- 『ZE3000』はまさに“シンプルイズベスト”である!
- ノイキャンもヒアスルーもないけどそれでもいい!
- 硬派すぎるのでスマホアプリぐらいは欲しいかも!
“原点に戻れる音”
完全ワイヤレスイヤホン、final『ZE3000』をレビュー。ノイキャンもヒアスルーもアプリもQiもない。だけど、これでしか聴けない音があるのです。ストイックな有線派こそ、おすすめしたい逸品。


無個性だけど没個性でない。

有線っぽさが良きですなー。

Bottom line
ワイヤレスイヤホンにありがちな不自然に持ち上げられた帯域がなく、実にワイヤード的でナチュラルな音が素晴らしいことこの上ない。機能性はゼロに等しいが、使いづらさはまったくない。次回作や上位機種を期待したくなる、finalの処女作。
Score
- Price 9
- Design 8.8
- Sound 9.8
- Function 3
- Usability 7
- Battery 7.6
ここがすき!
- 癖がなく繊細なサウンド
- 美しいフィニッシュの筐体
- モダン機能全捨ての心意気
ここがうーん?
- ノイキャン/ヒアスルー非対応
- スマートフォンアプリ非対応
- 好みが分かれる装着感
目次
本日のレビュー:ZE3000
これはなに?
有線イヤホンと同等の自然な音作りを目指した、finalブランド初の完全ワイヤレスイヤホン。ドライバーや筐体設計を自社設計することにより生まれた、奇跡のミニマムワイヤレスオーディオ。

完全ワイヤレスイヤホン特有の人工的な音の作りが苦手で、ずっとこの手の製品を敬遠し続けている。
…そんな有線派におすすめしたい“自然な音”のイヤホンなんよね!
スペック
ZE3000 | |
---|---|
型番 | FI-ZE3DPLTW-BLACK(ブラック) FI-ZE3DPLTW-WHITE(ホワイト) |
メーカー | final |
オーディオ性能 | |
ドライバー | ダイナミック(φ6mm) |
再生周波数帯域 | 20Hz–20,000Hz |
インピーダンス | 非公表 |
ケーブル長 | N/A |
プラグ | N/A |
Bluetooth性能 | |
Bluetooth Ver. | Bluetooth 5.2 |
コーデック | SBC AAC aptX aptX Adaptive |
プロファイル | A2DP HFP HSP AVRCP |
バッテリー | |
イヤホン単体 | 最大7時間 |
イヤホン+充電ケース | 最大35時間 |
インターフェース | |
イヤホン | N/A |
充電ケース | USB Type-C ×1 |
サイズ | |
イヤホン | 19.5×25.5×18.5mm*1 |
充電ケース | 71×25.5×41.5mm*1 |
質量 | |
イヤホン | 5g*1 |
充電ケース | 32g*1 |
備考 | |
ノイズキャンセリング | 非対応 |
ヒアスルー | 非対応 |
コンパニオンアプリ | 非対応 |
防塵防水 | IPX4 |
左右独立受信方式 | 対応 |
ZE3000のスペック
*1実測値
デザイン
本体

| イヤホン | 充電ケース |
サイズ | 19.5×25.5×18.5mm | 71×25.5×41.5mm |
質量 | 5g | 32g |
ZE3000のサイズと質量
※すべて実測値
ファーストインプレッションは…高級感の演出が上手!
イヤホンも充電ケースも、サイズ的には普通。大きくもなく、小さくもなく。ちなみに、ZE3000はagブランドとは異なり、筐体もドライバもfinalの“フル”オリジナルだそう。なかなかに手間がかかっています。
ZE3000は合計2色展開で、
- ブラック
- ホワイト
という、カラーバリエーションになっています。
- マイク
- LEDインジケータ
- Pogo Pin(メス)
シェルのデザインは、同社のA seriesを彷彿とさせるシャープな形状。final曰く、IEMの最適解である筐体設計をベースにしているのだそう。筐体全体にわたって施されている『シボ塗装』も印象的。
イヤホンの着脱に応じて、再生・停止が自動的に作動する近接センサーは非搭載。ただし、左右独立受信機構(片耳モード)は採用されており、イヤホン片方だけでも利用することが可能。
- LEDインジケータ
- USB Type-C
- Pogo Pin(メス)
充電ケースには、イヤホンと同じ『シボ塗装』が施されています。イヤホンはエッジが効いたデザインですが、充電ケースは繭のような楕円形デザインとなっており、この対比が面白かったりします。
充電ケースへの充電は、USB Type-Cで行う仕様。Qi規格のワイヤレス充電には非対応です。

