市場から有線ヘッドホン(中価格帯)が消えつつある理由の考察

市場から有線ヘッドホン(中価格帯)が消えつつある理由の考察
サイト内の外部リンクはアフィリエイト広告を含む場合があります(詳細はプライバシーポリシーを参照)
記事のポイント
  • 中価格帯の有線ヘッドホンの種類が減ってきている!
  • 代わりにBluetoothヘッドホンが急増している!
  • 理由はとりまく環境の変化とユーザーの二極化!

ワイヤードの憂鬱。

世の中は“ワイヤレス”全盛期。イヤホンもヘッドホンもBluetooth搭載が主流になり、それに付随してアクティブノイズキャンセリング機能まで。…そこでふと思うこと。各メーカーの有線ヘッドホンのラインナップ……確実に減ってない?今日はその考察のお話。

さたえり

もともと数種類しか出していないメーカーとかは、特に顕著に減ってるんよね……。

まの

メーカーによるわけですね。

二条ねこ

BluetoothとANCヘッドホン全盛期だもんねー。

有線ヘッドホンの種類が減った

減りつつある、有線ヘッドホンの種類。

減りつつある、有線ヘッドホンの種類。

「持っている、イヤホンとヘッドホンの機種を教えて!」

まの

AirPods Proですわ。

二条ねこ

WF-1000XM3なりっ!

…そのように周囲の人に聞くと、とにかくBluetoothヘッドホンや完全ワイヤレスイヤホンがとにかく多い。中には、iPhone付属のEarPodsを使っている人もいるが、音楽にある一定以上の興味がある人に絞ると、ほぼほぼメインに使っているのは無線接続のもの。かくいう、私もそのひとりだったりします。

これは無線ヘッドホンが増えたという相対的なことも含め、そもそもの有線ヘッドホンのラインナップが減ったという絶対的なこともあるような気がしています。

生産完了は狙い目。MDR-Z1000とTHP-01が激安なので確保したぞ!

生産完了は狙い目。MDR-Z1000とTHP-01が激安なので確保したぞ!

2020年8月9日

中価格帯ヘッドホンが特に減った

中価格帯ヘッドホンが特に減った

ひとくちに“有線ヘッドホン”と言っても、価格はさまざま。その中でもとりわけ、3万円〜5万円に属する中価格帯ヘッドホンが減ったような印象が個人的に強い。もっと絞ると、特に海外メーカーで、そもそものラインナップ数が少ないメーカーほど、有線ヘッドホンの種類の減少が顕著な気がします。

例として思い浮かぶメーカーは、Bang & Olufsen・Master & Dynamic・Bowers & Wilkinsなどなど。

さたえり

今回は『Bowers & Wilkins』を例にして話していくやよ!

Bowers & Wilkinsとは、オーディオマニアならご存知の英国の高級スピーカーメーカーであり、同名のブランド。そんなBowers & Wilkinsですが、ヘッドホンやイヤホンも少数ながらラインナップしています。

Bowers & Wilkinsの現行製品は、なんとすべてワイヤレスヘッドホン!

Bowers & Wilkinsの現行製品は、なんとすべてワイヤレスヘッドホン!

■現行製品

  • PX7 Wireless Headphones(無線)
  • PX5 Wireless Headphones(無線)
  • PX Wireless Headphones(無線)

■生産完了品

  • P9 Signature(有線)
  • P7 Mobile Hi-Fi HeadPhones(有線)
  • P5 Mobile Hi-Fi HeadPhones(有線)
  • P3 Mobile Hi-Fi HeadPhones(有線)
  • P7 Wireless(無線)
  • P5 Wireless(無線)

すべてではないですが、Bowers & Wilkinsがリリースしたヘッドホンを、現行製品と生産完了品に分けてみると、一目瞭然。なんと、現行製品は総じて無線(Bluetooth)ヘッドホンしかないという事実。

