- 『エネループ』と『充電式エボルタ』の違い → 生産国
- 日本製Ni-MH電池のルーツを辿ると現在の『FDK』に行き着く
- エネループ ≒ 充電式インパルス ≒ FDKニッケル水素電池
前回話したように、『エネループ』と『充電式エボルタ』の違いは“生産国”です。
ただし、生産国が違うだけ、という単純な話ではありません。『エネループ』には、東芝の『充電式インパルス』や『FDKニッケル水素電池』も関係してくる、非常に奥が深い話だったのです。


『FDK』は三洋電機から『三洋エナジートワイセル』が譲渡されてて、でもその前に、『東芝電池』のニッケル水素電池事業が『三洋電機』に譲渡されてて、えーと……どういうこと!?

ややこしすぎますわね。
『エネループ』と『充電式エボルタ』の違いについて

| エネループ | 充電式エボルタ |
発祥 | 三洋電機 | Panasonic |
誕生年 | 2005年 | 2008年 |
生産拠点 | 日本 (FDK高崎) |
中国 (パナソニックエナジー無錫) |
※『eneloop lite』は一部中国製
※『充電式エボルタ (ハイエンドモデル)』は一部日本製
『エネループ』と『充電式エボルタ』の違い、これについて簡潔にまとめたのが上表になります。
両者の違いについては、過去記事(『エネループ』と『充電式エボルタ』の“決定的な違い”が興味深い)で話しているので、詳しい解説はここでは割愛します。
そんな、『エネループ』と『充電式エボルタ』の違いなのですが、注目しておきたいのは“生産国”、もっと言えば“生産拠点とそのルーツ”だったりします。
なので、本稿では、『エネループ』と『充電式エボルタ』がどこで生産されているのか、日本製の充電式ニッケル水素電池はどこが製造しているのか、ということについて焦点を当てていきます。

これが実に奥が深い話なのですぞっ!
『エネループ』は日本製

2005年に三洋電機から登場した、充電式ニッケル水素電池『エネループ』。
現在、『エネループ』というブランドは、Panasonicが三洋電機を子会社化したことにより、Panasonicが取得しております。しかし、エネループを製造していた、当時の三洋電機子会社『三洋エナジートワイセル』については、米国と中国の独占禁止法の関係から、Panasonicの子会社にはなっておりません。Panasonicが三洋電機を買収する際、三洋エナジートワイセルは富士通系の『FDK』という企業に譲渡されております。
そのような経緯から、Panasonic版『エネループ』については、Panasonic製品ではありつつも、自社製造ではなく、群馬県高崎市にあるFDKの工場で製造され、OEM提供してもらい、販売しているわけです。ただし、メーカーが明言しているわけではないので、一部推測を含みます。
とはいえ、三洋エナジートワイセルがFDKに吸収されたこと、Panasonicは日本国内に充電式ニッケル水素電池の製造拠点を持っていないこと、これらのことから、やはり製造元はFDK高崎だと言えるのではないでしょうか。

それにしても、買収の際に、米国と中国の独占禁止法当局から指摘を受けるとは、妙な話ですよね。

日本の独占禁止法には抵触しなかったんかな!?

当時の記事を読み漁ったんだけど、米国と中国の当局から指摘があったから株式公開買い付けの承認が得られなかった、としか書かれてないんだよね。
だから、独占禁止法というよりかは、もっと政治的なことが絡んでるのかもしれませんなー。

ああ、闇ですわね。
『充電式エボルタ』は中国製

2008年にPanasonicから登場した、充電式ニッケル水素電池『充電式エボルタ』。
この『充電式エボルタ』の歴史は意外と古く、Panasonicが三洋電機を子会社化する以前から、製造および販売されている充電式ニッケル水素電池だったりします。
数年前に生産終了となっている『充電式エボルタ (ハイエンドモデル)』を除き、現行の充電式エボルタは中国で製造されております。Panasonicが所有する充電式ニッケル水素電池の製造拠点は、中国江蘇無錫にある『パナソニックエナジー無錫』のみ。なので、中国江蘇無錫の自社工場で製造されている、ということが分かります。
ちなみに、そんな『充電式エボルタ』ですが、2023年3月を以って、その歴史に幕を閉じることとなりました。というのも、Panasonicが、充電式ニッケル水素電池のブランドを『エネループ』に統一すると発表したためです。なので、すでに『充電式エボルタ』は過去の製品となっております。

