- macOSの日本語入力ソフトの性能を比較した!
- それぞれ良し悪しがあって一長一短だ!
- 最終的には試して自分に合うものを選ぶべし!
Macの日本語入力チキチキ決定戦。
パソコンと切っても切れない関係なのが、『Input method』。macOS標準では『日本語IM』が採用されていますが、これがなかなかの曲者。そこで、macOS標準の『日本語IM』と『Google 日本語入力』・『ATOK』・『かわせみ2』という、4つのInput methodを比較してみました。
意外と重要な選択やんね……。
そうなのであーる。
あ、詳しいことは後で話すとして、『日本語入力』の名称で統一して話を進めるぞー!
目次
比較する日本語入力の紹介
まずは、比較する日本語入力ソフトを紹介していくぞー!
日本語IM:漢字Talk&ことえりの流れを汲むmacOSの新標準
『日本語IM』とは、macOS Catalinaに標準搭載されている日本語入力ソフトのこと。
以前のmacOS(OS X)に搭載されていた日本語入力ソフトに『ことえり』というものがあります。こちらのほうが馴染みがある人が多いはず。しかし、この『ことえり』、OS X Mavericksを最後に採用終了。OS X Yosemite以降から、現在の『日本語IM』という日本語入力ソフトに置き換わりました。
ことえり → 日本語IM となり、解析エンジンが変更されたりしています。日本語IMは 、SpotlightエンジンやiOSの日本語入力ソフトと同じ『MeCab』が採用されているそう。これにより、以前のことえりよりも変換精度が向上したわけです。
ことえりって、源氏物語の『言選り』由来だったんだよねー。
風情がある名前でしたよね。
Google日本語入力:検索エンジンが生み出す膨大なボキャブラリー
『Google日本語入力』とは、Googleが開発した日本語入力ソフト。ちなみに、正式名は『Google 日本語入力』(Google系サービスは“Google”の後に半角スペースが入るのが常)となっています。
Googleが生み出しただけあって、とにかくボキャブラリーが豊富。しかも、サードパーティー製の日本語入力ではありますが、“無料”で使えることもあり、かなりのユーザー数を誇っています。
大きな特徴としては、常時辞書が更新されていくこと。これにより、他の日本語入力ソフトが苦手とするネットスラングや若者言葉に強かったりします。また、Web由来なので、キャラクターやゲームのような固有名詞にも強く、ニッチな単語でも一発で変換できることが多いです。
“MacBook Pro”とか“鬼滅の刃”とか…一発変換できーるっ!
固有名詞に強いから、変換効率が高そうやんね!
ATOK:日本語入力ソフトのベストセラーで最高峰
『ATOK』とは、ジャストシステムが開発・販売している日本語入力ソフト。十数年来のパソコンユーザーなら『一太郎』とともに、利用しているユーザーもきっと多いはず。
古くから日本語入力と向き合ってきただけあって、とにかく日本人が日本人に向けた感が強い。長文を一気に変換したり、文脈から推測して変換する精度も高い。なので、ライターや文筆家なら、「ATOKが最高の日本語入力である」と言う人もきっと多いと思う。
現在のATOKはサブスクリプションタイプになっており、『ベーシック』なら300円/月、『プレミアム』なら500円/月、とそれぞれなっている。1ライセンスにつき、10台までインストール可能なので、価格的には良心的といえるはずです。
ディープラーニングと人工知能で変換エンジンを構築しているとかとか……。
テクノロジーの賜物ですわね。
かわせみ2:軽快で美しいUIと操作系が魅力
『かわせみ2』とは、物書堂が開発・販売している日本語入力ソフト。ATOKやGoogle日本語入力とは異なり、macOS専用となっている。
かわせみ2の大きな特徴は、Macと調和するデザインセンスと変換の軽快さ。ATOKやGoogle日本語入力のようなボキャブラリーの膨大さこそないものの、良い意味でことえりを日本人向けにブラッシュアップさせた感じです。iCloudを利用して、ユーザー辞書を同期できるのもポイント。
ライセンスを購入する有料ソフトですが、サブスクリプション型ではなく買い切り型。価格は1ライセンスで2,200円、3ライセンスで4,400円。サブスクリプションに抵抗があるユーザー的には嬉しいポイント。
macOSに特化しているから安定しているのも強みっ!
“Catalina”とかも一発変換(しかも辞書付き)で出るんやね!
