- iMacとMac miniを同条件に近づけて徹底比較!
- 省スペースとCPUを取るならiMac Retina 5K!
- 自作PCライクな拡張性とGPUを取るならMac mini!
クリエイター的な据置Mac比較。
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)を、“デザイン・開発・写真編集”という利用用途に基づいて、スペック比較・価格比較をしてみました。両Macをできるだけ、同じような環境にしたときに、どれくらいのコストになるかというのも一緒に計算してみました。
一体型と単体デスクトップの差ですわね。
比較候補がiMac ProやMac Proじゃないのもミソやね!
目次
序章:利用用途と比較前提条件の解説
想定している読者
- Adobe CCを利用する人
- 写真編集をする人
- Web制作をする人
- APP開発をする人
本記事は、いわゆるガジェット的な比較ではなく、デザイン・開発・写真編集を目的としたMacを求めた場合の比較になります。なので、“○○が買い”的なネタではありません。
iMac Retina 5K(2019)かMac mini(2020)、どちらか1台を購入し、同じような金額の投資をするならば、どちらのほうが実務的にベターな選択になるのかということを考えたものです。なので、ところどころ意味不明な比較をしていますが、これらは私が仕事で使うことを考えた結果そうなっている、と解釈してもらえたらと思います。
ちなみに予算は40万円前後を想定しているあーるっ!
Macの利用用途
- Photoshopでの写真編集
- Illustratorでのデザイン制作
- Lightroom Classicでの写真現像
- AtomやDreamweaverでのWeb開発
- Visual StudioやXcodeでのAPP開発
Macでの主な利用用途や作業内容は上記のとおり。
ざっくり言うと、デザイン・開発・写真編集の3つから構成されています。動画編集やVRに関しては含んでいません。ただ、将来的にするかもしれない(多分しない)ことも想定して、GPUに関しては妥協しないように構成します。
比較条件と前提
- 吊るしモデルは一切考慮しない。
- 両Macで合わせられるスペックは合わせる。
- 両Macの予算は現実的な範囲で合わせる。
- Mac miniはモニター・マウス・キーボードも用意する。
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)を、比較するにあたっての前提条件は上記のとおり。
RAMやROM(ストレージ)の容量に関しては、フェアに比較するために容量を合わせています。CPUやGPUに関しては、合わせようがないので、搭載可能な最上位のコンポーネントを選択しています。そういうわけなので、当然ですが、CTO前提です。
Mac miniには、ディスプレイ(モニター)・マウス・キーボードが付属していないので、これらについても別途用意します。当然、このコストも比較対象。マウス・キーボードに関しては、Apple純正(Magic Keyboard・Magic Mouse 2)を採用。ディスプレイに関しては、デザインや写真編集にも使うことを考慮して、コストを考えつつ広色域のディスプレイを採用します。
▽iMac Retina 5K(2019)
▽Mac mini(2020)
第1章:各MacのCTO構成表
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
||
価格 | 388,800円 | 172,800円 | |
CPU | Intel Core i9-9900K (3.6GHz・8コア16スレッド) |
Intel Core i7-8700B (3.2GHz・6コア12スレッド) |
|
GPU | iGPU | Intel UHD Graphics 630 | Intel UHD Graphics 630 |
dGPU | Radeon Pro Vega 48 | - | |
RAM | 16GB(2,666MHz・DDR4) | 16GB(2,666MHz・DDR4) | |
ROM | SSD | 1TB(PCIe) | 1TB(PCIe) |
ディスプレイ | 画面サイズ | 27インチ(16:9) | - |
画面解像度 | 5,120 × 2,880(5K) | - | |
ネットワーク | 無線LAN | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
有線LAN | 10/100/1000BASE-T | 10/100/1000BASE-T | |
Bluetooth | Bluetooth 4.2 | Bluetooth 5.0 | |
インターフェース | USB 3.0 Type-A ×4 Thunderbolt 3 ×2 RJ-45 ×1 3.5mmステレオミニジャック ×1 SDXCカードスロット ×1 IEC C13 ×1 |
USB 3.0 Type-A ×2 Thunderbolt 3 ×4 HDMI ×1 RJ-45 ×1 3.5mmステレオミニジャック ×1 IEC C7 ×1 |
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)のスペック比較。
そういうわけで、iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)を、前掲の比較条件のもと、Apple StoreのCTOで構成してみました。その構成スペックの比較が上表です。
この状態で比較してしまうと、
- スペック:iMac Retina 5K(2019)の勝利
- 価格:Mac mini(2020)の勝利
という、当たり前な結果になるので、これからMac mini(2020)に足りていない部分(コンポーネント)を強化していきます。
最終的な価格比較は最後に発表するあーる!