SonyやAudio-Technica、Sennheiserなど、数多くのヘッドホンをリリースしているメーカーはここまで顕著ではありません。ただ、もともとのラインナップ数が少ないメーカーは、本例のBowers & Wilkinsのように、 有線 → 無線 というラインナップ変化が如実に表れています。

さたえり

Bluetoothヘッドホンもいいけど、ここまで極端やと…ね。

高価格帯ヘッドホンは実は増えた

高価格帯ヘッドホンは実は増えた

さて、「じゃあ、有線ヘッドホンは絶滅するの?」と言いたくなるかもしれませんが、実はそんなことはなく、10万円以上の高価格帯ヘッドホンに関しては、むしろバリエーション豊富になってきています。

高級有線ヘッドホンは、むしろ規模が大きくなってきている。

高級有線ヘッドホンは、むしろ規模が大きくなってきている。

高価格帯ヘッドホンをバンバン出すことでおなじみ(?)のULTRASONEも健在。SonyやAudio-Technicaも、以前に比べて超弩級の有線ヘッドホンを積極的に出しています。比較的新しいところだと、Campfire Audioとかとか……。

有線ヘッドホンが減っている理由

そんな減りつつある有線ヘッドホンですが、ラインナップが縮小していっている理由を考えてみました。

■有線ヘッドホンが減っている理由

  • リスニングスタイルの変化
  • スマホのイヤホンジャック廃止
  • 無線ヘッドホンのガジェット化

思い浮かぶところだと、上記の3つがそれっぽい。なので、もうちょっと深堀りしてみます。

【理由1】リスニングスタイルの変化

【理由1】リスニングスタイルの変化

まず1つめは、リスニングスタイルの変化。つまり、ユーザーがオーディオを楽しむ環境が変わってきたということ。

ポータブルオーディオが、現在のリスニングスタイルの中心にいる存在。いわゆる、コンポやCDプレーヤーで音楽を楽しむユーザーは、かなり少数派になっているはず。現に、高級オーディオは別として、普及価格帯の“コンポ”と呼ばれる製品には各社とも力を入れていません。そして、ポータブルオーディオと言っても、ほとんどの人が使っているのは専用機ではなく、いわゆるスマホ。これは、SpotifyやApple Musicなどの、音楽ストリーミングサービスとの兼ね合いもあるはず。

そう、現在のリスニングスタイルの主流は、いかに気軽に音楽を楽しめるかというものなのです。

【理由2】スマホのイヤホンジャック廃止

【理由2】スマホのイヤホンジャック廃止

次に2つめの理由が、スマホのイヤホンジャックの廃止。つまり、物理的にステレオミニジャックがないので、有線ヘッドホンが使えないということ。

これは1つめのリスニングスタイルの変化と連動しており、
スマホで音楽を聞く → イヤホンジャックがない → 無線ヘッドホンを使う
という、至極当然のフローが出来上がります。

もちろん、私みたく、スマホとは別にデジタルオーディオプレーヤー(DAP)を利用する人もいます。でも、スマホで聞けるのにわざわざDAPを買う必要はない、と思う人の気持ちも分からなくないですし、きっとそういう人が多いんだろうなとは思っています。

要するに、物理的に有線ヘッドホンが使えない環境なので、おのずと無線ヘッドホンを使っているわけなのです。

私がWALKMAN NW-ZX500を購入した理由—聞くから聴くへの移行段階

私がWALKMAN NW-ZX500を購入した理由—聞くから聴くへの移行段階

2020年7月21日

【理由3】無線ヘッドホンのガジェット化

【理由3】無線ヘッドホンのガジェット化

最後に3つめの理由が、無線ヘッドホンのガジェット化。つまり、アクティブノイズキャンセリング機能や外音取り込み機能などの+αな機能を取り込んでいって、ガジェット的アイテムに進化したということ。

アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載したヘッドホンは以前からありますが、最近ではBluetooth化することにより、なんていうか…もはやガジェット。完全ワイヤレスイヤホンなんて、ガジェットの極み的なオーディオ機器だと捉えています。

