- E2EEメール『ProtonMail』がエコシステム化しつつある
- Protonは“脱Google”を希望する移民の拠り所となるか?
- 『広告モデル』か『受益者負担』かを選べる多様性は必要
E2EEメールサービスでお馴染みの『ProtonMail』ですが、『Calendar』『Drive』『VPN』を開始し、プライバシーに重点を置いたエコシステム群になろうとしています。セキュアで受益者負担なサービスのロールモデルになるのでしょうか?


営利企業である限り、無料なんてなく、無料のように見える、だけですからね。

その選択肢のひとつとして、『ProtonMail』が進化しつつあるわけやね!?
目次
『ProtonMail』のエコシステム化

『End-to-end encryption(E2EE)』と『Zero-access encryption』という暗号化技術を用いた、セキュアなメールサービスとして有名な『ProtonMail』。
このProtonMailが、単なるメールサービスではなく、“Google-ish”なエコシステムになりつつあります。

Google-ish!?

Googleっぽいエコシステムの展開になってきた、ということですな。
もちろん、“Googleっぽい”と言っても、ビジネスモデルは全然違うあーる。
Updated Proton, unified protection
去る2022年5月25日、社名を『ProtonMail』から『Proton』へと変更し、サービスやUI/UXをリブランディングしたことを発表しました。
このリブランディングにより提供されるサービスは、メールサービス『Proton Mail』、カレンダーサービス『Proton Calendar』、クラウドストレージ『Proton Drive』、VPNサービス『Proton VPN』、という4種類になりました(ProtonVPNは以前からあったが)。
とどのつまり、Proton(旧:ProtonMail)は、単なる匿名メールサービスを提供する企業ではなく、同社のポリシーであるプライバシーを軸としたエコシステムを提供する企業へと、ステップアップを遂げたわけなのです。

正直、『ProtonMail』は使ってるけど、メタデータが暗号化されてないから、競合サービス(例:Tutanota)に比べてアドバンテージが少なかったんだよねー。UIもシンプルなのは良かったけど、前時代的だったし。

仏当局にIPアドレスを提供した件が物議を醸して、公式が回答するという話もありましたよね。

Protonの肩を持つわけじゃないけど、プライバシー保護と匿名には意味の違いがあるし、コンテンツとメタデータの両方を完全匿名化すると犯罪の温床になりがちだし、コンテクストを無視して、“当局にメタデータを提供した”だけを切り取って問題にしたのは、ちょっと論点がズレてる感じもしなくないんだよねー。

なるほど。では、その心は?

法的拘束能力に基づいてメタデータを提供したのか、否かですな。
このコンテクストがないならば、「メタデータは覗いてるの?」と思っちゃうし、存在意義も微妙になってくるからねー。

どっちにしても、悪いことに使わなければよいわけやんね?

ま、そういうことであーる。(めんどくさくなった)
展開中のサービス群

『End-to-end encryption(E2EE)』と『Zero-access encryption』で暗号化された、セキュアなメールサービス。
『End-to-end encryption(E2EE)』で暗号化され、『Zero-knowledge proof』で保護された、セキュアなカレンダーサービス。
『End-to-end encryption(E2EE)』で暗号化された、セキュアなクラウドストレージ。
広告の配信や閲覧履歴の販売を行わないことがポリシーとなっている、マルチプラットフォーム対応のVPNサービス。
前述したとおり、Proton(旧:ProtonMail)では、以上4つのサービスを提供しています(ベータ版を含む)。
①Proton Mail

『Proton Mail(旧:ProtonMail)』は、End-to-end encryption(E2EE)・Zero-access encryptionという暗号化技術を用いたメールサービス。
リブランディングにより、UIがかなりモダンなものとなり、旧ProtonMailユーザー的には、かなり使いやすくなった印象を受けます。
こちらは、容量制限はありますが無料で利用可能。
②Proton Calendar

『Proton Calendar』は、End-to-end encryption(E2EE)で暗号化されたカレンダーサービス。
他のカレンダーサービスと同様に、ユーザーを招待してイベントやカレンダーの共有も可能。他のカレンダーから受信したイベントについては、Zero-knowledge proof(ゼロ知識証明)を用いて保護します。
こちらは、無料プランでは利用不可(3.49ユーロ/月から)。
③Proton Drive

『Proton Drive』は、End-to-end encryption(E2EE)で暗号化されたクラウドストレージ。なお、現在はベータ版とのこと。
暗号化されるのは、ファイル名・フォルダ名・パス・ファイルコンテンツ。他のクラウドストレージと同様に、他のユーザーへの共有も可能。イメージ的には『Cubbit』の非分散型という感じ。
こちらは、無料プランでは利用不可(7.99ユーロ/月から)。
④Proton VPN

『Proton VPN(旧:ProtonVPN)』は、マルチプラットフォーム対応のVPNサービス。
「プライバシーとセキュリティは基本的人権」とのことで、広告配信や閲覧履歴をコッソリ販売することはないとのこと。有料プランのVPNは高速が売りのようです。
こちらは、有料プラン(7.99ユーロ/月から)が主体ですが、無料で使えるバージョンも用意されています。
『広告モデル』か『受益者負担』か

“Google-ish”になりつつある『Proton』ですが、両者のポリシーは大きく異なります。
もちろん、Googleが悪い・Protonが良い、という話ではありません(逆も然り)。ですが、このProtonのような、セキュアで情報収集をしない代わりに『受益者負担』なサービスというのは、筆者としてはもっと増えていってほしいところではあります。
多くのGoogleサービスが(見かけ上)無料で使えるのは、『広告モデル』のビジネスであるから、というのは言うまでもありません。つまり我々は、金銭を支払わない代わりに、情報をサービスの対価として、同社に提供しているわけです。
そして、この『広告モデル』が、昨今におけるWebサービスのデファクトスタンダード化しています。なので、多くのユーザーは「ネットはタダで使えるもの」と錯覚してしまうのでして。
Googleをはじめとする『広告モデル』の是非、これは人によって多様な意見があるでしょう。ただ、ひとつ言えるとするならば、もっと『受益者負担』なサービスが増えてもよいのではないでしょうか。ただし、金銭以外は何も渡さない、が絶対条件ですが。
そういった意味では、この『Proton』が従来のメールサービスの枠を越え、“Google-ish”なエコシステムを構築しようとする試みには、「新たなエコシステムのロールモデルになってほしい」という大きな期待を寄せております。

Googleも好きだけど、選択肢がないのは…ね。

今よりもっと、ニーズに応じたサービスが提供されれば理想ですわね。
まとめ「何を支払うかを考えるべき」

「営利企業に無料はなく、我々が真に何を支払っているのか考えるべき」ということだけ最後に言って、本稿を閉じさせていただきます。
それを考えて納得した上で、Googleを使うなり、Protonを使うなり、すればよいわけなのです。もちろん、プライバシーポリシーも目を通した上で、です。

内容に応じて、GoogleとProtonを併用してもよいあーる。
おまけ

ユーロ決済以外も選べるのが理想だけどね。

為替変動の影響を受けますからね。

でも、現地法人を作ると、その国の法律が絡んでくるから……。

…うーむ。
おわり
サービスを享受する対価が、“金銭”か“情報”かの違いですな。