- ポートレスUltrabook『Craob X』は実在するのか!
- 搭載スペックから懐疑的な点が複数浮かび上がる!
- 「発売される」と言われてるが正直アヤシイのです!
“絵に描いた餅”
「世界初のポートレスUltrabook」の触れ込みで、『Craob X』という薄型軽量ノートパソコンが一部界隈で話題になっています。…ただ、スペックを見ると懐疑的な点が多々あるので、それらを紐解いていきます。


珍しく辛口ですわね。

実在してたら謝罪案件やね。
目次
『Craob X』とは?

Image:Craob Inc
この『Craob X』とは、「World's First Portless Ultrabook(世界初のポートレスUltrabook)」という謳い文句の薄型軽量ノートパソコン。

Image:Craob Inc
最大の特徴は、世界初のポートレス仕様ということ。そして、厚さ7mm、重さ1.9lbs(≒ 861.8g)、という世界最薄クラスの筐体設計であること。
ちなみに、約861.8gという質量ですが、世界最軽量ではありません(Craob Xと同じ13.3″では、富士通の『LIFEBOOK WU-X/F3』が634gで世界最軽量)。

そう考えたら、『LIFEBOOK WU-X/F3』は恐ろしいほど軽いやんね。しかも、ちゃんと販売されているモデルやし……。

富士通の大和魂ですな。

Image:Craob Inc
Craob Xはポートレス設計なので、各種インターフェースへの接続や本体への充電は、専用の『Charger and PortsHub』で行うとのこと。
Craob XとCharger and PortsHubはマグネットで装着します。マグネットはノートパソコン側のA面(天板面)の中心部でドッキングする方式となっています。
また、Charger and PortsHub側には、USB Type-A・USB Type-C・Thunderbolt・SDカードスロット・φ3.5mmステレオミニジャック、が搭載されています。
なお、Thunderboltのプロトコルは記載がないので不明(搭載CPUから推測すると『Thunderbolt 4』だと思われる)。

Image:Craob Inc
なお、公式サイトを見る限り、Craob Xは『Craob Inc』というメーカーの製品のようです。
ただ、LinkedInにはCraob Incなる情報はありませんでした。
また、公式サイトのドメイン名からWHOIS情報を解析してみたのですが、WHOISレコードには目ぼしい情報はありませんでした。ちなみに、ドメイン自体は2018年12月に作成されています(Creation Date属性で確認)。

謎、ですわね。

これだけ凄いデバイスなら、もっと情報があって当然やのにね。
スペック
Craob X | |
---|---|
プラットフォーム | |
CPU | Intel Core i7-1280P ├ 最大4.80GHz └ 6+8コア・20スレッド |
iGPU | Intel Iris Xe Graphics |
RAM | 最大32GB └ LPDDR5 |
SSD | 最大2TB └ PCIe Gen4x4 |
ディスプレイ | |
画面サイズ | 13.3インチ |
画面解像度 | 4K UHD+ |
コミュニケーション | |
無線LAN | Wi-Fi 6E |
ボディ | |
本体サイズ | ?×?×7mm |
本体質量 | 約861.8g |
Craob Xのスペック
Craob Xの懐疑的な点

My Laptop Guideによると、このCraob Xは発売され、まもなく購入できるようになるとのこと(ただし、価格や販売チャネルについては触れられていない)。
本当に発売されるなら、ぜひとも欲しいところ。
ですが、懐疑的な点が多々あるので、個人的には「実はコンセプトモデルなだけ」という気もしています。というのも、あまりにも無茶すぎるスペックになっているからなのでして。
ですので、その懐疑的になっている点をこれからいくつか話していきます。
[1]CPU:12th Gen Intel Core P-seriesを搭載できるのか?
1つめは、7mmの極薄筐体にTDP 28W(Processor Base Power)の第12世代Intel Core P-seriesを搭載できるのか、ということ。

Image:Intel
モバイル版の第12世代Coreプロセッサは、
- H-series(45W)
- P-series(28W)
- U-series(15W/9W)
という、3種類に大別することができます。
今回のCraob Xは『Intel Core i7-1280P』となっているので、一般的なモバイルノートパソコン向けの『P-series』が搭載されているということになります。
このP-series(Intel Core i7-1280P)自体は、他社でも薄型の2-in-1ノートパソコン(例:Summit E14 Flip Evo A12)でも採用されているので、搭載自体はできなくない。

Image:Craob Inc
しかし、Craob Xの筐体画像を見てみると、どこにも排熱ファンらしきものが見当たりません。なので、おそらくはファンレスなのでしょう。
仮にファンレスだとすると、満足できるパフォーマンスが連続して出せるのかが大いに疑問なのです。タブレットにも採用されるTDPの低い『U-series』あたりなら納得するのですが、少々背伸びしすぎな感がしてしまいます。

第12世代Coreプロセッサは、PコアとEコアのハイブリッドアーキテクチャ(big.LITTLE的な感じ)だから低消費電力性能も優れているけど、大丈夫なの…かなー!?

