- Wi-Fi 6とは“次世代”のWi-Fiだった!
- 理論速度よりも体感速度を速くする!
- IoT化に向けた安心快適Wi-Fiだ!
Wi-Fi 6を総ざらい!
最新のWi-Fi規格である『Wi-Fi 6』(IEEE 802.11ax)が、ついにデバイスの認証段階(Wi-Fi CERTIFIED 6)に入った!ってことで、“次世代のWi-Fi”と呼ばれる『Wi-Fi 6』とは何か?どこが凄いか?徹底的に調べてみましたぞー!
単なる理論値速度の向上だけが、Wi-Fi 6のメリットではないということですね?
そゆことー!
読んだらきっと、ルーターはWi-Fi 6にしたくなるはずっ!
目次
『Wi-Fi 6』とは?
『Wi-Fi 6』とは、無線LAN標準化団体のWi-Fi Allianceが策定した、IEEE 802.11ac(Wi-Fi 5)に変わる最新の無線LAN規格のことです。つまり、端的に言うと“次世代のWi-Fi”という感じ。
どこが次世代なのかは、これからねっとり説明していくぞー!
そんなWi-Fi 6ですが、簡単にポイントを抑えるとすると、
- 通信速度の高速化
- セキュリティーの強化
- IoT時代に向けた多機能化
という感じで、大幅にパワーアップしています。
そういえば、『IEEE 802.11ax』って単語も聞くけど、これってWi-Fi 6と違うものなん?
ううん、『Wi-Fi 6』と『IEEE 802.11ax』は同じ意味だよー!
なお、2019年10月時点では、Wi-Fi CERTIFIED 6の提供開始段階。Wi-Fi 6の標準化については、2020年中に予定しているそう。なので、現在のWi-Fi 6デバイスは“技術の先取り”をしている感じです。
ドラフト認定と正式認定の違いについては、後でちょっと話しておくねー!
Wi-Fi 6のスペック
名称 | Wi-Fi 6 |
規格名 | IEEE 802.11ax |
周波数帯 | 2.4GHz・5GHz |
最大転送速度 | 9.6Gbps |
チャネル帯域 | 20MHz・40MHz・80MHz・80MHz+80MHz・160MHz |
マルチユーザー数 | 最大8台 |
マルチユーザー技術 | MU-MIMO(上り・下り) OFDMA |
多重方式 | OFDM OFDMA |
変調方式 | 1024QAM |
高速フーリエ変換 | 256・512・1,024・2,048 |
サブキャリア間隔 | 78.125kHz |
Wi-Fi 6の規格仕様表。
詳しくはこれから解説していくとして、まずはWi-Fi 6そのもののスペックを上表にまとめてみました。
Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)と比較して、最大転送速度が6.9GHzから9.6GHzになっています。これは約1.4倍の高速化。
ほかにもかなりパワーアップしているのですが、スペック表だけの比較では「なるほど、わからん!」な用語だらけなはず。なので、これから特徴や技術を、できる範囲で深堀りしてみます。
そんな感じのWi-Fi 6の魅力を見ていこう〜♪
Wi-Fi 6の特徴
■Wi-Fi 6の3大特徴
- 高速
- 転送速度が9.6Gbps
- スループットが4倍
- 空間再利用
- 安全
- WPA3採用必須化
- 多機能
- UL/DL MU-MIMO
- ODFMA
- TWT(Target Wake Time)
- 1024QAM
Wi-Fi 6の機能ひとつひとつを見ていくと、いちユーザー的にメリットが分かりづらい。そんな気がしたので、まずは“3大特徴”と称し、大枠でのWi-Fi 6の特徴を見ていきたいと思います。
【特徴1】高速
まず、もっとも分かりやすいスペックアップとして、やはり通信速度の高速化が挙げられます。これが1つめの特徴。
Wi-Fi 5(ac) | Wi-Fi 6(ax) |
6.9Gbps | 9.6Gbps |
新旧Wi-Fiの通信速度。
Wi-Fi 5(ac)に比べて、約1.4倍の高速化となる9.6Gbpsを実現。
とはいえ、「やったー!1.4倍速くなった!!」では、Wi-Fi 6(ax)の真なる高速化を理解しきれてなかったりも…。
どゆことなん?
