- キャッシュレス決済手数料はサービスによって振れ幅が大きいという闇
- 債権譲渡に該当しないキャッシュレス決済は手数料に消費税が発生する
- 決済手段を気にするくらいなら贔屓のお店に“たくさんお金を使う”べき
QRコード決済や電子マネーにおける加盟店側への『キャッシュレス決済手数料』を比較し、その結果から、店舗側に“優しい決済”とは何かを導き出します。
店舗側の視点からすると、立地・客層・客単価・管理コスト・オペレーション業務、という複合的な要素から、キャッシュレス決済を導入すべきか否か、が変わってくるのでしょうな。
考えすぎると疲れる系やんね……。
目次
『キャッシュレス決済手数料』の比較
まずは、本稿最大のポイントでもある、加盟店が支払わなければならない『キャッシュレス決済手数料』について、キャッシュレス決済の種類別(QRコード決済・電子マネー・クレジットカード・mPOS)に分けて見ていきます。
なお、各種決済手数料の表記については、公式サイトに記載があるものはそちらを、記載がないものについては経済産業省と総務省で公開されている資料から、それぞれ参照しております。
QRコード決済
決済サービス | 決済手数料 |
PayPay | 1.6% 〜 1.98% |
LINE Pay | 1.6% 〜 1.98% |
au PAY | 2.6% |
d払い | 2.6% |
メルペイ | 2.6% |
FamiPay | 2.94% |
楽天ペイ (アプリ決済) |
3.24% |
※キャンペーンによる決済手数料の免除は除外
PayPayや楽天ペイのような決済サービスごとに、決済手数料が異なるのは当然のこと。ですが、同じ決済サービスであっても、“何経由”で支払ったかによって、大きく決済手数料が異なってきます。まず、ここがややこしいポイント。
例えば、『PayPay』の場合、PayPayやLINE Payを経由した場合は 1.6% 〜 1.98% ですが、Alipay経由だと1.98%、JPQR経由だと2.95%、となっております。
QRコード決済は、電子マネーやクレジットカードに比べ、相対的に決済手数料が安価に設定されております。しかし、シェア争いが激しいことから、決済手数料の改定が多く、あまりアテにはできない部分が多い印象を受けます。
『d払い』や『楽天ペイ』では、決済手数料の無料キャンペーンを期間限定で行なっているので、その間だけ利用する店舗はありそうですわね。
露骨にそれをやっちゃうと、却って印象が悪くなりそうだけどねー。
電子マネー
決済サービス | 決済手数料 |
楽天Edy | 3.24% 〜 ASK |
Suica | 3.24% 〜 ASK |
QUICPay | 3.74% 〜 ASK |
iD | 3.74% 〜 ASK |
電子マネーの決済手数料については、加盟店契約会社によって異なるとのこと。
『楽天Edy』や『WAON』、『Suica』や『ICOCA』などの交通系電子マネーについては、 3.24% 〜 で設定されていることが多い。『QUICPay』と『iD』については、 3.74% 〜 と若干高めな傾向に。
電子マネーとクレジットカードの決済手数料は似たようなもの。そう捉えていても、あながち間違いではないでしょう。ただし、『QUICPay』と『iD』の決済手数料は例外です。
「『QUICPay』と『iD』の決済手数料は高い」と聞いたことがあるのですが、やはりそのようですね。
スマートフォンの『おサイフケータイ』で払えるから、エンドユーザーとしては楽やねんけどね。
クレジットカード
決済サービス | 決済手数料 |
楽天カード | 3.24% |
三井住友カード | 3.25% |
クレディセゾン | 3.24% |
三菱UFJニコス | 3.25% |
ユーシーカード | 3.24% |
※標準手数料率に準拠
クレジットカードの決済手数料なのですが、業種や事業規模によって異なるため、上表では標準手数料率を掲載しております。
一般的に言われているのが、コンビニエンスストアや全国チェーンのスーパーマーケットでは 1% 〜 2% 、個人商店では 4% 〜 7% 、という数値。水商売では、もっと手数料が高くなります。要するに、回収リスクが高ければ高いほど、クレジットカードの決済手数料も比例して高くなるというわけです。
個人商店からすると、決済手数料が固定されておらず、かつ設備投資が必要なので、クレジットカード決済の対応は見送られがちですわ。
その穴埋め的に登場したのが、『QRコード決済』だったりするもんねー。
mPOS
決済サービス | 決済手数料 |
Square | 3.25% 〜 3.95% |
楽天ペイ (ターミナル決済) |
3.24% 〜 3.74% |
STORES | 3.6% 〜 5% |
Airペイ | 3.24% 〜 3.74% |
キャッシュレス決済手段ではないのですが、『mPOS(Mobile POS)』の決済手数料についても掲載しておきます。
mPOSの決済手数料については、クレジットカード、QUICPayとiD以外の電子マネー、QUICPayとiD、QRコード決済、で分かれていることが大半です。
ここで興味深いのが、クレジットカードの決済手数料について。
前述したとおり、クレジットカードの決済手数料というのは、元来、業種や事業規模によって異なるものでした。ところが、mPOSを経由したクレジットカード決済では、業種や事業規模に問わず、決済手数料が一律となる場合が大半。これは、mPOS運営会社(Squareなど)が、決済代行会社として仲介しているからだそう。
この『mPOS』を導入しているカフェに、よく行っているのであーる!