日本語入力ソフト比較結果
日本語IM (旧ことえり) |
Google 日本語入力 | AOTK | かわせみ2 | ||
対応OS | macOS | macOS Windows 10 |
macOS Windows 10 Android |
macOS | |
価格 | 無料 | 無料 | 300円/月〜 | 2,200円〜 | |
ユーザー辞書同期 | ○ | × | ○ | ○ | |
変換能力 | 長文変換 | ○ | ◎ | ○ | ○ |
予測変換 | ○ | ◎ | ◎ | △ | |
特殊記号変換 | △ | ○ | ◎ | ○ | |
誤読変換 | △ | ◎ | ◎ | △ | |
難読地名変換 | △ | ○ | ○ | △ | |
備考 | ライブ変換 初期状態では激重 |
流行に強い UIが若干変 |
文法に強い 設定項目多い |
軽快動作 変換精度微妙 |
各日本語入力ソフトの機能比較表。
これから比較検証した結果を書いていくのですが、その結論をまとめたのが上表になります。
変換能力比較対決
【対決1】長文変換
日本語IM (旧ことえり) |
Google 日本語入力 | AOTK | かわせみ2 | |
この行為は禁忌事項 | ○ | ○ | ○ | × |
明日歯医者に行きます | ○ | ○ | × | ○ |
隣の客はよく柿食う客だ | ○ | ○ | ○ | ○ |
庭には二羽鶏がいる | × | ○ | ○ | ○ |
徐々に迫ってくるジョジョと叙々苑に行く | ○ | ○ | ○ | ○ |
各日本語入力ソフトの長文変換結果。
まずは、長文を一気に正確に変換する能力を検証。
日本語は同音異義語が非常に多いので、長文変換の精度が高くないとイライラすることが多くなってきます。なので、文脈から推測して変換する能力は非常に重要。
検証結果は、今回の例文だと『Google日本語入力』が一歩リード。あとは、どの日本語入力ソフトも似たような結果となりました。
【対決2】予測変換
日本語IM (旧ことえり) |
Google 日本語入力 | AOTK | かわせみ2 | |
知覚過敏 | × | ○ | ○ | × |
有機EL | ○ | ○ | ○ | ○ |
L'Arc〜en〜Ciel L'Arc-en-Ciel |
○ | ○ | ○ | ○ |
μ's | ○ | ○ | ○ | × |
鬼滅の刃 | ○ | ○ | ○ | × |
各日本語入力ソフトの予測変換結果。
次は、固有名詞も含めた予測変換の精度を検証。
どんどん軽快にタイピングしていくならば、固有名詞のボキャブラリーの豊富さと精度の高さは重要事項。
検証結果は、辞書が随時アップデートされる『Google日本語入力』と『ATOK』が、やはり強いという結果に。誤変換が多い“知覚過敏”の変換精度はハッキリと分かれた様子。
【対決3】特殊記号変換
日本語IM (旧ことえり) |
Google 日本語入力 | AOTK | かわせみ2 | |
″ (ダブルプライム) |
× | × | ○ | × |
⁰ (上付き文字) |
× | ○ | ○ | ○ |
† (ダガー) |
○ | ○ | ○ | ○ |
§ (セクション) |
○ | ○ | ○ | ○ |
∈ (集合記号) |
× | ○ | ○ | ○ |
各日本語入力ソフトの特殊記号変換結果。
3つめは、特殊記号の変換精度を検証。
このあたりは、論文や技術系の文章を打っているユーザーなら、注視しておきたいポイント。もちろん、どの日本語入力ソフトでも、専用の機能を用いれば特殊記号の入力はできるのですが、ここは変換でズバっと出したいところ。
検証結果は、『ATOK』が一歩リード。特に“″(インチ・ダブルプライム)”をちゃんと出せたのはATOKだけ。個人的に多用する記号なので、ATOKの変換精度は嬉しい。普段はユーザー辞書に登録しているので……。
【対決4】誤読変換
日本語IM (旧ことえり) |
Google 日本語入力 | AOTK | かわせみ2 | |
ぼんれい (凡例:はんれい) |
× | ○ | ○ | × |
やくてい (約定:やくじょう) |
○ | ○ | ○ | ○ |
わんきょく (婉曲:えんきょく) |
× | ○ | ○ | × |
ちきん (冶金:やきん) |
× | ○ | ○ | × |
まいかた (枚方:ひらかた) |
× | ○ | ○ | × |
各日本語入力ソフトの誤読変換結果。
4つめは、誤読を正しく変換してくれる精度の検証。Google的にいうと『もしかして変換』というものです。
もちろん、我々が正しい日本語を知っていれば問題ないことなのですが、老若男女問わず、多くのユーザーが使う日本語入力ソフトだけあって、そこは柔軟に対応してほしいところ。
検証結果は、『Google日本語入力』と『ATOK』の圧勝。特にATOKに関しては、ちゃんと誤読であることをユーザーに変換時に認知してくれます。なので、使っていくうちに誤読がなくなっていくという副次的作用も。
