- スマホの『周波数ロック』は隠れたキャリア縛り!
- 周波数ロックの影響を受けるのはAndroidスマホ!
- SIMロックと周波数ロックは同時規制すべきだった!
“キャリア版スマホは厄介”
現在、スマートフォンの『SIMロック』は原則禁止ですが、『周波数ロック』は禁止でない。…この状況、とにかくユーザーに不親切なので、周波数ロックによる問題点を話していきます。
…ですわね。
周波数ロックは罠やんね。
『SIMロック』と『周波数ロック』
いわゆるキャリア端末のスマートフォンというのは、『SIMロック』と『周波数ロック』という、2つのロックが関わってきます。
このうち、端末を自社回線でしか使えないようにする『SIMロック』に関しては、総務省により2021年10月1日以降から原則禁止になっています(ただし、2021年9月30日以前の販売分に関しては対象外)。
ですので、例えばですが、docomoで購入したスマートフォンをそのままau系SIMを挿して使う、ということが容易になりました。
数年前に比べたら、このSIMロック規制は大きな進歩ですよね。
ですなー。
SIMロック解除が有料だったり、契約してないと解除できなかったり…とにかく、いろいろ面倒な仕様だったからね。
ところが、もう1つのロックである『周波数ロック』については禁止されていません(『周波数ロック』とは何かについては後述)。
周波数ロックはSIMロックに比べて、認知度が低いことや専門的な知識を要するため、スマートフォンや携帯回線に詳しくないユーザーからすると、周波数ロックの問題点というのが分かりづらかったりします。ところがこの周波数ロック、SIMロックぐらい、いやそれ以上の問題を抱えているのでして。
なので、周波数ロックがいかにユーザーにとって不親切な仕様なのかを、本稿では話していきます。
『周波数ロック』は凶悪すぎるのだっ!
周波数ロックの例
この『周波数ロック』が問題となってくるのは、主にAndroidスマートフォン/タブレットを使っている場合です(iPhoneでは基本的に問題にならないので、周波数ロックは気にしなくてもよい)。
その周波数ロックの一例として、SonyのAndroidスマートフォンである『Xperia 1 III』の対応バンド見てみます。
どうして、Xperia 1 IIIなん!?
キャリア版(docomo・au・SoftBank)とSIMフリー版の両方が存在するからであーる!
SIMフリー版 (XQ-BC42) |
docomo版 (SO-51B) |
au版 (SOG03) |
SoftBank版 (A101SO) |
---|---|---|---|
n3 | |||
○ | × | × | ○ |
n28 | |||
○ | × | ○ | ○ |
n77 | |||
○ | × | ○ | ○ |
n78 | |||
○ | ○ | ○ | ○ |
n79 | |||
○ | ○ | × | × |
n257 | |||
× | ○ | ○ | ○ |
Xperia 1 IIIの対応バンド(5G)
SIMフリー版 (XQ-BC42) |
docomo版 (SO-51B) |
au版 (SOG03) |
SoftBank版 (A101SO) |
---|---|---|---|
Band 1 | |||
○ | ○ | ○ | ○ |
Band 2 | |||
× | × | × | ○ |
Band 3 | |||
○ | ○ | ○ | ○ |
Band 4 | |||
○ | ○ | × | ○ |
Band 5 | |||
○ | ○ | × | × |
Band 7 | |||
○ | ○ | × | × |
Band 8 | |||
○ | × | × | ○ |
Band 11 | |||
× | × | ○ | ○ |
Band 12 | |||
○ | ○ | × | ○ |
Band 13 | |||
○ | ○ | × | × |
Band 17 | |||
○ | × | × | ○ |
Band 18 | |||
○ | × | ○ | × |
Band 19 | |||
○ | ○ | × | × |
Band 21 | |||
○ | ○ | × | × |
Band 26 | |||
○ | × | ○ | × |
Band 28 | |||
○ | ○ | ○ | ○ |
Band 38 | |||
○ | ○ | × | ○ |
Band 39 | |||
○ | ○ | × | ○ |
Band 40 | |||
○ | ○ | × | ○ |
Band 41 | |||
○ | ○ | × | ○ |
Band 42 | |||
○ | ○ | ○ | ○ |
Xperia 1 IIIの対応バンド(4G)
上表のとおり、ベースモデルをSIMフリー版Xperia 1 III《XQ-BC42》と考えると、各携帯キャリア版Xperia 1 IIIの対応バンドが、ベースモデルよりも少なくなっていることが見て取れます。
なぜ、キャリア版だと対応バンドが少なくなっているのか。その理由は、自社回線で使わないバンドを(おそらく意図的に)削っているためです。これこそ、『周波数ロック』の正体。
これを“自社キャリアに最適化”と言えば、聞こえは幾分か良くなるでしょう。しかし、実際にはこの周波数ロックを用いることで、事実上使えるキャリアを縛っているわけです。
確かに、SIMロックは原則禁止になりましたが、結局はこの周波数ロックがあるために、ユーザーは大きな不便を強いられることになっています。しかも、SIMロックと違って、周波数ロックというのはユーザーが気づきにくいロックです。なので、表現は良くないですが、非常に“タチの悪い”仕様なのです。ですなの。
SIMフリー版Xperia 1 IIIには、ミリ波(mmWave)非対応っていう問題もあるけど、これはまた別の問題なので見なかったことにどうぞ。
それもいろいろな思惑がありそうですがね。
うーむ…表向きは“コスト”だろうけど、裏の事情はありそうだよねー。
周波数ロックの問題点
スマートフォンに周波数ロックが存在していると、何がどう不便になるのでしょうか。
その答えは単純明快で、スマートフォンを購入したキャリアとは異なる携帯回線を利用すると、電波がつながりにくくなる、というものです。
やはり、SIMロック以上に厄介ですわね。
何それ?どういうこと!?
