- モバイルルーターの固定回線化はおすすめしない!
- 最大のネックは上り速度が5G回線でも遅いこと!
- “ネットが使えたらそれでいい”なら固定回線化もアリ!
“やっぱり適材適所”
「モバイルルーター(ホームルーター)は固定回線代わりになるのでは?」と思う人もいそうですが、基本的には“なりません”。その理由について解説します。
そうなりますよね。
…『ホームルーター』は?
目次
はじめに
| モバイルルーター | ホームルーター |
docomo | Wi-Fi STATION | home 5G |
au UQ WiMAX |
Speed Wi-Fi 5G Galaxy 5G Mobile Wi-Fi |
Speed Wi-Fi HOME 5G |
SoftBank | Pocket WiFi | SoftBank Air |
モバイルルーターとホームルーターの名称(携帯キャリア別)
主な『モバイルルーター』ないし『ホームルーター』には、上表のようなものが存在しております。
これらの通信回線は携帯キャリア(NTTドコモ等)から提供されており、スマートフォンと同じくモバイル回線を利用して通信を行います。製品やサービスによっては、4G LTEだけでなく、5G NRでも通信が可能です。余談ですが、このような携帯キャリアが構築した5Gネットワークを『キャリア5G』と言ったりします。
似たようなホームルーターに『NURO Wireless 5G』というものがありますが、こちらは『ローカル5G』というもので、前掲した表のホームルーター群とは毛色が異なるサービスとなっています。ですので、本稿ではこちらは触れておりません。
ま、今回は『キャリア5G』と『ローカル5G』については気にしなくて良いのであーる。
じゃあ、何で言ったんよ……。
固定回線代わりにならない理由
おさらいをしたところで、いよいよ本題。
「『モバイルルーター』や『ホームルーター』は固定回線代わりになるのか?」という問いに対して、基本的には「固定回線代わりにならない」と言える理由について解説していきます。
もちろん、モバイルルーターやホームルーターを固定回線の代替として使うことは否定しませんし、メリット(設置工事が不要等)もあるので、どれが正解なんてありません。場合によっては、モバイルルーターやホームルーターのほうが良い場合もあるでしょう。なので、あくまで一般論としてお聞きください。
どっちも使えることに越したことはないっ!
うん、それは知ってる。
【理由1】通信速度が固定回線より遅い
モバイルルーター(ホームルーター)が固定回線代わりにならない理由。1つめは、通信速度が固定回線よりも遅い傾向にあること。
| モバイルルーター (UQ WiMAX) |
固定回線 (ビッグローブ光) |
下り | 331Mbps | 322Mbps |
上り | 57.0Mbps | 250Mbps |
モバイルルーターと固定回線の通信速度比較
※測定アプリ:Speedtest by Ookla
※UQ WiMAX:SCR01 + iPhone 12 Pro Max
※ビッグローブ光:MX5300-JP + iPhone 12 Pro Max
どちらが速いというのは、環境要因(VNE・プロバイダ・場所・時間・契約プラン等)が多いので一概には言えないところ。なので、測定している人間が言うのもアレですが、 n = 1 なデータなんて全然アテになりません。
また、モバイルルーターが軒並み5G通信に対応してきたので、以前よりも通信速度の差が縮まってきたり、場合によっては逆転することも出てきました。実際、上表でもモバイルルーターのほうが、下り速度が高速という結果が出ています。
とはいえ、安定した高速通信を行うことを考えると、まだまだ固定回線に一日の長があります。
ミリ波(mmWave)が入るエリアなら…ですわね。
一般家庭でミリ波が拾える環境が来るというのは、非現実的でしょうな。
Sub6は主要都市を遍くってなると思うけど、ミリ波はコストや技術的にもスタジアムや大型施設に限定される気がするからね。5Gが普及したとしても!