厳しいでしょうね。
ARM搭載機なら、分からなくもないですが。
[2]Thunderbolt:ワイヤレスで40Gbpsの速度が出るのか?
2つめは、Charger and PortsHubに搭載されているThunderboltがワイヤレスで40Gbps出せるのか、ということ。
Thunderboltプロトコルについては公式サイトでは言及されていないが、Craob X(Charger and PortsHub)に搭載されているCPUから推測して、『Thunderbolt 4』だと思われる。なので、ここからはThunderbolt 4と仮定して進めていきます。
Thunderbolt 4 | Wi-Fi 6 Wi-Fi 6E |
WiGig |
40Gbps | 9.6Gbps | 7Gbps |
ワイヤレス転送プロトコル
Craob XとCharger and PortsHubはワイヤレスで接続、となっているのですが、どう考えてもWi-F 6やWiGig(廃止済)では、Thunderbolt 4の転送速度をフルに出すことは不可能です。
加えて、Charger and PortsHubには、Thunderbolt 4以外にも、USB Type-AやUSB Type-Cが複数ポート搭載されています。なので、40Gbpsでも帯域幅が足りないのです。
Thunderbolt 4 | PCIe Gen3x8 | PCIe Gen4x8 |
40Gbps | 64Gbps | 128Gbps |
PCI Expres転送プロトコル
※PCI Expresは理論値
そう考えると、Craob XとCharger and PortsHubには、それぞれ何かしらの電子接点があり、PCI Express接続になっているのではないかと推測します。
これなら帯域幅的にもかなり現実的。実際、ASUSが『ROG XG Mobile GC31』というeGPU兼ドッキングステーションで、PCI Express 3.0 x8接続を採用しています。
とはいえ、その接続モジュールをノートパソコンのA面に搭載できるクリアランスがあるのかは疑問がありますが。(発熱でディスプレイパネルの一部が死にそう)
さらに言えば、A面に重量負荷がかかりすぎるので、重心のバランスがおかしなことになっています。(ディスプレイパネル側に倒れそう)

…確かに、バランス悪そうやんね。
[3]バッテリー:どれくらいの駆動時間が確保できるのか?
3つめは、どう考えてもバッテリーの駆動時間が短すぎるのではないか、ということ。
厚さ7mm、重さ1.9lbs(≒ 861.8g)、という筐体サイズから鑑みて、Craob Xが搭載できるバッテリー容量はおおよそ50Whが限界といったところ。
例えば、13.3″で世界最軽量を謳っている『LIFEBOOK WU-X/F3』の場合、重さ634gで、バッテリー容量が25Wh。バッテリー駆動時間が、JEITA 2.0(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver. 2.0)で約11時間となっている。そして、実際の駆動時間は約6時間ほど、という感じ。
仮に、Craob Xの搭載バッテリー容量が50Whだとすると、LIFEBOOK WU-X/F3からの単純計算ならば、実際の駆動時間は約12時間ぐらい、となる。
ところが、LIFEBOOK WU-X/F3の画面解像度はFHDなのですが、このCraob Xは4K UHD+という高解像度ディスプレイを搭載しています。つまり、画面解像度が約4倍違うわけです。
FHD → 4K UHD の解像度になると、多くの場合でバッテリー駆動時間が約半分になる。なので、単純計算ならば、Craob Xのバッテリー容量が50Whと仮定すると、約6時間ほど駆動すれば御の字でしょう。
当然、Craob Xに搭載されているディスプレイパネルの種類や、可変リフレッシュレートの対応有無などで消費電力は前後してきます。なので、かなり乱暴な計算になっていることはご容赦を。余談ですが、LIFEBOOK WU-X/F3は『IGZO LCD』を採用しており、低消費電力性能に優れていると謳われています。
ちなみに、カタログモデルのLIFEBOOK WU-X/F3に搭載されているCPUは『Intel Core i7-1165G7』で、TDPが最大28W(Configurable TDP-up)。Craob Xに搭載されているCPUは『Intel Core i7-1280P』で、TDPが最大28W(Processor Base Power)。となっています。
結論

Craob Xの懐疑的な点をいくつか挙げてきましたが、「技術的に不可能に近い要素がありすぎるのでコンセプトモデルではないか」というのが結論です。
搭載CPUの排熱処理やバッテリーライフの問題もそうですが、やはりThunderboltをどうやってワイヤレス転送するのかが気になるところ。少なくとも、何かしらの電子接点は設けているでしょう。
いずれにせよ、こんなウルトラCが突如現れたメーカーにできたならば驚きです。言い換えれば、なぜ富士通やNECがやってない(≒ やれない)のか、ということでして。

確かに、実績のあるメーカーが先に出しそうですものね。

可能性としては、軽量化命の富士通がやってきそうですからなー。
補足

Image:Craob Inc
余談ですが、サイトにある画像は合成でしょう。
ヒンジ処理もいろいろと妙なことになっています。
まとめ「アリエナイが多すぎる」

この『Craob X』、いろいろ非現実的な要素が多い気がします。
ハードウェア設計に精通している人間のコンセプトアートというよりかは、デザイナーのコンセプトアートでしょう。でないと、ツッコミどころがありますので。

もちろん、発売されたら面白いんだけどねー。
おまけ

ま、コンセプトアートでしょうな。

本当に発売されたら謝罪会見よろしく!

ですわね。

なーんか、損した気分あーる……。
おわり
“ぼくのかんがえたさいきょうの”…としか。