Wi-Fi 6の高速化のキモは理論値の向上じゃなくて、スループットの向上なんだよー!
簡単に言ってしまうと、理論値を向上させるよりも、実際の実効速度(体感できる速度)を上げようぜ!と考えたのが、Wi-Fi 6のスループット向上という方向性なのです。
■スループット向上の技術
- UL/DL MU-MIMO
- OFDMA
- 空間再利用(BSS Coloring)
あとで1つずつ見ていくとして、Wi-Fi 6のスループット向上には、上記の3つの技術が新投入されています。
これらの概要をサクッとまとめると、上りも下りも同時通信が可能になって(UL/DL MU-MIMO)、無駄なく複数端末の通信が可能になって(OFDMA)、同チャネルでも同時通信が可能になった(空間再利用)、という感じです。
もはや、現在において、1人1デバイスではなく、1人複数デバイスが当たり前な時代。そして、IoT化で家中Wi-Fiを必要とするデバイスだらけ。だからこそ、このようなスループットの向上が必須というわけです。
イマドキなWi-Fi技術ってことですな〜♪
【特徴2】安全
そして、Wi-Fi 6の2つめの特徴が、セキュリティーの強化。つまり、Wi-Fi 5(ac)よりも安全なインターネット利用ができるということ。
Wi-Fi 6が認証された機器には、『WPA3』というWi-Fiセキュリティー規格への対応が必須となっています。
このWPA3自体は、Wi-Fi 6の直接的ひ紐付いているな機能ではないのですが、前述のとおり必須機能になっています。ですので事実上、Wi-Fi 6の機能のうちの1つと言えるでしょう。
WEP | WPA | WPA2 | WPA3 | |
セキュリティーレベル | 低 | 低 | 中 | 高 |
暗号方式 | WEP(RC4) | TKIP(RC4) CCMP(AES) |
TKIP(RC4) CCMP(AES) |
CCMP(AES・CNSA) |
鍵長 | 40bit 104bit |
104bit | 128bit | 128bit 192bit |
WPA(Wi-Fi Protected Access)とWEPの仕様表。
なお、現在では『WEP』はもってのほか。『WPA』も安全性は低いと言われている。比較的安全度の高かった『WPA2』についても、2017年10月にKRACKs攻撃によって、そのセキュリティーの脆弱性(4-way handshakeという認証プロトコルが起因)が明らかになりました。そういうこともあり、Wi-Fi 6では『WPA3』が必須要件となっているわけです。
クラッキング技術も、年々巧妙化してきていますからね。
そうなんだよねー。
このKRACKsっていうのも、APとCLの接続に使うやり取り(4-way handshake)のスキをついたものだもんねー。
そうそう、このWPA3はセキュリティーが強固になっただけでなく、利便性も向上しています。
スマートフォンのQRコードスキャン機能を用いて、ほかのWi-Fi機器に接続する『Wi-Fi Easy Connect』という機能が新たに追加。これにより、面倒だったWi-Fi設定に関しても、かなり簡略化され、より初心者に親切な設計になったと言えるはずです。
QRでのWi-Fi接続は、お店のWi-Fiスポットとかにも採用されそうですなー!
【特徴3】多機能
そして、3つめの特徴が、Wi-Fi 6がモリモリに多機能なったということ。これで、来る全世帯IoT化もバッチリという感じ!