“塗装”は意匠を揃えてるけど、“形状”は対照的なもの。
…ちょっと不思議な感覚やね。
–9% | 10%–99% | 100% |
(約5秒間点灯) |
(約5秒間点灯) |
(約5秒間点灯) |
LEDインジケータのバッテリー残量
充電ケース前面のLEDは、バッテリー残量を通知するインジケータとなっており、バッテリー残量に応じて、点灯するカラーが変化する仕様になっています。
リモコン
| Lch | Rch |
(1回押し) |
再生・停止 受話 |
再生・停止 受話 |
(長押し) |
曲戻し 終話 |
曲送り 終話 |
(2回押し) |
音量ダウン 着信拒否 |
音量アップ 着信拒否 |
(3回押し) |
音声アシスタント起動 | 音声アシスタント起動 |
ZE3000のリモコン機能
搭載されているリモコン機能のキーアサインは上表のとおり。
ノイズキャンセリングやヒアスルーが非搭載ということもあり、キーアサインがゆとりある設計になっているように感じる。主要機能も抑えられており、特に不満なく使えるでしょう。なお、音声アシスタントは音楽停止状態のみ作動します(素晴らしい)。
ZE3000には専用のコンパニオンアプリが用意されていないので、このキーアサインを変更することはできません。
ステム

全長 | 3.8mm |
直径 | φ4.5mm |
ZE3000のステム(ノズル)サイズ
※すべて実測値
ステム径は、いたって普通の完全ワイヤレスイヤホンという感じ。ほんのり大ぶりな感じもしますが、国内メーカーの完全ワイヤレスイヤホンのステムは“こういうもの”でしょう。
充電ケース内部のクリアランスもしっかりと確保されており、大半の完全ワイヤレスイヤホン用イヤーピースであれば、干渉することなく収納することが可能でしょう。

完全ワイヤレスイヤホン専用のイヤーピースを積極的にリリースしているfinalだけあって、遊べる自由度をちゃんと設けてくれているんよね!
付属品

- イヤーピース(SS・S・M・L・LL)
- USBケーブル(Type-A to Type-C)
- 取扱説明書/保証書
イヤーピース

SS | S | M |
φ10×7mm | φ11×7mm | φ12×7mm |
L | LL | |
φ12.5×7.5mm | φ13×7.5mm |
イヤーピースのサイズ
※すべて実測値
付属のイヤーピースは、finalおなじみの『TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様』。
なんと太っ腹なことに、合計5サイズ(SS・S・M・L・LL)も付属してくれています。final TYPE Eシリーズは万人ウケするイヤーピースなので、これには顔がほころびる。

うち的には、SpinFit『CP360』も好きなんやけどね。
その他

最近の完全ワイヤレスイヤホンにしては珍しく、かなりしっかりとした冊子タイプの取扱説明書が同梱されています(SDGsの流れもあって、どこも簡素化されて久しい)。
ちなみに、付属のUSBケーブル(Type-A to Type-C)は、実測値で全長31.5cmでした。
これはパッケージ全体を通して言えることなのですが、このZE3000の“おもてなし感”には素晴らしいものがあります。高級機だからもてなす、普及機はもてなさない。そんなメーカーのエゴを微塵も感じさせぬ、幸福感に満ち溢れたパッケージングです。素敵。
ポイント
サウンド
f-LINKダンピング機構

Image:final
ZE3000には、final独自の『f-LINKダンピング機構』が採用されている。
このf-LINKダンピング機構を用いることにより、イヤホン筐体内部の音響空間の圧力を最適化。それにより、完全ワイヤレスイヤホンにありがちな低音過多で派手な音作りではなく、有線イヤホンのような自然な音作りが可能になっているそう。
f-Core for Wireless

