- 外付けSSDの転送速度を M1 vs M1 Max で比較対決!
- M1 Macの外付けSSD速度は遅いのがネックだった!
- I/O面は AMD & Apple Silicon < Intel ということかも!
“Intel並みの速度は出る?”
M1 Max MacとM1 MacにあるThunderboltポートに外付けSSDを接続して、転送速度をベンチマーク比較しました。果たして、M1 Macの“外付けSSD速度低下問題”は解決したのでしょうか?
そして、この認証済ケーブルの山。
用意周到やね!無駄に!!
目次
はじめに
本稿の目的
Apple Silicon(M1・M1 Pro・M1 Max)搭載のMacには、I/Oポートとして『Thunderbolt』が搭載されています。
この搭載されているThunderboltポートに外付けSSDを接続して、その転送速度がどれくらい出ているのかを比較調査する…というのが、本稿の目的になります。
なお、Apple Silicon MacにおけるSSDの転送速度を調べるわけですが、筐体に内蔵されたSSD(Apple Fabric接続)ではなく、あくまで“外付け”SSDの速度(Thunderbolt/USB接続)についてなので、そこだけ混同しないように注意してください。
SSD性能じゃなくて、Thunderbolt/USBコントローラに注目した検証であーる。
M1 Macの“外付けSSD速度低下問題”
なぜ、このような検証を行う必要があるのか。
それは、M1 MacではIntel Macに比べて、外付けSSDの速度が遅いと言われているためです。この“外付けSSD速度低下問題”について、すでにご存知のユーザーもいらっしゃるのではないでしょうか。
| Read | Write | ||||
Apple M1 Mac |
Apple Intel Mac |
ASUS Zenbook Flip S |
Apple M1 Mac |
Apple Intel Mac |
ASUS Zenbook Flip S |
|
SEQ1M QD8 |
716.40 MB/s | 1010.08 MB/s | 1036.02 MB/s | 697.48 MB/s | 980.23 MB/s | 1026.26 MB/s |
SEQ1M QD1 |
690.34 MB/s | 762.04 MB/s | 874.52 MB/s | 682.54 MB/s | 802.99 MB/s | 827.61 MB/s |
外付けSSD(USB 3.2 Gen 2)の転送速度比較
※アプリケーション:AmorphousDiskMark(Mac)・CrystalDiskMark(Windows)
※SSD:WD_BLACK SN850 NVMe SSD(500GB)
※エンクロージャ:ACASIS 10-in-1 USB C Hub with SSD Enclosure
※ケーブル:ELECOM USB3-CC5P10NBK
実際に同環境(PCを除く)にて、外付けSSDの転送速度を測定してみたのですが、明らかにM1 Macだけ著しく速度低下していることが分かります。
原因が何か、というのを断定するのは難しいのですが、おそらくは搭載されているApple M1チップ起因の問題でしょう。いずれにせよ、M1 Macには“外付けSSD速度低下問題”がある、というわけなのです。
なお、MacとWindowsではベンチマークに利用したアプリケーションが異なるので、OS間の転送速度差の差異については、あくまで参考値になるのでご容赦を。
検証環境
Mac
| Apple M1 Mac | Apple M1 Max Mac | |
検証機器 | 13インチMacBook Air (2020年モデル) |
14インチMacBook Pro (2021年モデル) |
|
OS | macOS Monterey (Ver. 12.0.1) |
||
設定 | エネルギーモード | 自動モード | |
バッテリー | 電源アダプタ (USB PD 100W) |
検証に用意したMacとその環境
他の影響を最小化するため、各設定を揃えた上で検証を実施します。
その他
SSD
エンクロージャに搭載させるSSDには、PCIe Gen 4x4に対応したM.2接続のものを採用。
公称値で、Readが最大7,000 MB/s、Writeが最大4,100 MB/s、となっているので、ここがボトルネックになることはないでしょう。
エンクロージャ
- ACASIS|10-in-1 USB C Hub with SSD Enclosure ← USB 3.2 Gen 2
- ORICO|M2PAC3-G20 ← USB 3.2 Gen 2x2
- ORICO|SCM2T3-G40 ← Thunderbolt 3
SSDエンクロージャは、『USB 3.2 Gen 2』・『USB 3.2 Gen 2x2』・『Thunderbolt 3』に対応した製品をひとつずつ用意しました。
ケーブル
- ELECOM|USB3-CC5P10NBK ← USB 3.2 Gen 2
- GOPPA|GP-CCU325A05M/B ← USB 3.2 Gen 2x2
- Apple|Thunderbolt 3 (USB‑C) Cable (0.8 m) ← Thunderbolt 3
USB Type-Cケーブル・Thunderbolt 3ケーブルについては、前述のSSDエンクロージャに合わせたプロトコルのものをすべて用意しました。
SSDエンクロージャの通信プロトコルと合致するケーブルを本検証では利用します(念のため)。
検証結果
各Macに外付けSSDを接続してベンチマーク測定をしたから、その結果を順番に見ていくぞー!
