- Google PixelがDP Alt Mode非対応なのは“作為的”な仕様の可能性
- DP Alt Modeを拒絶し『DisplayLink』を推奨する真意が謎
- DP Alt ModeもMiracastも非対応なリファレンス機とはこれ如何に
Google Pixelは、慣例的に『DP Alt Mode』非対応です。
そこで、USB-C対応モバイルモニターなどの需要が高まるなか、“何故『DP Alt Mode』非対応を貫くのか?”、について考察していきます。
同じハイエンドモデルで比較検討するならば、DP Alt Mode対応傾向のある『Galaxy』や『Xperia』が相対的に優位になりますものね。
そこまでして、『Chromecast』を使わせたい意図とは一体……!?
目次
Google Pixelは『DP Alt Mode』非対応
冒頭で触れたとおり、GoogleのAndroidスマートフォン『Google Pixel』は、USB Type-C経由で映像出力を行う『DisplayPort Alternate Mode(DisplayPort Over USB Type-C)』に非対応です。
USB Type-Cを用いて、USB以外のプロトコルを伝送することが可能となる『Alternate Mode』のうちのひとつ。
SuperSpeedに対応したUSB Type-Cコネクタのうち、サイドバンド信号線・SuperSpeed信号線という、2種類のピンアサインをDisplayPortプロトコルとして利用する。
DisplayPort Alternate Mode(DisplayPort Over USB Type-C)は、『DP Alt Mode』や『DisplayPort Alt Mode』と短縮して記載されることが多い。
Google Pixel対応の映像出力プロトコル
| 映像出力対応 | 映像出力非対応 |
有線接続 | DisplayLink | DP Alt Mode |
無線接続 | Google Cast | Miracast |
Google Pixelで映像出力をしたい場合は、有線接続であれば『DisplayLink』、無線接続であれば『Chromecast(Google Cast)』、をそれぞれ利用する必要があります。
なお、先のDP Alt Modeと同様に、映像の無線接続でおなじみの『Miracast』についても、Google Pixelでは非対応となっております。
かなり認知されてきましたが、『DP Alt Mode』と『Miracast』に非対応というのは、Android端末の中でもかなり制約が多いほうですよね。
それでも、頑として“非対応を貫く”んだけどね。Googleさんは。
Google PixelのDP Alt Mode非対応は“作為的”
当然、真意についてはGoogleのみぞ知るですが、筆者としては、Google PixelのDP Alt Mode非対応については“作為的”な仕様である、と認識しております。
それでは、なぜ“作為的”だと認識しているのか。そのあたりに根拠となる材料について、これからお話していきます。
Google PixelのUSB-Cは『SuperSpeed』対応
そもそもですが、DP Alt Modeを利用するには、USB Type-Cにおけるレセプタクル/プラグの両方が『SuperSpeed』に対応している必要があります。要するに、“USB 3.x以上”でないといけないわけです。なので、USB 2.0では、このDP Alt Modeは物理上利用できません。
DP Alt Mode対応といえば、あとは『Thunderbolt』ですわね。
とはいえ、スマートフォンで採用されることはあり得ないので、ここでは考える必要はありませんが。
ま、Thunderbolt自体も、USB Type-CのAlternate Modeのうちのひとつだけどね。
あと、“USB 3.x以上”を示す『SuperSpeed』なんだけど、規格策定団体のUSB-IFが、SuperSpeed USBのロゴマーク使用を廃止していますな。でも、本稿では便宜上、SuperSpeedという表現を使わせてもらっているのであーる。
| USB Connector Types | USB Specifications |
Pixel 7 Pixel 7 Pro |
USB Type-C | USB 3.2 Gen 2 |
Pixel 6a | USB Type-C | USB 3.1 Gen 1 |
Pixel 6 Pixel 6 Pro |
USB Type-C | USB 3.1 Gen 1 |
Pixel 5a (5G) | USB Type-C | USB 3.1 Gen 1 |
Pixel 5 | USB Type-C | USB 3.1 Gen 1 |
翻って、Pixel 5以降のGoogle Pixelシリーズにおける、搭載されているUSBポートの仕様を一覧表にしてみたのですが、総じて『SuperSpeed』に対応していることが分かります。
ここから導き出される答えは、DP Alt Modeを物理的に実装可能、ということです。
DP Alt Modeを物理的に実装できるにも関わらず、Googleは実装しませんでした。ですので、何らかの意図があって、Google PixelがDP Alt Mode非対応になっている、と邪推してしまいたくなります。
そうそう、USB 3.x系におけるDP Alt Mode実装というのは、あくまで“オプション”扱いとなっております。というのも、USBプロトコルとAlternate Modeとは、それぞれが独立しているからです。なので、ベンダーからすれば、DP Alt Modeを実装させるか否かについては任意ということになります。
したがって、Googleの肩を持つわけではありませんが、SuperSpeed対応のUSB Type-Cを搭載させながらDP Alt Modeは実装させない、というのは普通に有り得る話ではあります。コストカットの観点から、DP Alt Modeを非対応にさせた、とも考えられるわけです。
ただ、フラグシップ級のスマートフォンでやる所業ではないのであーる。
フラグシップ級のスマートフォンで、『USB 2.0』を採用しているメーカーを知ってるんやけど。
なっ!?…Xiaomiのことではないかっ!
