- Qiとワイヤレス充電器についてまるっとお勉強!
- Qi規格の登場でワイヤレス充電は脱カオス化した!
- 充電器を選ぶ際にはパワープロファイルに要注意!
偉大なQi充電器の世界。
時代はワイヤレス充電全盛期!スマートフォンもスマートウォッチもイヤホンも…ワイヤレスで充電できる時代。そんな時代の陰の立役者こそ『Qi』というワイヤレス充電の統一規格。そこで、今回はそのQiワイヤレス充電規格についてお勉強してみます。


充電界隈は沼ばっかやね……。

まさにカオスですわね。
目次
『Qi』とは?
この『Qi』とは、Wireless Power Consortium(WPC)という、ワイヤレス充電技術の国際標準規格を策定する業界団体が定めた、ワイヤレス充電の統一フォーマットのことを指します。

読み方は“チー”であーるっ!
機能を正常に働かせる原動力となる気を意味する中国語由来なんだって!
なお、このQi規格が誕生したのは2008年で、Ver. 1.0の規格策定が完了したのが2010年7月。
最近になって、一気にスマートフォンや完全ワイヤレスイヤホンで使われて始めた印象ですが、規格自体は10年前から存在する比較的レガシーなものだったりします。

日本だと、PanasonicがQiデバイスを発売するのが早かったかなー!?

Qiで充電するモバイルバッテリーをいち早く発売していましたよね。
Qi誕生の背景
——ワイヤレス充電ってQiだけなの!?

そんなことないのであーるっ!
Qi規格発足以前から、ワイヤレス充電は各所で使われていたぞー!
ワイヤレス充電(主に電磁誘導充電)というのは、Qi規格発足以前にも存在しています。有名どころだと、電動歯ブラシや固定電話の子機なんかもワイヤレス充電を採用しているデバイスです。古くはPHSなんかも…ワイヤレス充電な機種がありましたよね。
ただ、これだとワイヤレス充電の独自規格が、各メーカーやベンダーごとに有象無象に乱立することになります。A社のワイヤレス充電器はB社の製品では使えない(逆も然り)なんてことが、平然と起こってしまうわけです。…そうです、これだとあまりにもユーザーに不親切ですし、デバイスが増えるたびにワイヤレス充電器が増え続けるカオス状態になってしまうわけです。
そんなワイヤレス充電のカオスを防ぐべく生まれたのが、そう『Qi』なのです。
Qiというワイヤレス充電の統一規格があれば、ありとあらゆるデバイスをQiという1つの共通規格で標準化できるわけです。それこそ、このQi発足の狙いだったりします。

昨今のUSBと同じような感じですわね。

そうそうっ!
USB Type-Cケーブルを挿せばとりあえず充電できる…のワイヤレス充電版って感じかもだねっ!
Qi規格ワイヤレス充電器のメリット
- 過充電防止機能
- 過熱防止機能
- FOD(異物検出)機能
私たちがQiという1つの規格を使って、デバイスをワイヤレス充電するメリットは上記のとおり。
要するに、ちゃんとQi規格の認定を受けているワイヤレス充電器であれば、デバイスを保護しながら安全にワイヤレス充電ができるようになっている、というわけなのです。特に『FOD』という異物検出機能を持っていることは重要。これが搭載されていないと、ワイヤレス充電器とデバイスの間にゼムクリップなんかが挟まっていると、火災や感電の恐れだってあるのです。
なので、Qiという規格は、私たちが充電器やデバイスに依存することなく、便利にワイヤレス充電器できる。そして、そのワイヤレス充電が安全に行える。そういったメリットがあるわけなのです。今やスマートフォンやワイヤレス充電器は、ガジェットに明るくない人でも利用するわけなので、簡単&安全というのはとにかく大きなメリット。そう考えると、Qiというワイヤレス充電規格が偉大だということがよく分かります。

何も考えずにワイヤレス充電できるのが、このQiの偉大な功績なのであーるっ!
Qiのパワープロファイル
BPP | EPP | PPDE | |
最大出力 | 5W | 15W | † |
備考 | 基本的な出力 | Qi標準急速充電規格 | 独自充電拡張規格 |
Qiの電力プロファイル。
†BPP以上(5W〜)かEPP以上(15W〜)。
ここからはちょっとややこしいのですが、知っておかないと、Qiを使ってワイヤレス充電を行う際に混乱してしまうのが、この『Power profile』という存在。なので、このQiのパワープロファイルについて、しっかりと触れておきます。
そうそう、Qiの仕様は2020年6月現在、Ver. 1.2.4まで存在(仕様公開されているのは、Ver. 1.2.3まで)しているので、基本的にはそちらをベースにして話していきます。