Image:final
前述したf-LINKダンピング機構に加えて、新設計のドライバーユニット『f-Core for Wireless』をZE3000では採用。
新設計ドライバーf-Core for Wirelessを採用することにより、高精度な音圧周波数特性と超低歪を実現。一般的な完全ワイヤレスイヤホン特有のソフトウェア調整ありきの音質ではなく、ドライバーのポテンシャルを活かすための補正程度のソフトウェア調整にとどめていることにより、自然で聴き疲れしづらい音になっている。
フィッティング
IEMベースの筐体設計

ZE3000は同社の有線イヤホンである、『A series』に似たデザインとなっている。
finalらしい意匠に揃えたというのもありそうですが、この筐体設計は同社が有線イヤホンで確立したIEMの最適解をベースとしたものとなっているそう。
そんな筐体設計のおかげにより、耳との設置面積を限定させ、圧迫感の無い装着感になっているとのこと。公式サイトによると、“面”ではなく、“点(3点保持)”になっており、圧迫感を抑えつつも、高い安定性を誇るそうです。
フィーチャー
aptX Adaptive対応

Qualcommの高性能Bluetoothコーデックである『aptX Adaptive』に対応しているのも大きなポイント。
残念ながら、aptX Adaptiveに対応したデバイスというのは、一部のQualcomm製SoC搭載のAndroid端末(Xperia等)に限られてしまうのですが、もし当該デバイスを持っているのであれば、使わない手はないでしょう。
なお、aptX Adaptiveではあるが、拡張されたSnapdragon Soundではないため、48kHz/24bitでのオーディオ転送となっている。また、AACコーデックにも対応しているため、iPhoneではAACで接続される。
IPX4等級の防滴設計

このZE3000には、『IPX4』等級の防滴設計が施されている。
IPX4 | IPX5 | IPX6 | IPX7 |
防沫型 | 防噴流型 | 耐水型 | 防浸型 |
IP規格の第2示性数字(防水規格)対応表
この『IPX4』というのは、IP規格に照らし合わせると『防沫型』に相当します。
この『防沫型』というのは、あらゆる方向からの水の飛沫によって、有害な影響を受けない程度の防滴性能を持っているということ。なので、水没は禁忌。あくまで防滴であって、防水ではありません。
とはいえ、防滴であったとしても、水に対してある一定以上の保護性能を持っているのは大切なこと。お風呂やプールでこそ使えませんが、そこそこに耐水性があるというのは心強いものです。
ファンクション
片耳モード搭載

このZE3000には、いわゆる『片耳モード(左右独立受信方式)』が搭載されている。
なので、左右どちらか一方が親機固定というわけではないため、その都度左右どちらか一方だけを入れ替えてリスニングすることが可能となっている。また、片耳モードへの移行も非常にスムーズで、片側のイヤホンを充電ケースに収納すれば、音楽を止めることなく自動で移行してくれるものになっている。
なお、片耳モード利用時はBluetoothコーデックが、SBCとAACに限定されるので注意が必要。aptX Adaptiveで接続したい場合は、かならず左右のイヤホンを接続して使うことになります。
ハンズオン
音質を評価する

高音域 | 9 |
・サ行の刺さりナシ ・かなり高い透明度 |
|
中音域 | 9 |
・定位のバランス良 | |
低音域 | 7 |
・迫力と繊細の両立 ・やや控えめな量感 |
|
音場感 | 広め |
音傾向 | 繊細迫力 |
ZE3000の音質評価
※販売価格を考慮した相対評価
ZE3000の音質を端的に言うと、ワイヤレスイヤホンらしからぬ白米のような音、という感じ。
まさに“白米”と評したくなるような音で、変な味付けがなく、非常にベーシックでフラット志向な鳴り。ただ、味付けがないと言っても、決して無味ではない。何というか、素材本来のあっさりとした味がするのです。ほんと、モニターライクな有線イヤホンで聞いているかのよう。
完全ワイヤレスイヤホンにありがちな、低音域がドコドコと押し寄せる感じはなく、量はちょうど良く、タイトで引き締まった音を鳴らしてくれます。本機のような、シャープで高音域寄りの音は個人的には好きなのですが、もっと沈み込むような鳴りをしてくれるほうが良いと思う人もいるかもしれません。
変に弄った音という感じがないため、聴き応えがありつつも、非常に聴き疲れしないのも素晴らしい点。まさに、finalの謳い文句どおり、と言ったところでしょうか。