第2章:各Macのスペック比較
CTOでのiMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)の構成が固まったので、お次はCPUとGPUについてのスペックとベンチマーク比較をします。
このCPUとGPUのベンチマーク結果を考慮して、第3章でのコンポーネント選定を考えていきます。なお、RAMやROM(ストレージ)に関しては、両方とも同スペックということもあり、こちらについての比較は省略しています。RAMに関しては、私は16GBで構成していますが、予算に余裕があれば32GBで構成してもよいでしょう。
CPU比較
まずは、後で構成変更できないCPU部分っ!
搭載CPU
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
CPU | Intel Core i9-9900K (3.6GHz・8コア16スレッド) |
Intel Core i7-8700B (3.2GHz・6コア12スレッド) |
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)の搭載CPU。
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)に、採用されているCPUは上表のとおり。
iMac Retina 5Kにしても、Mac miniにしても、CPUは換装不可。なので、仕事で長期間使うことを考えると、ここのスペック差については要注目。
CPUベンチマークスコア
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
Single | 1,637 | 1,080 |
Multi | 8,375 | 5,353 |
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)のCPUベンチマーク比較。
各Macに搭載されているCPUのベンチマークスコアを、シングルコアとマルチコアに分けて上表にまとめてみました。なお、CPUスコアはGeekbench Browserを参考にし、その掲載されていたスコアを平均値として再計算したものです。
iMac 5K Retinaは、Core i9。Mac miniは、Core i7。
どうしてもこの差がベンチマークスコアに出てしまっている印象。どちらもデスクトップ向けCPU(Intel Core i7-8700Bは、デスクトップ版Intel Core i7-8700と同仕様)なのですが、やはり両者には壁があった模様。
参考までに言うと、
iMac Retina 5K > MacBook Pro 16″ > Mac mini > MacBook Pro 13″
という感じのCPUスコアだと思います。(当然、構成によって差は変化する)
GPU比較
続いては、eGPU導入も視野に入るGPU部分っ!
搭載GPU
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
iGPU | Intel UHD Graphics 630 | Intel UHD Graphics 630 |
dGPU | Radeon Pro Vega 48 | - |
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)の搭載GPU。
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)に採用されているGPUは上表のとおり。
iMac Retina 5K(2019)には、dGPUとして『Radeon Pro Vega 48』が搭載されていますが、Mac miniはiGPU(Intel UHD Graphics 630)のみ。これだと、Mac miniの完全敗北確定。ただ、GPUに関しては、eGPUを導入できるのが最大のキモ。
GPUベンチマークスコア
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
||
Metal | iGPU | 3,774 | 3,774 |
dGPU | 49,589 | - | |
OpenCL | iGPU | 5,016 | 5,016 |
dGPU | 50,108 | - |
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)のGPUベンチマーク比較。
各Macに搭載されているGPU(iGPU・dGPU)のベンチマークスコアを、グラフィックAPI別(Metal・OpenCL)に上表のまとめてみました。なお、GPUスコアに関してもGeekbench Browser(Metal・OpenCL)を参考にしています。
第3章:コンポーネント選定
さて、iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)のCPUとGPUのベンチマークスコアを比較してきましたが、Mac miniのGPUがとにかく非力(CPUはどうすることもできないので気にしてはいけない)だということが分かります。
ですので、GPUの強化も含めて、ディスプレイと一緒にコンポーネント選定をしていきます。
eGPU選定
まずは、Mac mini(2020)のGPUを強化していくぞー!