それを踏まえて、Qiのパワープロファイルを表にまとめてあるぞっ!
BPP(Baseline Power Profile):5W
『BPP(Baseline Power Profile)』とは、Qiワイヤレス充電規格の標準的なパワープロファイルになります。電力供給量は最大5W。
このBPPプロファイルでの5W出力は、Qiの初期段階から存在しているパワープロファイルになっています。なので、とりあえず、Qiに対応する充電器やスマートフォンなどは、最低5Wではワイヤレス充電できることになります。
EPP(Extended Power Profile):15W
『EPP(Extended Power Profile)』は、Ver. 1.2で追加されたQiワイヤレス充電規格での急速充電のようなパワープロファイルになります。電力供給量は最大15W。
このEPPをサポートするワイヤレス充電器であれば、最大5Wではなく、最大15Wでデバイスをワイヤレス充電できることになります。ただし、当然ですが、デバイス側もEPPプロファイルに対応していないといけません。どちらかが満たしていない場合は、通常のBPPプロファイルを用いた最大5Wでの充電になります。
PPDE(Proprietary Power Delivery Extension)
『PPDE(Proprietary Power Delivery Extension)』とは、WPCが定めているプロファイルであるのですが、各メーカー独自に電力供給量を高めてもよいという拡張プロファイルになります。とどのつまり、独自規格ということ。これを使えば、BPPの5WやEPPの15W以上の電力供給量でワイヤレス充電が可能。
AppleのiPhone、GoogleのPixel、SamsungのGalaxy…これらはすべて5W以上でワイヤレス充電が可能なデバイスですが、これらは総じてこのPPDEプロファイルを用いた独自規格で電力供給量を拡張しています。

ややこしい予感が一気にしてきたやんね……。

Qi標準+独自規格の開放って感じが…ねー。
Qi規格ワイヤレス充電器の注意点
すでにややこしい予感がしていますが、このQiのワイヤレス充電のパワープロファイルこそ、Qi最大のトラップであり注意点だったりします。
これから話す、Qiワイヤレス充電の注意点を知っておかないと、「急速充電できるワイヤレス充電器を買ったのに、全然充電が速くないじゃん!」となること必至です。

例として、『iPhone SE(第2世代)』を使って解説するあーる。
iPhone SE (第2世代) |
|
最大受信電力 | 7.5W |
パワープロファイル | Basic Power Profile |
iPhone SE(第2世代)のQiワイヤレス充電仕様。
勘が鋭い人は、上表を見て「あれ?」と思ったはずです。
そう、iPhone SE(第2世代)のワイヤレス充電での最大受信電力は7.5Wなのに、パワープロファイルは最大5WのBasic Power Profileしか対応していないのです。(Source:WPC)
この摩訶不思議な現象の原因こそ、先程話した『PPDE(Proprietary Power Delivery Extension)』にあるのです。つまり、この7.5Wの最大受信電力というのは、EPP(Extended Power Profile)外の独自のワイヤレス充電プロファイルというわけなのです。
BPP対応充電器 | EPP対応充電器 | PPDE対応充電器 (iPhone急速充電対応) |
|
最大電力供給量 | 5W | 5W | 7.5W |
iPhone SE(第2世代)とQiワイヤレス充電器のプロファイル互換性。
簡単にまとめてしまうと、上記のとおり。
Qi対応のiPhoneシリーズは最大7.5Wでワイヤレス充電できるのですが、それが可能なのはiPhoneの急速充電に対応したワイヤレス充電器のみ。それ以外のワイヤレス充電器では、5Wでしかワイヤレス充電ができません。
なので、例えば、最大15Wの電力供給量を持つワイヤレス充電器(EPP非対応・PPDE対応)があったとします。ただ、これがiPhoneの急速充電規格に対応していない場合は、結局のところ5Wの電力供給量でしかワイヤレス充電できないというわけなのです。
したがって、Qi規格に対応したワイヤレス充電器を選ぶ場合において、そのワイヤレス充電器の最大電力供給量(W)を見る際には、PPDE(Proprietary Power Delivery Extension)は切り分けて見ておく必要があるというわけです。

iPhoneユーザーなら、iPhone用のワイヤレス充電規格に最適化された、Qi規格のワイヤレス充電器を選ぶのが無難そうですわね。

そうなってくるねー。
まとめ「Qiとはワイヤレス充電の革命的統一規格」

今回の『Qi』とは何かについておさらいすると…
- WPCが定めてたワイヤレス充電の統一規格
- Qi認定のワイヤレス充電器は簡単で安心して使える
- Qiにはワイヤレス充電プロファイルが数種類存在
- 充電器を選ぶ際には“独自規格”に要注意
という感じで、まとめておきます。
Apple、Google、Samsung、Huawei…などのQi対応スマートフォンは、総じてPPDEを利用して独自のプロファイルを持っています。対して、SonyやSHARPのQi対応スマートフォンはEPPを普通に使っている模様。このあたりは、もう少し深く掘り下げる必要があるかもしれません。

これは、Qiワイヤレス充電器もズブズブな沼の予感あーる。
おまけ

Qi対応ワイヤレス充電器探しの旅が始まりそうな予感っ!

USB PD対応充電器に引き続き…ですわね。

また収集癖が始まるわけやね……。

これは有意義なテクノロジーの勉強なのであーる!
おわり
■Reference
Wireless Power Consortium(1, 2, 3), What is a “Qi-Certified” Wireless Charger? - How-To Geek
USB PDもそうだけど、Qiも結構な“沼”であったぞぞぞ……。