- 映画のサウンドトラック
- テクノポップ
- クラシック
- 女性ボーカル全般
音場感も広く、繊細な音を奏でてくれるので、サウンドトラック系が結構おすすめ。キラキラとした感じも綺麗なので、電子音楽とかもアリだったりします。
もちろん歌モノも良いのですが、しっかりと聴き込みたくなる音(音の量や押しの強さでごまかさない音)を奏でてくれるので、普段「ワイヤレスイヤホンだとちょっと……」と思ってしまう曲をチョイスしてみるとよいかもしれません。そういう意味では、変な味付けはないけれど、相対的に見れば個性的な音と言えるかも。
以下、私がZE3000に合いそうだと感じる曲を並べています。
インプレッション
ワイヤレスらしくない音

ワイヤレスヘッドホン・ワイヤレスイヤホンというのは、どうしても有線に比べて特定の周波数帯域が変に持ち上げられてしまっている感じが否めない。なので、各社ともにうまく味付けをしてバランスを保とうとしているのですが、味付けだらけで胸焼けしそうな音になってしまっていることもしばしば。
ところが、このZE3000は巷のワイヤレスイヤホンとは一線を画する音で、変に音がブーストされている感もなく、アッサリとしていて聴き疲れしづらい。
そう言った意味では、何ともワイヤレスらしさがない音。finalの言っていることのまんま受け売りになってしまうのですが、有線イヤホンらしさがどことなくあるのです。

Noble AudioのFalconを初めて聴いたとき以来の衝撃って感じなんよね!
美しきシボ加工

このZE3000は、完全ワイヤレスイヤホンの中では エントリー 〜 ミドル に位置付けされる価格帯に位置しています。つまり、そんなにお高くない。
なので、筐体自体はプラ感が強いのですが、表面にシボ加工をあしらっているからか、微塵もチープさを感じないのです。ほんと、finalは高級感の演出が上手なメーカーだこと。
ガジェット的機能ゼロ

ノイズキャンセリング、ヒアスルー、Qiワイヤレス充電、スマートフォン用アプリ。…これらすべて、ZE3000にはありません。超絶硬派。
正直、ZE3000のキャラにノイズキャンセリングは合わないので、搭載しなくて正解だと思います。あっても悪くはないけれど、蛇足感がしてしまいますし。そもそも、パッシブでのノイズキャンセリング性能がそこそこに高いので、あまり非搭載なことは気になりません。
とはいえ、スマートフォン用アプリぐらいは欲しかったかも。別にあれこれしたいわけではありませんが、ファームウェアのアップデート機能くらいは実装してもらいたかったのです。
まとめ「無線だけど有線」

- メーカーの謳い文句どおりの有線ライクな音が素晴らしい。
- 有線派におすすめできる数少ない完全ワイヤレスイヤホン。
- 聴き疲れしない絶妙なチューニングやドライバ設計に感服。
- とにかく音に極振りしているのでガジェットらしさはゼロ。
今回レビューした、finalの完全ワイヤレスイヤホン『ZE3000』。ひとことでまとめると、「無線だけど有線イヤホンである」という感じ。
機能性しては必要最低限のものしかありません。なので、決して遊べる完全ワイヤレスイヤホンではないことはご理解を。ガジェット好きよりかは、オーディオ好きのためのイヤホンです。
伸びやかな高音域やレンジの広さ、これがとにかく素晴らしい。ワイヤレスイヤホンの音が好きじゃない、という人にこそ試してほしい逸品になっています。

あえておすすめとは言わない!
蘊蓄を傾けるよりも、百見は一聞にしかず、やね!
おまけ

うーん、新たな完全ワイヤレスイヤホン沼を見つけた予感。

あーらーまー。

なんか…雑くない!?

あまり興味を持っちゃうと、また沼にズブズブしちゃうもんっ!

興味のないフリをしてるわけですね!?

なるほど、そゆことなんやね。
おわり
音質はTWSらしくない“無味”で繊細。
それ以外の機能?そんなのありません。
…って感じやね!