個人商店からすれば、手軽にクレジットカードやタッチ決済に対応できますからね。
QRコード決済の決済手数料と消費税
ここまで、加盟店が支払わなければならない『キャッシュレス決済手数料』について、キャッシュレス決済の種類別(QRコード決済・電子マネー・クレジットカード・mPOS)に見ていきました。
その結果、他のキャッシュレス決済手段に比べて、『QRコード決済』の決済手数料が低く設定されていることが判明しました。
そこで、改めて『キャッシュレス決済手数料』の比較を、表にまとめて話していきますわ。
QRコード決済の決済手数料は低め
決済サービス | 決済手数料 |
PayPay LINE Pay |
1.6% 〜 1.98% |
au PAY d払い メルペイ |
2.6% |
FamiPay | 2.94% |
楽天ペイ (アプリ決済) |
3.24% |
電子マネー (QUICPay/iD以外) |
約3.24% |
電子マネー (QUICPay/iD) |
約3.74% |
クレジットカード | 約3.24% (個人商店では 4% 〜 7%) |
※QRコード決済:キャンペーンによる決済手数料の免除は除外
※クレジットカード:標準手数料率に準拠
JPQRなどの細かいことを無視すれば、『PayPay(1.6% 〜 1.98%)』が一番低い決済手数料と言えるでしょう。
それと比べると、個人商店における『クレジットカード(4% 〜 7%)』の決済手数料は、大きな負担になっております。ただ、前述したように、Airペイに代表される『mPOS』を利用すると、クレジットカード払いであっても、決済手数料は 3.24% 〜 3.74% に収まることが大半です。
だとしても、『QRコード決済』のほうが『クレジットカード』よりも手数料が低いやんね?
そう…とも、言い切れないのですよ。
QRコード決済の決済手数料は課税対象
- QRコード決済(チャージ残高払い)
- QRコード決済(ポイント払い)
- 交通系電子マネー(チャージ残高払い)
- 楽天Edy
- nanaco
- WAON
- クレジットカード
- QRコード決済(クレジットカード払い)
- QUICPay(代行会社経由の場合は課税対象の場合有)
- iD(代行会社経由の場合は課税対象の場合有)
- PiTaPa
あまり知られていないことですが、キャッシュレス決済における決済手数料には、消費税が課税されるサービス・消費税が課税されないサービス、の2種類があるのです。
国税庁の質疑応答事例にも記載があるのですが、金銭債権譲渡[*1]が発生するキャッシュレス決済については、『消費税法施行令第10条第3項第8号』に則り、加盟店が信販会社に支払う手数料は非課税となっています。言い換えれば、金銭債権譲渡が発生しないキャッシュレス決済については、手数料にも消費税が発生するわけです。
プリペイド方式なら消費税課税取引。
ポストペイ方式なら消費税非課税取引。
契約によっては異なる場合もあるようですが、大枠としては『プリペイド方式』なのか『ポストペイ方式』なのかということで、決済手数料に対する消費税の課税について判断できるでしょう。
QRコード決済には、クレジットカード払いやチャージ残高払いなど、決済手段が複数実装されているためややこしいのですが、クレジットカード払い“ではない”QRコード決済については、決済手数料に消費税が発生することになります。
決済サービス | 決済手数料 |
PayPay (チャージ残高払い) |
1.6% 〜 1.98% + 消費税 |
クレジットカード (非mPOS) |
約3.24% (個人商店では 4% 〜 7%) |
クレジットカード (mPOS) |
約3.24% 〜 約3.74% |
※PayPay:Alipay経由とJPQR経由は除外
※クレジットカード(非mPOS):標準手数料率に準拠
要するに、クレジットカード払いではないQRコード決済には、決済手数料とは別に消費税が発生する。それを考慮すると、QRコード決済の手数料も案外……だったりするわけです。
ここにきて、『消費税法』が出てくるとは…やね。
これって、『インボイス制度(適格請求書)』が開始されると、ひょっとしてややこしくなる案件!?