どうしてそこがガジェットにつながるかというと、この手のBluetoothやANCを搭載したヘッドホンやイヤホンというのは、スマートフォンと連動する専用のコンパニオンアプリがリリースされています。そうです、最初からスマートフォンで使うことを、メーカー側が大前提としているのです。うーん、理由1や理由2とリンクしてきました。

とどのつまり、ヘッドホンをガジェット化することによる一般層のメリットが多く、そのガジェット化により世間の注目度が上がり、メーカーもそのような製品に注力するようになるというわけなのです。

ポータブルオーディオは二極化する

ポータブルオーディオは二極化する

数年前から思っていたことなのですが、これからポータブルオーディオは完全に二極化していくでしょう。

  • マニア層:高級DAP・有線接続・バランス接続・ハイレゾ音源
  • ライト層:スマホ・無線接続・音楽ストリーミングサービス

…こんな感じで、音楽を聞くための機材からその環境まで、もはや別物の儀式行為でも行っているのかと思うくらいに、まったく違うものになってくる予感がひしひしとしてきています。というか、すでにそうなっているはず。

ポータブルオーディオが二極化することで、価格的も中途半端(という印象がある)な3万円〜5万円の有線ヘッドホンは自然と消滅してきています。もちろん、この価格帯にも“美味しいヘッドホン”はあったのですが、今回話した背景から、この価格帯のヘッドホンはごっそり、ANC搭載Bluetoothヘッドホンに置換されています。

鶏が先か卵が先かは分かりませんが、昨今のポータブルオーディオをとりまく環境が変わったために、今回の主題である“有線ヘッドホンの消滅”という結果になっているのでしょう。

有線と無線はまったくの別物

当然ですが、有線ヘッドホンと無線ヘッドホンはまったくの別物。いや、有線ヘッドホンにBluetoothを搭載したら、それは無線ヘッドホンということでもないのです。…なんというか、向いているベクトルが違う。

有線ヘッドホンというのは、フィルムカメラに近いものを感じていて、その行為(ここでは音楽を聞くこと)に向き合う、ある種の“儀式”をするためのアイテム。なので、利便性や技術的先進性を求めるのではなく、ただただ音質を追求するアナログの延長でないといけない。
無線ヘッドホンというのは、話してきたようにガジェットそのもの。音を追求することは当然として、そこにどんどん付加価値を付けていく方向性。なので、面白さや先進性を求めることになり、それはいかにもデジタルのそれ。

要するに、有線ヘッドホン・無線ヘッドホンに優劣なんて存在せず、向いているベクトルが異なるため、それぞれを好むユーザーも分かれてくるというわけです。なので、いくら無線ヘッドホン全盛期と言っても、高価格帯のヘッドホンが全部Bluetooth化するなんてあり得ない話なのです。

さたえり

ユーザーの嗜好の細分化の結果って感じやね。

まの

それだけヘッドホン人口が増えたという表れですね。

まとめ「高価格帯は有線・中価格帯は無線…の時代へ」

まとめ「高価格帯は有線・中価格帯は無線…の時代へ」

本記事は、ただの考察記事なので、実際のところは別の意図やファクターがあるかもしれません。ただ、中価格帯の有線ヘッドホンのラインナップ減少については、いちユーザーとして、凄く肌で感じています。

Bluetoothヘッドホンやアクティブノイズキャンセリングヘッドホンの市場が確立した今、その価格帯とバッティングしてしまう中価格帯の有線ヘッドホンは、自然と消えていってしまう宿命なのかもしれません。

さたえり

手が出しやすい有線ヘッドホンが減ってきちゃったんよね…困る。

この記事で紹介したガジェット

おまけ

さたえり

10万円クラスの有線ヘッドホンを“一生モノ”として買うのはアリなんよね。

まの

悩みどころですわね。

二条ねこ

こうやって、ハイエンドヘッドホン沼にも堕ちていくあーる。

おわり