eSIMだけど物理SIM?『eSIMカード』の存在

eSIMにも物理SIMがある
eSIMだけど物理SIM?『eSIMカード』の存在
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記事のポイント
  • 『eSIMカード』:RSP対応のカード形状の物理SIM
  • 『eSIM』の定義自体に複数の解釈がある → ややこしい
  • 『eSIM』という言葉が出てきたら何を指しているかに注目

『eSIM』といえば、「スマホに埋め込まれている組込型チップ」という認識が多い。しかし、eSIMだけど物理SIMな『eSIMカード』というのが、docomoやSoftBankから出ています。…というように、ややこしいので『eSIMカード』について整理します

さたえり

『eSIM』って、『Embedded-SIM』の略やんね?
なのに、組み込み型じゃなくて、物理SIMなの!?

まの

そういえば、『Apple SIM』もカード型がありますよね?
定義的には微妙ですが、こちらもeSIMと呼ばれてますわね。

二条ねこ

…というわけで、ややこしいので順番に見ていくぞっ!

eSIMなのに物理SIMな『eSIMカード』

eSIMなのに、チップ形状ではなくカード形状である『eSIMカード』。…というものがあるのですが、ご存知でしょうか。

さたえり

…うーん、意味がやっぱり分からないんやけど。

SoftBank

2022年3月より、SoftBankとY!mobileが、eSIMだけど物理SIMな『eSIMカード』の提供を開始しています。

このeSIMカードを用いることにより、物理SIMのみ対応の端末でも、eSIM搭載端末のように振る舞うことが可能となっています。なお、対応機種は限定されているので、どんな端末でもeSIMカードが使えるわけではありません。(Source:SoftBank

NTTドコモ

上記はSoftBankでの話ですが、2017年には、同様にNTTドコモでも、『eSIMカード』に対応したAndroidタブレット『dtab Compact d-01J』がリリースされています。

こちらも、端末にeSIMカードを挿入することにより、いわゆるeSIM化ができるようになっています。(Source:NTT DOCOMO

Apple

加えて、Appleからリリースされている、カード型の『Apple SIM』についても、拡大解釈をすれば、広義での『eSIMカード』と呼ぶことができます。

このように、 eSIM = 端末組み込み型チップ というイメージが強いですが、eSIMにはカード形状の物理SIMもある、というわけなのです。

二条ねこ
  • 組み込み型チップのeSIM → みんなが知ってる『eSIM』
  • 物理カード型のeSIM → 実はこっちも『eSIM』

…ということでしてっ!

さたえり

分かったような、分からないままのような……!?

『eSIMカード』:RSP対応の物理SIM

「物理SIMのくせに『eSIM』とは?コレガワカラナイ」…となりそうで、この『eSIMカード』の“正体”について、詳しく見ていくことにします。

端的に言えば、この『eSIMカード』とは、OTA[*1]によるリモートSIMプロビジョニング対応したカード型SIM、になります。

そもそも、SIMカードを利用するには、『プロビジョニング(= モバイル通信するために必要な情報の書き込み)』が必要となってきます。その作業を専用機器を使用せず、遠隔操作でスマートフォン等から行うことを『リモートSIMプロビジョニング(RSP)』と呼びます。

例えば、XS以降のiPhoneには、チップ型のeSIMが内蔵されています。

当然、出荷状態ではSIMこそ搭載されていますが、モバイル通信を行うために必要な携帯キャリアの情報は書き込まれておりません。

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2022年6月24日

そこで、オンライン上で楽天モバイルのeSIMを契約し、そのままオンライン上でSIMの開通をします。つまり、遠隔操作でeSIMにモバイル通信に必要な情報を書き込んでいるわけです。

これが『リモートSIMプロビジョニング』というものになり、同時にiPhoneのeSIMがRSPに対応しているということになるわけです。

「だから何?」と言われそうですが、要するに、『リモートSIMプロビジョニング』に対応したSIMであれば、組み込み式のチップ型・物理式のカード型、このどちらもが『eSIM』と定義されているというわけなのです。

二条ねこ

厳密に言えば、GSMAが定めるRSPに対応したSIM(eUICC)、というのが正式な『eSIM』のようですな。

まの

RSPに対応したSIMであれば、物理SIMでも『eSIM』と定義されるわけですね?

二条ねこ

何を基準にしてるかによるけど、『RSP Architecture』を読むと、“GSMAが言ってるeSIM”はそうなりますな。

『eSIM』に対する大きな誤解

結論としては、「『eSIMカード』もれっきとした『eSIM』のひとつ」ということになります。ただ、何となく納得がいかない感じも…しなくもない。

その原因こそ、原義としての『eSIM(Embedded-SIM)』だけが、脳内に刷り込まれてしまったからだと認識しています。

本来の言葉どおりならば、デバイスに組み込まれたチップ型SIMこそ『eSIM』そのもの。そして、こちらが我々が思い浮かべる『eSIM』という像です。

ところが、前述したように、GSMA的には『リモートSIMプロビジョニング(RSP)』に対応しているSIMであれば、チップ型SIM(= いわゆるeSIM)でも、カード型SIM(= 物理SIM)でも、双方ともに『eSIM』となるわけです。

とどのつまり、『eSIM』というのは、前後の文脈やその内容自体で、意味や定義というのが変わってくるということなのです。だから、「コレガワカラナイ」となってしまうのでして。

まとめ「eSIMにも物理SIMはある」

  • 機器に組み込まれたチップ型SIM → eSIM
  • RSPに対応したチップ型SIM → eSIM
  • RSPに対応した物理SIM → eSIM

このように、ひとくちに『eSIM』と言っても、ちゃんと内容を理解しないと、「いやいや、これはeSIMじゃないでしょ?」と頭が混乱してきます。(ちなみに、eUICCか否かを考えると、より頭が混乱します)

「eSIMにも物理SIMはある」ということだけ、頭に入れておけばよい気がします。…というか、ややこしすぎなのです。

二条ねこ

そして、RSPにも『M2Mモデル』と『コンシューマモデル』がありまして…うーむ……知恵熱が出るあーる。

eSIM対応キャリアまとめ + プラン比較表

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2022年6月5日
記事に登場したガジェット

-

おまけ

二条ねこ

この『eSIMカード』が普及すれば(対応機種も含めて)、 eSIM ⇆ nanoSIM の切り替えが楽になるんだけどねー。

まの

eSIMプロファイルを書き換えるだけで完了ですからね。

二条ねこ

そうそう!
現状だと、 nanoSIM → eSIM の切り替えは楽なんだけど、 eSIM → nanoSIM の切り替えが面倒なのであーる。時間も手間もかかるし。

さたえり

eSIMプロファイルの再発行も含めて、もっと柔軟性に富んでほしいやんね!

二条ねこ

そうなのであーる。

おわり


*1OTA:Over The Air(無線通信を利用した情報配信技術)


▽Source
SoftBank(1), Y!mobile(1