機会があれば、税理士や公認会計士に伺ってみたいですわね。
現金払いの『円貨両替手数料』
決済サービス | 決済手数料 |
三井住友銀行 | 220円 〜 |
三菱UFJ銀行 | 無料 〜(1回目) 200円 〜(2回目以降) |
りそな銀行 | 220円 〜 |
これは補足的になるのですが、「キャッシュレス決済を廃止し、現金払いのみにすれば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、『円貨両替手数料』が発生する場合もあるため、現金払いもゼロコストとは強ち言えなかったりします。
また、話が逸れてしまいますが、現金を扱うことによるリスク(釣り銭の受け渡しミス・売上金の窃盗など)も店舗側としては考慮すべきでしょう。
「当店はキャッシュレス決済しか取り扱っておりません」という店舗は稀なので、実際のところは、どの店舗にも現金を扱うことによるリスクがあることになりますがね。
キャッシュフリー先進国である、スウェーデンだと話は違うかもですな。
スウェーデンの場合、個人間送金サービス『Swish』の導入が早かったのもあるでしょうね。
店舗側に“優しい決済”とは何か?
『キャッシュレス決済手数料』という観点からすれば、クレジットカード払いでのQRコード決済・mPOS払いでのクレジットカード払い、あたりが決済手数料に消費税もかからず、店舗側に“優しい決済”と言えるのではないでしょうか。
ただ、「現金払いこそ“優しい決済”だ」「そもそも決済手数料が高すぎる」「現金払いオンリーは時代錯誤」など、さまざまな意見はあるでしょう。なので、決済手数料を知った上でどうするのかは、ご自由にどうぞ。
もちろん、店舗側からすれば、そんなことよりもたくさんお金を使ってくれる太客こそ、一番ありがたい存在なのは言うまでもありません。
現金払いだけど、あまり買わない客。
クレカ払いだけど、たくさん買ってくれる客。
…どっちが太客かは、言わずもがなですな。
そういうことですわね。
まとめ「“爆買いする”が正解か」
元も子もない話ですが、贔屓のお店を応援したいなら、決済手数料云々よりも“爆買いする”のが正解かもしれません。
その上で、キャッシュレス決済の手数料を考えればよいわけです。
店舗側からすれば、自分のお店がキャッシュレス決済を導入することによって、どのようなベネフィットを得られるのかをリサーチし、その上で熟考しないといけないわけですね。
おまけ
日本における“現金主義”の根強さというのは、キャッシュレス決済に対する抵抗感や手数料の問題ではなく、『日本円』という自国通貨が存在していること。そして、円に対する信頼度の高さ。これらが根底にある気がしますわ。
そう考えていくと、日本銀行が2023年から実証実験する『中央銀行デジタル通貨(デジタル円)』が成功すれば…とか!?
どうなるかは分かりませんが、デジタル円次第で、キャッシュレス決済の手数料問題はクリアするかもしれませんわね。
ニコニコ“デジタル”現金払い、ってことやんね!概念的には!!
……かもしれませんわね。
おわり
*1債権譲渡:債権者が持つ債権を同一性を変えずに第三者に移転させる資本移転行為↩
キャッシュレス決済は、決済手数料がかかる。
現金払いは、円貨両替時に手数料がかかる。
…難しいですわね。