Mac miniには、Thunderbolt 3が搭載されているので、こちらを利用してeGPU(外付けグラフィックプロセッサー)を別途用意します。
MacでeGPUを利用する際の注意点
大前提として、eGPUを選考するにあたって…
- GPUはAMD製Radeonしか使えない
- Apple推奨のeGPUボックスを利用
- Apple推奨のRadeon GPUを選ぶ
という3点を気をつけないといけません。
昨今のMacシリーズの流れから見ても分かるように、AppleはNVIDIA製GPUを搭載しておらず、同社のGeForceやQuadroをサポートしていません。なので、必然的にAMDのRadeonシリーズを選択することになります。
また、eGPUボックスに関しても、Appleが推奨する製品を選ぶように公式で表記されています。なので、こちらに関しても注意しないといけません。
Mac mini用に用意するeGPU
- GPU:Radeon RX 5700 XT(SAPPHIRE PULSE RX 5700 XT 8G GDDR6)
- eGPUボックス:Razer Core X Chroma
以上を踏まえて、今回Mac mini(2020)用に用意するeGPU用コンポーネントは上記のとおり。
■eGPU利用なし
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
Metal | 49,589 | 3,774 |
OpenCL | 50,108 | 5,016 |
eGPU利用前のGPUスコア比較。
■eGPU利用あり
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
Metal | 49,589 | 49,631 |
OpenCL | 50,108 | 73,211 |
eGPU利用後のGPUスコア比較。
GPUがIntel内蔵のものしか使えないMac mini(2020)でしたが、eGPUを導入することにより、iMac Retina 5K(2019)以上のスコアを叩き出してくれるようになりました。なお、GPUスコアはGeekbench Browser(Metal・OpenCL)を参考にしています。
ディスプレイ選定
お次は、Mac mini(2020)に合う広色域ディスプレイを選ぶぞー!
色域カバー率を考慮して選定する
以前にレビューしたとおり、iMac Retina 5Kには非常に高精細・広色域のディスプレイが採用されている。画面解像度が5K(5,120 × 2,880)というのもそうなのですが、色域がsRGBをほぼフルカバーしている点やDisplay P3のカバー率が高い点も、ディスプレイ選定で考慮しないといけない。
ただ、iMac Retina 5Kは、Adobe RGBのカバー率は非公開ですが、使っていて緑が弱い印象でした。裏を返せば、ディスプレイをしっかりと選定すれば、iMac Retina 5Kに“圧倒的”なアドバンテージをつけられるというわけなのです。ですなの。
なんだか、Mac mini寄りな発言ですわね……。
Mac mini用に用意するディスプレイ
- 動画重視:BenQ PD3220U
- 写真重視:BenQ SW321C
以上を踏まえて、今回Mac mini(2020)用に用意するディスプレイは上記のいずれか。
PD3220U | SW321C | ||
ディスプレイ | 画面サイズ | 31.5インチ(16:9) | 32インチ(16:9) |
画面解像度 | 3,840 × 2,160 (UHD 4K) |
3,840 × 2,160 (UHD 4K) |
|
色域カバー率 | sRGB | 100% | 100% |
Adobe RGB | - | 99% | |
DCI-P3 | 95% | 95% | |
Display P3 | 95% | 95% | |
NTSC | - | - | |
Rec.709 | 100% | 100% | |
Rec.2020 | - | - |
PD3220UとSW321Cのスペック比較。
ディスプレイについて話すと長くなるので割愛するのですが、
- PD3220U:Adobe RGB値がiMacぐらいでいいけどThunderbolt 3入力が欲しい
- SW321C:USB-C入力でもいいけどAdobe RGBのカバー率はほぼ100%欲しい
という買いわけでよい気がします。
ちなみに、どちらもUSB Type-C(PD3220UはThunderbolt 3)入力を備えており、USB PDによる電源供給にも対応しています。なので、Mac mini用と言わず、MacBook Proを持っている人なら、買っておいて損はないディスプレイでしょう。なお、当然ですが、画面解像度はいずれも4K UHDです。
第4章:価格比較
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
Mac本体 | 427,680円 | 190,080円 |
ディスプレイ | - | 148,785円¹ |
キーボード | - | 10,780円 |
マウス | - | 8,580円 |
eGPUボックス | - | 50,380円¹ |
グラフィックボード | - | 37,180円¹ |
合計 | 427,680円 | 445,785円 |
同等構成にした場合の価格比較。
※価格はすべて税込価格。
¹2020年7月8日時点のAmazonでの販売価格。
これまでの各MacのCTO構成とコンポーネント選定を踏まえて、iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)の最終的な価格比較をしたのが上表になります。
意外と価格は似たような感じなんやね!