■主なWi-Fi 6の機能
- 最大8デバイス同時通信(UL/DL MU-MIMO)
- 周波数効率の向上(OFDMA)
- 伝達情報量の増加(1024QAM)
- デバイスバッテリー持ち向上(TWT)
基本的には、【特徴1】で話した内容と重複するので、あらましに関しては割愛します。なので、ここではまで触れていない『TWT(Target Wake Time)』について少し見てみます。
このTarget Wake Timeこそ隠された注目機能で、なんとでWi-Fi 6とデバイスのコンビネーションで、デバイスのバッテリー持続時間が伸びるのです。これって、スマホ時代には必須機能なはず。もちろん、IoTデバイスにも使える機能です。
要するに、速くもなったし、効率も良くなったし、バッテリーの持ちも良くなるってことだー!
聞いてると、
Wi-Fi 5 < 越えられない壁 < Wi-Fi 6
って、気がしてきたかも!?
Wi-Fi 6を支える新技術
■Wi-Fi 6の技術
- UL/DL MU-MIMO
- OFDMA
- 1024QAM
- Target Wake Time
それでは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)を支える技術を、さらっと見ていきましょう。
【技術1】UL/DL MU-MIMO
■Wi-Fi 5(ac)
- MU-MIMO:下りのみ(DL MU-MIMO)
- 最大同時接続台数:4台
■Wi-Fi 6(ax)
- MU-MIMO:上りも下りも(UL/DL MU-MIMO)
- 最大同時接続台数:8台
まずは、スループットの向上に大きく寄与している『Multi User MIMO(MU-MIMO)』について。
この『MU-MIMO』とは、MIMO(同一周波数帯での同時通信)のうち、複数の端末に異なる周波(ストリーム)を使って、同時にデータを送信できる技術のこと。
このMU-MIMOについては、現行のWi-Fi 5(ac)でも採用されている技術なのですが、それが『UL/DL MU-MIMO』となり強化されています。
Wi-Fi 5のMU-MIMOは『DL MU-MIMO』というもので、同時通信できるストリームは下り通信(ルーターから端末へ)しかできなかった。なので、上り通信(端末からルーターへ)に関しては、1ストリームだったのです。これでは効率がイマイチ。
しかし、Wi-Fi 6のMU-MIMOは『UL/DL MU-MIMO』というもので、上り・下りのどちらの通信に関してもマルチストリームに対応しています。
このUL/DL MU-MIMOにより、ルーターと端末のやり取りがスムーズになり、実効速度が速くなるというわけです。
ちなみに、最大ストリーム数も4台から8台に増えているよー!
8空間ストリームというわけですね。
【技術2】OFDMA
■Wi-Fi 5(ac)
- OFDM(1チャネル最大1台)
■Wi-Fi 6(ax)
- OFDMA(1チャネル最大9台)
2つめは、『OFDMA』というこちらもスループット向上に寄与している技術について。
この『ODFMA』とは何かを簡単に言ってしまうと、1つの周波数(チャネル)を細かく分けて(多重化して)効率よく通信ができるようになった、ということ。このブロックのように細かく分けた周波数はまさにテトリス的なイメージ。うまく開いてる周波数のブロックに端末を当てはめて、1つの周波数で端末の同時通信ができるようになりました。
チャネルをリソースユニット単位にして、デバイスを割り当てられるようになったってことですなー。
ちなみに、Wi-Fi 5(ac)に使われている『OFDM』は、1つの周波数(チャネル)に1端末という関係でした。なので、非常に複数デバイス状態(マルチユーザー環境)では、効率の悪い通信形態を取っていたのです。
【技術3】1024QAM
■Wi-Fi 5(ac)
- 256QAM(8bit)
■Wi-Fi 6(ax)
- 1024QAM(10bit)
この『1024QAM』というのも、またまたスループット向上に寄与している技術。
この『QAM』というのは、変調方式(電波にデータを載せる方式の一種)と呼ばれるもので、Wi-Fi 5(ac)では『256QAM』が採用されていました。それが、今回のWi-Fi 6(ax)では『1024QAM』というものにパワーアップ。要するに、1度にデータを伝えられる物量が増えたということです。