【対決5】難読地名変換
日本語IM (旧ことえり) |
Google 日本語入力 | AOTK | かわせみ2 | |
とんどうちょう (通堂町) |
○ | ○ | ○ | × |
おそきない (晩生内) |
○ | ○ | ○ | ○ |
さっくる (札久留) |
× | × | ○ | × |
ひじゃばし (比謝矼) |
× | ○ | ○ | × |
いじゃかじゃ (伊釈加釈) |
× | ○ | × | × |
かんのうちょう (神呪町) |
○ | ○ | ○ | ○ |
あぜまめちょう (阿字万字町) |
○ | ○ | ○ | × |
もずめ (物集女) |
○ | ○ | ○ | × |
うの (鸕鷀) |
× | × | × | × |
各日本語入力ソフトの難読地名変換結果。
最後は、難読地名の変換精度の検証。
難読地名も全国津々浦々。特に歴史的背景から、北海道や沖縄県に難読地名が多い印象です。お住まいの地域が難読地名だったら、住所入力時に変換精度が高くないとストレスが溜まっていくので、こういうローカライズ的なものも抑えておいてほしいポイント。
検証結果は、『Google日本語入力』と『ATOK』が一歩リード。ただ、どの日本語入力ソフトも地名については完璧ではないので、網羅していくならば、ユーザー辞書や外部の辞書をインストールする必要が出てきそうです。
各日本語入力ソフトの感想
- 日本語IM:変な癖が多い・鍛える必要あり・設定次第では激重
- Google日本語入力:もしかして検索が優秀・ボキャブラリーが豊富・若者言葉に強い・ミスリードもある
- ATOK:記号変換に強い・正しい日本語入力を教えてくれる・検索精度が優等生
- かわせみ2:鍛える必要アリ・軽い・キーバインドがmacOS式
各日本語入力ソフトの感想は上記のような感じ。
macOS標準の『日本語IM』は、良くも悪くも癖が強い印象。
カタカナ変換で変なスペースが入る悪癖(例:ライブ トレース|“ブ”と“ト”の間に意図しない半角スペースが入る)ことや、デフォルトの設定だともっさりしているのが難。また、ことえりより進化しているものの、ボキャブラリーが少ないのがネック。iCloud同期できるので、鍛えていけば…という感じ。
『Google日本語入力』は、使いやすい万能選手という印象。
とにかくボキャブラリーが豊富なので、サクサク打てるのが強み。若者言葉やアニメ用語にも強く、ネットユーザーが好むチューニングになっています。ただ、変換のミスリードが多々あることや、クラウドでユーザー辞書が同期できないのがネック。
『ATOK』は、有料なことさえ目をつぶれば最高峰という印象。
Google日本語入力とは異なるボキャブラリーの豊富さで、しっかりとした日本語をタイピングしていくならこちら。正確な日本語を知りながら文章を書いていくという点では、このATOKの右に出るものはいないはず。クラウド同期ができるのもマル。唯一のネックはサブスクリプションということ。
『かわせみ2』は、ユーザーとともに賢くなっていく印象。
UIがMacライクで非常に美しく使いやすい。しかも、iCloudでのユーザー辞書同期も可能。日本語IMのような悪癖もナシ。有料だが買い切り。…とメリットは多い。ただ、インストールしたてだと、お世辞にも賢いとは言えない変換精度が最大のネック。ユーザーがどんどん鍛える必要アリという感じです。
どれも一長一短という感じですわね。
補足
変換候補のUI
環境設定のUI
備考
Input methodの名称揺れ
- Windows:IME(input method editor)
- macOS:入力プログラム
余談ですが、Input methodはOSによって呼び方にブレがあり、Windowsでは『IME』、macOSでは『入力プログラム』となっています。
パソコン慣れしている人ほど、『IME』って言いたくなるよねー。
一番馴染みがありますからね。
まとめ「自分に向いた日本語入力ソフトを探すべし!」
長々〜っと話してきましたが、
- 日本語IM:ライブ変換を使いたい人向け
- Google日本語入力:ネット系の言葉をよく利用する人向け
- ATOK:正しい日本語で文章入力をしたい人向け
- かわせみ2:ことえり上位互換ライクに使いたい人向け
という感じで、各種日本語入力ソフトを選んでみるとよいかもです。
この手の日本語入力ソフトは、かなり個人の趣味嗜好が出てくるはず。なので、「○○がおすすめ!」と断定するのは難しい。有料ソフトも体験版が存在しているので、まずは一度試してみるとよいかもしれません。
ねこちゃん的には『ATOK』…かなー!?
おまけ
私は『かわせみ2』派ですわね。キーバインド的に。
うちは…『Google日本語入力』かな!?
うむぅ…やっぱり、好みが分かれるところだよねー。
おわり
日々利用するものですから、ベストを決めるわけですね。