれば、対応端末の限られるaptX LL対応の完全ワイヤレスイヤホンを購入するよりも、これらの低遅延モードを持った完全ワイヤレスイヤホンを選ぶほうがベターかもしれません。
まとめ「音ズレ解消のカギは『低遅延モード』かも」

最後に、完全ワイヤレスイヤホンにおける音ズレ問題について要約すると、
- 音ズレが気になる原因は『リップシンク』のズレ
- リップシンクに違和感を感じるボーダーラインは約125ms
- Bluetoothコーデックによって音ズレのレベルは変化
- aptX・aptX LL等は音ズレが理論上は気にならない遅延レベル
- 完全ワイヤレスイヤホンによっては独自機能で低遅延を実現
…という感じになってきます。
『aptX LL』にさえ対応していれば万事解決…なのですが、実際はiPhoneを含めて非対応なデバイスが多いのが現実。一応、aptX LL対応のBluetoothトランスミッターなるものもあるのですが、これらは据え置き用でモバイルには不向き。
ですので、完全ワイヤレスイヤホンにおける音ズレ解消の最適解は、『低遅延モード』や『ゲーミングモード』と呼ばれる独自の機能を持った製品を選ぶ、ということに落ち着きそうです。

ゲーム向けのワイヤレスイヤホンを探してみると、低遅延を謳っている製品が多いから、そのあたりを探していくのがいいかもやね。
おまけ

うん、スターウォーズが見たくなったあーるっ!

イヤホンと無関係ですわね。

そういえば、“A long time ago in a galaxy far, far away....”の和訳って、“遠い昔、はるか彼方の銀河系で”になってるけど、英語的には誤訳みたいなんよね。

48へぇあーるっ!

…え、低っ!!
おわり
映画とかドラマを見てると、声と口の動きのズレが気になるよねー。