ま、その例を見ていくのであーる。
| docomo版 (SO-51B) |
Band 1 (帯域幅:40) |
○ |
Band 3 (帯域幅:40) |
○ |
Band 11 (帯域幅:20) |
× |
Band 18 (帯域幅:30) (プラチナバンド) |
× |
Band 26 (帯域幅:30) (プラチナバンド) |
× |
Band 28 (帯域幅:20) (プラチナバンド) |
○ |
Band 41 (帯域幅:50) (UQ) |
○ |
Band 42 (帯域幅:40) |
○ |
au回線 × docomo版Xperia 1 III《SO-51B》 の組み合わせ
上表は au回線 × docomo版Xperia 1 III という組み合わせなのですが、スマートフォン側に周波数ロックが存在しているため、一部のバンドが使えないという悲しいことになっています。
一部のバンドが拾えないということは、つまり電波がつながりにくくなるということ。しかも、障害物に強く電波が届きやすい良質な帯域である『プラチナバンド』も一部対応しなくなっているため、余計に電波がつながりにくい状況に陥っています。
プラチナバンドが一部使えないというのは、携帯回線を快適に使うという当然のエクスペリエンスを損ねるクリティカルな問題です。だからこそ、周波数ロックという存在は、SIMロック以上に凶悪なのです。
| SIMフリー版 (XQ-BC42) |
Band 1 (帯域幅:40) |
○ |
Band 3 (帯域幅:40) |
○ |
Band 11 (帯域幅:20) |
× |
Band 18 (帯域幅:30) (プラチナバンド) |
○ |
Band 26 (帯域幅:30) (プラチナバンド) |
○ |
Band 28 (帯域幅:20) (プラチナバンド) |
○ |
Band 41 (帯域幅:50) (UQ) |
○ |
Band 42 (帯域幅:40) |
○ |
au回線 × SIMフリー版Xperia 1 III《XQ-BC42》 の組み合わせ
さて、今度は au回線 × SIMフリー版Xperia 1 III という組み合わせの結果を上表に示しました。当然ですが、SIMフリースマートフォンには、携帯キャリアの周波数ロックなる野暮なものは存在しません。
上表を見てもらうとお分かりのとおり、Band 11のみ対応していないものの、しっかりとキモであるプラチナバンドが拾える状態になっています。前掲した au回線 × docomo版Xperia 1 III の組み合わせのときとは雲泥の差です。
誤解なきように言っておくと、docomo版Xperia 1 IIIだけがこういう仕様というわけではありません。このような周波数ロックは、程度の大小はあるものの3大携帯キャリアのいずれもがやっていることだったりします。
総務省への要望
このようなスマートフォンの周波数ロック問題。当然、ユーザーは良い思いはしませんし、大手携帯キャリアは責められて当然でしょう。ただ、周波数ロックがまかり通るシステムにしてしまった総務省にも責任はあると考えます。
携帯キャリアからすれば、端末(いわゆる『白ロム』)だけ購入して通信契約は結ばないということが横行してしまうと、利鞘が少なくなるので避けたいと思うのは当然な流れ。でも、SIMロックは禁止されてしまった。ならば、規制されていない周波数にロックをかけてしまおう、と考えるわけです。この是非は置いておくとして、商売というのはこういうものです。
民間企業の市場競争に、政府がどこまで介入してよいのかという問題もありますが、『SIMロック』を規制するタイミングで、同時に『周波数ロック』の規制についても、スイッチング円滑化タスクフォースで取りまとめておいてほしかったところです。…今となっては後の祭りですが。
ですので、キャリア版スマートフォン(タブレット等含む)における周波数ロックの原則禁止。これを総務省には、今後検討してもらいたいと強く願います。
周波数ロックとは別問題なんだけど、通信料金が下がったら、今度は端末料金が高騰し始めたという…ね。
残価設定プログラム未加入ならば、SIMフリー版のほうが安くなることも多いですからね。
まとめ「周波数ロックも禁止すべき」
SIMフリーで購入する人も増えましたが、手厚いサポートを受けたい等の理由から、まだまだキャリアから端末を購入することが多いでしょう。だからこそ、ユーザー“アン”フレンドリーな『周波数ロック』は禁止してほしいのです。
ほーんと、厄介なシステムであーる。
おまけ
総務省つながりで言うと、これだけ海外スマートフォンの輸入が盛んになってきてるんだから、そろそろ技術基準適合証明関連の電波法改正も考える時期に来てると思うんだよねー。
検証用途ではなく利用目的で輸入しているユーザーが多いですからね。
あと、6GHz帯の無線LANも何とかすべし!
それもありますわね。
Wi-Fi 6Eも日本では課題だらけってわけやね。
おわり
▽Source
KDDI, NTTドコモ, SoftBank, 総務省
総務省は『SIMロック』と『周波数ロック』を同時規制すべきだった!