そうなると判断が難しいですわね……。
終章:省スペースを取るならiMac・拡張性を取るならMac mini
iMac Retina 5K (2019) |
Mac mini (2020) |
|
価格 | ○ | △ |
CPU | ○ | △ |
GPU | ○ | ◎ |
ディスプレイ | ○ | ◎ |
設置スペース | ◎ | × |
iMac Retina 5K(2019)とMac mini(2020)の総まとめ比較表。
以上のことを踏まえて、最終的なまとめに入るとこんな感じ。
iMac Retina 5K:省スペースで使いやすいけど中途半端になりがち
『iMac Retina 5K(2019)』の良いところは、なんと言っても本体さえ買ってしまえば、それですべてが完了してしまう利便性の良さ。しかも、一体型パソコンなので、設置スペースのことを一切考えずに自由な配置ができるのも、大きな魅力と言えるでしょう。
しかし、写真編集やデザイン業務を本当に突き詰めていくのならば、ディスプレイの品質が中途半端とも言えてしまいます。GPUに関しても、搭載dGPUのスペックは良いものの、これですべてができるかと言えれればそうでもない。かと言って、eGPUを導入すると…もはや意味不明になってきます。
この絶妙かつ微妙なバランス感覚が、iMac Retina 5K(2019)を選ぶ際のポイントになってくるでしょう。
あと20万円追加できるなら、iMac Proも視野に入ってくるからねー。
Mac mini:自作PCライクな拡張性が魅力もCPUがボトルネック
『Mac mini(2020)』の良いところは、Mac Proを除くMacシリーズの中で、非常に自由度が高く拡張性に富んでいること。RAM以外がオンボードとは思えないくらいの“自作PCらしさ”があったりします。単体では非力なGPUですが、eGPUのおかげで底上げができるのも魅力。
しかし、いろいろコンポーネントを追加すればするほどコスト高。まだそれは許容できるとして、GPUを強化していくにつれ、CPUが置いてけぼりになるのがネック。さすがにCPUをThunderbolt 3経由で入力…はできないので。
なので、CPUはあまり使わないけど、GPUを多く使うソフトを利用しているかどうか、というのがMac mini(2020)を選ぶ際のポイントになってくるでしょう。
ただ、Mac Proは現実的じゃないから…うーむ。
まとめ「意外と難しいデスクトップMac選び」
かなり長くなってしまいましたが、
を、デザイン・開発・写真編集という3点に基づいて、CTO構成とコンポーネント選定をして比較をしていきました。
両機種とも40万円強という価格になりましたが、iMac Retina 5KならSSDの容量を下げる、Mac miniなら持っているディスプレイを使い回す、ということでコストを下げることが可能です。ただ、仕事でメインマシンとして活用するのであれば、ある程度の予算感は覚悟しておかないといけないかもしれません。
結果的には、あまり価格は変わらないって感じになったのであった……。
おまけ
結局、どちらを選ぶのですか?
iMac Retina 5Kは使ってたこともあるし、Mac miniかなー。ディスプレイも持っているから、コストは抑えられそうだし……。
問題はeGPUの動作の安定具合やね。
うむぅ…そこも気になる点だよねー。
おわり
今回比較して思ったのは、
っていうことなんだよねー。