細かいことは抜きにして、数字を見てみると…
- Wi-Fi 5:256QAM = 28QAM = 8bit
- Wi-Fi 6:1024QAM = 28QAM = 10bit
という感じです。
何が言いたいかというと、8bitから10bitになった。
つまり、1.25倍Wi-Fi 6のほうが、1度に伝えられるデータ量が増えたというわけ。もっと噛み砕くと、1.25倍速くなった!という感じです。
もち、技術的な話だから、実際に計測して1.25倍速くなったかは別の話だけどねー。
【技術4】Target Wake Time
そして最後は、『TWT(Target Wake Time)』という、モバイラーには嬉しい技術。
このTWTとは、AP(Wi-Fiルーター)とSTA(デバイス)のアクセス時間間隔を調整し、デバイスの消費電力を抑えるというもの。
ちょっと掘り下げると、APとSTAの時間間隔を調整して、それぞれのSTAに到達するまでSTAがスリープ状態になる。そのスリープ時間があるから、デバイスの消費電力が減る。つまり、バッテリー駆動時間が伸びる…かもしれないということです。
実際、スマホやパソコンは絶えず通信を行うので、ガッツリとTWTの恩恵を受けられるかと言われればそうでもないかもしれません。その代わり、必要時のみ通信を行ったり、一定時間のみ通信を行うIoTデバイスでは、このTWTの恩恵を受けやすいように思えます。
スマホとかパソコンも、通信の設定次第でTWTの恩恵具合も変わってきそうかもだねー。
少なくとも、使ってないのに電池が減るっていう、現象の改善には期待できそうやね!
Wi-Fi関係でバッテリーが減りやすくなってるなら、それもあるかもだねー。(スマホのバッテリー消費原因の切り分けは難しいけどね)
Wi-Fi 6対応無線LANルーター
Wi-Fi Allianceのサイトを見ると、2019年10月現在では、BUFFALOのWi-Fiルーター2製品が『Wi-Fi CERTIFIED 6』認証を受けています。(ドラフトを入れるともっとある)
Wi-Fi 6対応のデバイス
Wi-Fi 6対応デバイスなのですが、Samsungの『Galaxy S10 5G』・『Galaxy S10+』・『Galaxy S10』・『Galaxy S10e』を皮切りに増えていっています。
おそらく、日本人に一番身近なスマートフォンである、AppleのiPhoneシリーズ。こちらも、『iPhone 11』・『iPhone 11 Pro』・『iPhone 11 Pro Max』で、それぞれWi-Fi 6に対応してきています。
おそらく、Wi-Fi 6対応は当たり前になってくるはずっ!
補足
最後に、本編では話しきれなかったプチ情報を、まとめて解説しておきます。
まとめ「Wi-Fi 6は単に高速…だけでない!」
Wi-Fi 6について総括すると、単に9.6Gbpsになった!という浅いものではなく、実にさまざまな技術が投入された、まさに“次世代のWi-Fi”にふさわしいものになっています。
これからの時代、ネットワーク網の発達とともにIoTも普及してきます。そこで活躍するのが、高速かつ安全なこのWi-Fi 6というものでしょう。今回はそれらを知ってもらえたらと…いう感じです。
これからはWi-Fi 6の時代だっ!うんうん!!
おまけ
うーん、長い説明になってしまったーーー!
ご苦労さまでした。
いやー、専門書や企業の資料を読み漁るのも、なかなかに楽しかったよ〜♪
やけに勉強熱心やんね!?
雨でも降るんやないの?
んごご…。ひどいあーるっ!
おわり
Reference:
Wi-Fi 6 - Wi-Fi Alliance, スマホでQRコードを読み取り、ほかの機器をWi-Fi接続する「Wi-Fi Easy Connect」、画面やカメラがない機器を接続可能に - INTERNET Watch, Wi-Fi 6対応製品の認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED 6」開始 - INTERNET Watch, WPA2の脆弱性「KRACKs」、Wi-Fi電波出力を最小限にすることも推奨、全機器への対策は時間を要する可能性 - INTERNET Watch, Cisco, National Instruments
今後のWi-Fiで重要なのは…
という3つのポイント!それがWi-Fi 6だっ!