カーネルレベルでDP Alt Modeが無効化されている
Ken Huang氏が公開しているGit at Google、简书に公開されているpixel4 xl debug记录、などを見ると明らかなのですが、Google PixelではカーネルレベルでDP Alt Modeが無効化されるソースコードの記述がなされております。
ソースコードにある、&sde_dp { status = "disabled";};
および&mdss_mdp { connectors = <&sde_rscc &sde_wb &sde_dsi>;};
が、DisplayPort機能の無効化に関する記述です。
SuperSpeed対応のUSB Type-Cを搭載させながら、カーネルレベルでDP Alt Modeを無効化する。これを“作為的”と呼ばずして何と呼ぼうとするか、というわけなのです。ですなの。
これは…やってますな。
……やね。
“DP Alt Mode非対応”を貫く理由
SuperSpeed対応のUSB Type-Cを搭載させながら、カーネルレベルでDP Alt Modeを無効化するという、ある種の離れ業をやってのけるGoogle。
なぜにそこまでして、“DP Alt Mode非対応”を貫くのでしょうか?
前述したように、Google Pixelで映像出力をしたい場合は、有線接続であれば『DisplayLink』、無線接続であれば『Chromecast(Google Cast)』、をそれぞれ利用する必要があります。
DP Alt Modeと同様に無効化されている、無線で映像出力ができる『Miracast』については、『Chromecast(Google Cast)』と競合するプロトコルだから、という理由で合点がいきます。ただ、そのロジックをそのままDP Alt Modeにも当てはめてよいものなのでしょうか。
興味深いことに、GoogleのPixel Phone Helpには、有線での映像出力に『DisplayLink』を推奨する記載がされているのです。
真意は定かではありませんが、『DP Alt Mode』を拒絶し、『DisplayLink』を許容する理由が、何かGoogleにはあるようです。ただ単純に、『Chromecast(Google Cast)』を使わせたいだけなのかもしれませんが。DisplayLinkは、利便性ではDP Alt Modeよりも数段落ちますので。
どっちにしても、Google PixelがDP Alt Mode非対応なのが、スマートフォン選びを難しくさせてるのであーる。
DisplayLinkでの接続では、Nreal Air/Rokid Airは使えませんものね。
まとめ「意地でも対応しなさそう」
有線接続は『DisplayLink』に対応。
無線接続は『Chromecast(Google Cast)』に対応。
おそらく、“作為的”な仕様。
ハードウェアとしては『SuperSpeed USB』に対応しているので、DP Alt Modeを物理的に実装可能だが、それを敢えてしていないことになる。また、カーネルレベルでDP Alt Modeが無効化されている。
『Chromecast(Google Cast)』を使わせたい意図がありそうだが、『DisplayLink』は無効化していないので真意は不明。
なんとなく、この先もずっと『Google Pixel』は、DP Alt Mode非対応のまま堅持しそうです。
スマートフォンなので、USBポートが『USB4』になることもないでしょうし、永遠と茶を濁されそうな気がしてなりません。
DP Alt Mode非対応と知りながら買う、このツラさよ。
おまけ
いっそのこと、「Google Tensorだと、技術上DP Alt Mode非対応なの。ごめんぬ」ぐらいの大嘘をかましてくれたほうがスッキリするあーる。
さすがにそれは……。
それくらい、ストレスフルなんやね。
おわり
DP Alt Mode非対応だから、購入候補から外している人も少なくないと思われーる。