これから流通する、新型『エネループ (第5世代)』が“中国製”になるか“日本製”になるか、そこにも注目しておきたいのであーる。

つまり、『FDK高崎』で製造されるのか、『パナソニックエナジー無錫』で製造されるのか、ということですわね。
日本製の充電式ニッケル水素電池

現在、日本の大手メーカーから発売されている、“日本製”の充電式ニッケル水素電池には、『Panasonic』『富士通(FDK)』『東芝(東芝ライフスタイル)』のものが存在しております。
これらの日本製充電式ニッケル水素電池は、いずれもFDKの高崎工場で製造されていると言われております。要するに、Panasonic『エネループ』も、東芝ライフスタイル『充電式インパルス』も、FDKニッケル水素電池のOEMというわけです。
三洋電機時代のエネループを製造していた『三洋エナジートワイセル』が、独占禁止法の関係から、富士通系のFDKに譲渡されたのは前述のとおり。その際、三洋エナジートワイセルは『FDKトワイセル』と社名変更をし、最終的にFDKへ吸収された形になっております。
こういう経緯から、PanasonicとFDKが繋がってくるわけです。しかし、それだけでは、東芝ライフスタイルとの関係性が見えてきません。でも、実はちゃんと、東芝とFDKも繋がってくるのです。
遡ること、2001年4月。Panasonicに買収される以前の三洋電機は、当時の東芝電池から、充電式ニッケル水素電池の事業を譲渡されているのです。そして、三洋電機は、東芝電池の同事業の生産拠点である『東芝電池高崎工場』を譲り受け、新たに『三洋エナジー高崎』として事業継続をしていたのです。
要するに、東芝電池の『東芝電池高崎工場』が三洋電機に譲渡されたことにより、『三洋エナジー高崎』へと名称変更。のちに、三洋エナジー高崎は『三洋エナジートワイセル』へと社名変更。その三洋エナジートワイセルがFDKへ譲渡され、『FDKトワイセル』へ。そして、FDKトワイセルが現在の『FDK高崎工場』というわけなのです。

だから、Panasonic『エネループ』と東芝ライフスタイル『充電式インパルス』が、FDKニッケル水素電池のOEMになるわけなんやね!?

まさに、日本の充電式ニッケル水素電池における歴史が詰まってますわね。

ま、そういうことあーる。
まとめ「『FDK』は三洋電機であり東芝である」

『エネループ』は、FDK高崎が製造した日本製。
『充電式エボルタ』は、パナソニックエナジー無錫が製造した中国製。
- Panasonic
- エネループ プロ
- エネループ
- 富士通(FDK)
- 高容量タイプ
- スタンダードタイプ
- 東芝(東芝ライフスタイル)
- 充電式インパルス (高容量タイプ)
- 充電式インパルス (スタンダードタイプ)
- 充電式インパルス (ライトタイプ)
- 充電式ニッケル水素充電池
『東芝電池高崎工場』 → 『三洋エナジー高崎』 → 『三洋エナジートワイセル』 → 『FDKトワイセル』 → 『FDK高崎工場』
……うーん、Panasonicが三洋電機を買収したけど、独占禁止法で電池部門をアクワイアできなかったのって、結構痛手だったのかもしれません。

『充電式エボルタ』って、ちょっと異端なのかもしれませんな。
おまけ

そういう歴史があるから、こういう“分家”が生まれたわけですな。

いっそ『エネループ』のネーミングライツをFDKや東芝に売れば、と思ってしまいますわね。

『エネループ』と『フジループ』と『シバループ』、ですなっ!?

……え!?
おわり
結論からすると、
「FDKニッケル水素電池のOEMばっかりですな」
という感じあーる。