USB 3.2 Gen 2
| Read | Write | ||
M1 | M1 Max | M1 | M1 Max | |
SEQ1M QD8 |
716.40 MB/s | 968.12 MB/s | 697.48 MB/s | 1013.46 MB/s |
SEQ1M QD1 |
690.34 MB/s | 766.69 MB/s | 682.54 MB/s | 435.36 MB/s |
RND4K QD64 |
26.12 MB/s | 141.66 MB/s | 10.66 MB/s | 62.91 MB/s |
RND4K QD1 |
33.13 MB/s | 37.84 MB/s | 13.73 MB/s | 21.26 MB/s |
外付けSSD(USB 3.2 Gen 2)の転送速度比較
※アプリケーション:AmorphousDiskMark
※SSD:WD_BLACK SN850 NVMe SSD(500GB)
※エンクロージャ:ACASIS 10-in-1 USB C Hub with SSD Enclosure
※ケーブル:ELECOM USB3-CC5P10NBK
まずは、『USB 3.2 Gen 2』での転送速度結果。
USB 3.2 Gen 2x2
| Read | Write | ||
M1 | M1 Max | M1 | M1 Max | |
SEQ1M QD8 |
935.43 MB/s | 1024.91 MB/s | 800.59 MB/s | 1021.35 MB/s |
SEQ1M QD1 |
745.08 MB/s | 784.25 MB/s | 615.64 MB/s | 787.55 MB/s |
RND4K QD64 |
135.12 MB/s | 136.41 MB/s | 67.93 MB/s | 63.23 MB/s |
RND4K QD1 |
35.36 MB/s | 38.69 MB/s | 21.22 MB/s | 22.94 MB/s |
外付けSSD(USB 3.2 Gen 2x2)の転送速度比較
※アプリケーション:AmorphousDiskMark
※SSD:WD_BLACK SN850 NVMe SSD(500GB)
※エンクロージャ:ORICO M2PAC3-G20
※ケーブル:GOPPA GP-CCU325A05M/B
続いて、『USB 3.2 Gen 2x2』での転送速度結果。
Thunderbolt 3
| Read | Write | ||
M1 | M1 Max | M1 | M1 Max | |
SEQ1M QD8 |
2874.82 MB/s | 2870.43 MB/s | 887.92 MB/s | 1167.74 MB/s |
SEQ1M QD1 |
2229.81 MB/s | 2280.37 MB/s | 748.75 MB/s | 1073.75 MB/s |
RND4K QD64 |
1400.88 MB/s | 1262.76 MB/s | 270.58 MB/s | 251.87 MB/s |
RND4K QD1 |
56.60 MB/s | 60.83 MB/s | 40.38 MB/s | 40.87 MB/s |
外付けSSD(Thunderbolt 3)の転送速度比較
※アプリケーション:AmorphousDiskMark
※SSD:WD_BLACK SN850 NVMe SSD(500GB)
※エンクロージャ:ORICO SCM2T3-G40
※ケーブル:Apple Thunderbolt 3 (USB‑C) Cable (0.8 m)
最後は、『Thunderbolt 3』での転送速度結果。
検証総括
M1 Max MacはM1 Macに比べて、
- USB 3.2 Gen 2:速くなった
- USB 3.2 Gen 2x2:速くなった
- Thunderbolt 3:変化なし
…という、検証結果になりました。
事前の予想では、M1 Max MacはM1 Macと比べて、どのプロトコルにおいても高速化すると踏んでいました。なので、Thunderbolt 3接続の場合において、転送速度に差がなかったことに驚き。
M1 Macの“外付けSSD速度低下問題”というのは、とりわけUSBプロトコルで顕著に生じるものと言えるかもしれません。
USB 3.2 Gen 2x2のベンチマーク結果を見ると、USBはデュアルレーンではなさそうですわね。
うーん、その検証も後日しないとですな。
わたし的には、M1 MacのUSB4周りの“いわく”も残ってるし……。
そもそも、USB 3.2 Gen 2x2に対応したノートパソコンってあるん!?
…見たことないっ!!
補足
M1/M1 Max Macの内部仕様
| M1 Mac | M1 Max Mac |
I/O | Thunderbolt(TB3互換) USB4 |
Thunderbolt 4 USB4 |
Thunderbolt Retimer | JHL8040R | JHL8040R |
PD controller | CD3217B12 | CD3217B12 |
M1 MacとM1 Pro/Max Macでは、同じThunderbolt RetimerやPD controllerが採用されています。と考えると、やはり転送速度の差の原因はApple Siliconそのもの説というのが濃厚。
あと、M1 MacのThunderboltポートは非常にややこしい仕様になっており、Apple公式表記は「Thunderbolt/USB4」というフワっとしたものになっています。
おそらくは「Thunderbolt 4」と書きたいのでしょうが、厳密にはThunderbolt 4の仕様要件を満たしていないので、このような曖昧な表現になったと予測されます。
ただ、M1チップ自体には、ちゃんとThunderbolt 4コントローラが搭載されているようでして、これがまたややこしい。なので、落としどころとしては、“Thunderbolt 3互換のThunderboltポート”という着地点になってきます。
なんか…ややこしすぎるやんね。
Thunderbolt自体は、IntelとAppleの共同開発なんだけどねー。
ただ、I/O周りのコントローラの開発に関しては、Intelに一日の長があったんでしょうな。
まとめ「M1 Maxで外付けSSDは高速化してた」
結論としては、M1 Macで生じていた“外付けSSD速度低下問題”、ちゃんとM1 Pro/Max Macでは解消されていたとなりそうです。
今回、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 2x2、Thunderbolt 3、と各プロトコルに分けて転送速度を測定したわけですが、非常に興味深いデータが取れました。
このデータを踏まえて、Thunderbolt 4やUSB4においても、転送速度の検証を実施すると面白いかもしれません。なので、引き続き調べていきます。
あとで思ったんだけど、Thunderbolt 4搭載のIntel機も用意すればよかった気がしましたっ!
おまけ
そして、残ったSSDエンクロージャをどうするか…むー。
ま、検証用として使いましょう。
うぬ!やりますぞ!!
…まだやるつもりなんやね。
おわり
…のSSDエンクロージャを用意したから、これでテストするぞっ!