【理由2】Wi-Fiルーターのスペックが低い
モバイルルーター(ホームルーター)が固定回線代わりにならない理由。2つめは、ルーターとしてのスペックが一般的なWi-Fiルーターに比べて低いこと。
| モバイルルーター (NAR01) |
ホームルーター (NAR02) |
Wi-Fiルーター (PA-WX6000HP) |
販売価格 | 22,000円 | 43,200円 | 約30,000円 |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 |
同時接続台数 (Wi-Fi) |
16台 | 40台 | 36台 |
伝送速度 (11ax) |
最大1,201Mbps | 最大2,402Mbps | 最大4,804Mbps |
伝送速度 (11ac) |
最大867Mbps | 最大1,733Mbps | 最大3,467Mbps |
伝送速度 (11n) |
最大300Mbps | 最大600Mbps | 最大600Mbps |
有線LAN | - | 1GbE ×2 | 1GbE ×4 |
モバイルルーターと同価格帯のWi-Fiルーターの比較
例えば、同じような価格帯で揃えても、やはり市販のWi-Fiルーターと比べると、モバイルルーターやホームルーターは、性能や機能で見劣りする部分が出てしまいます。
また、Wi-Fiルーターは種類が豊富なので、予算さえ都合がつけば、超高性能な製品を導入することも可能です。しかし、モバイルルーターやホームルーターというのは、各通信キャリアに適合する製品を選ぶ必要があり、選択肢がほぼありません。
ですので、どうしてもルーター単体の製品比では不利になってしまいます。
こればっかりは仕方ないのであーる。
10GbE WAN/LANとかメッシュネットワークも組めないやんね。
【理由3】頼みの5G NRはエリアがまだ狭い
モバイルルーター(ホームルーター)が固定回線代わりにならない理由。3つめは、まだまだ5G NR対応エリアは“狭い”部類に入るということ。
例えば、上画像は『UQ WiMAX』のエリアマップ(京都府)なのですが、5G Sub6に対応しているエリアは京都の中心地( JR京都駅 〜 阪急烏丸 〜 阪急京都河原町 )とJR山科駅周辺ぐらい。
これが首都圏や大阪市内・神戸市内・名古屋市内などになると幾分かマシになるのですが、それでもまだ大都市を遍く…とはいきません。常時5G Sub6が入るエリアの人は、まさに選ばれし者のよう。
5G対応エリアが今より拡大されるのは確定事項ですが、それでも網羅的に広がるのはもっともっと先の話になります。
なーんか、京都に対する扱いが悪い気がするのであーる。
京都って、地味に通信インフラに弱いのですよね。
【理由4】5Gミリ波は屋内だと入りづらい
モバイルルーター(ホームルーター)が固定回線代わりにならない理由。4つめは、頼みの5Gミリ波が現状屋内だと入りづらいということ。
5G = 超高速・超低遅延・多数同時接続
これらが実現すれば、モバイルルーターも固定回線代わりになってくれるでしょう。いや、固定回線を凌駕する可能性もあります(固定回線も10Gbps対応みたく高速化しているので微妙だけど)。
ただ、それらを実現するには、5G NRの中でも『ミリ波(mmWave)』の普及が望まれる。ですが、ミリ波は高周波すぎる(一般的には 30GHz 〜 300GHz を指す)ので、直進性が強すぎて遮蔽物や雨・霧に弱いのです。なので、屋内だと電波が入りづらいというわけなのです。
ミリ波がどこまで普及するかはさておき、この問題に対するソリューションは存在する(屋内に『5Gスモールセル』を設置する等)ので、どこまで各携帯キャリアが設備投資してくれるかになってくるでしょう。
ここはちょっと予想が難しいのであーる。
現状は、5G Sub6も屋内にいると入らない場合があるって感じやもんね。
【理由5】キャリア5Gは上り速度が遅い
モバイルルーター(ホームルーター)が固定回線代わりにならない理由。5つめは、キャリア5Gというのは下り速度は速いけど上り速度は遅いということ。
- docomo
- 883Mbps
- au
- 611Mbps
- SoftBank
- 728Mbps
- Rakuten
- 276Mbps
5G Subの下り速度比較
※測定時の最高速度を記載
- docomo
- 55.0Mbps
- au
- 68.1Mbps
- SoftBank
- 109Mbps
- Rakuten
- 42.4Mbps
5G Subの上り速度比較
※測定時の最高速度を記載
上掲の通信速度は過去記事(5G回線の『上り速度が遅い問題』が深刻なので考える)のものなのですが、明らかに 下り速度 >>> 上り速度 という構図になっています。
総務省が掲載しているトラヒックデータを見ると、下り速度偏重になるのは致し方ないところ。
ですが、固定回線代わりとして考えると、この上り速度では不満を持ってしまうかもしれません。もちろん、ユーザーの目的や使い方によりますが。
下り速度は固定回線並か、それ以上のこともあるのにね。
もう少し、上り側に帯域を振ってくれたら嬉しいんだけどねー。
まとめ「真の5Gが普及すれば変わる」
モバイルルーター(ホームルーター)に対してネガティブな話をしてしまいましたが、冒頭でもお話したように、これらはあくまで固定回線代わりに使った場合の話。
モバイルルーターも軒並み5G対応になってきており、通信速度の遅さを感じることも減りつつあります。また、かねてよりネックだった、UQ WiMAXにおける速度制限も大幅緩和されているため、ヘビーユースでなければ、固定回線代わりにしても案外いけるとは思います。
とはいえ、上り速度は5G Sub6であっても固定回線並…とはいかないので、やはり“真の5G”であるミリ波待ちになるでしょう。あとは、NSA方式ではなく、SA方式が導入されるとかとか。
…もちろん、自分の家にミリ波がやってくるかどうかは、また別の話ですが(可能性はかなり低い)。
v6プラスじゃない光コラボなら、モバイルルーターのほうが速いかも!?
おまけ
こういう話をしてると、『NURO Wireless 5G』を試してみたくなるんだよねー。
気にはなりますよね。
でも、これもエリアの問題があるやんね?
うーん、結局はそこなのであーる。
おわり
外出先ならモバイルルーター!
自宅なら固定回線!
…これが原理原則ですな!!