- MacのSidecarを使うとiPadの色域が狭くなってしまう!
- 実際に色域を測定するとsRGBレベルしかなかった!
- 色域が狭くなる原因はディスプレイプロファイルにあり!
“最終確認はMacでしませう”
Liquid Retina XDRを搭載した『12.9インチiPad Pro(2021)』ですが、MacのSidecarを使うと、iPad Proの色域と色味が妙に変……。そこで、Sidecar利用時のiPad Proの色域を測定してみました。
それは困りましたわね。
性質を理解する必要がありそうやね。
目次
Sidecar × iPad の色域問題
現行のMac(macOS Catalina以降)には、iPadをMacのサブディスプレイ化できる、『Sidecar』という機能が搭載されています。
このSidecar機能とApple Pencilを組み合わせれば、iPadを液晶タブレットのように利用できるので、お絵描きや写真編集のような作業が、 Mac + iPad + Apple Pencil で完結できるようになります。
私は専ら、このSidecar機能をLightroom・Photoshop・Illustratorで使っているのですが、使っているうちに、iPad Proで表示される“色”に対して違和感を感じるようになってきました。
広色域なLiquid Retina XDRディスプレイを謳っているわりには、色域にレンジの広さを感じないというか…色味がMacとズレているのです。
iPad Pro自体は広色域
12.9インチiPad Pro(2021)には、『Liquid Retina XDR』という広色域ディスプレイが採用されており、Apple公式でDisplay P3の色域をサポートしていることを謳っています。
Appleでは各カラースペースにおける、色域のカバー率を公表していないのですが、sRGBとDCI-P3・Display P3に関してはフルカバーしているようです。余談ですが、Pro Display XDRはAdobe RGBカバー率が96%〜97%ぐらいだそう。
つまり、12.9インチiPad Pro(2021)が単独動作したときは、少なくとも広色域と言えるレベルのディスプレイを搭載しているわけです。
Sidecar時のiPadの色域を測定
■測定時の環境
▼Mac
- Hardware:13インチMacBook Air(Apple M1・2020)
- OS:macOS 11.5.1
▼iPad
- Hardware:12.9インチiPad Pro(2021)
- OS:iPadOS 14.6
- True Tone:オフ
- Night Shift:オフ
- Luminance:50%
▼Others
- Calibrator:Datacolor SpyderX Pro
- Chromaticity Diagram software:ColorAC
そういうわけで、Sidecar利用時に12.9インチiPad Pro(2021)のLiquid Retina XDRディスプレイが、どういう色域になっているのかを測定してみます。
sRGB | DCI-P3 | Display P3 | Adobe RGB | |
比率 | 97.4% | 71.9% | 71.9% | 72.2% |
カバー率 | 93.8% | 71.8% | 71.8% | 69.5% |
Sidecar利用時のiPad Proの色域
測定結果は上表のとおりで、Sidecarを利用すると、12.9インチiPad Pro(2021)の広色域ディスプレイを活かすことができていないという結果になりました。
なお、色域の測定に関しては、 試行回数 = 1 なので、多少のブレがあるのはご了承を。それにしても、sRGBはまだしも、Display P3のカバー率が壊滅的な状態になってしまっています。これでは、自慢のLiquid Retina XDRディスプレイの意味があまりありません。
いずれにせよ、MacのSidecarを利用して、iPadを液晶タブレットやサブディスプレイとして使う場合は、iPad側のディスプレイの表示色はアテにしないほうがよさそうです。
この測定結果から、Sidecar利用時のiPadについては、あくまで作業用とし、仕上がりの確認については、Mac本体や外部モニター(BenQ SW321C)を使うことにしています。
原因はディスプレイプロファイル
12.9インチiPad Pro(2021)の広色域ディスプレイが、Sidecarを使うと色域が狭くなる問題。どうやらこの原因は、MacのディスプレイプロファイルにSidecar専用のものが割り当てられているからのようです。
通常のMac(内蔵Retinaディスプレイ)では『Color LCD』というプロファイルが割り当てられているのですが、Sidecar利用時のiPad(Sidecar Display)では『Sidecar Display』という専用のプロファイルになっています。
sRGB | DCI-P3 | Display P3 | Adobe RGB | |
比率 | 95.5% | 70.4% | 70.4% | 70.8% |
カバー率 | 93.6% | 70.4% | 70.4% | 70.8% |
Sidecar Displayディスプレイプロファイルの色域
このSidecar DisplayのICCプロファイルを調べてみたのですが、やはりこれがiPadの色域を狭くしている原因のようです。
Mac側のColor LCDプロファイルは、ほぼDisplay P3と同じ色域を持っているのですが、Sidecar Displayプロファイルは、それをはるかに下回る色域しかありません。このSidecar Displayプロファイルの中身は、キャリブレーターで測定した色域とほぼ一致しているので、やはりプロファイルの問題なのでしょう。
“宝の持ち腐れ”って、まさにこのことやんね。
うーむ、困ったあーる……。
まとめ「Sidecar利用時のiPadの色域は過信禁物」
12.9インチiPad Pro(2021)自体は、Display P3に対応した『Liquid Retina XDR』という広色域ディスプレイが採用されていますが、Sidecar利用時にはそのポテンシャルは活かせないという結論でした。
もちろん、iPad Pro単体で使うぶんには問題ないので、色域を気にする必要性はありません。ただ、Sidecarを使ってお絵描きや写真編集を行う際には、仕上がりの確認はMac側のディスプレイで行うのがベターのようです。
とにかく、Sidecar利用時のiPadの色域を過信してはいけない、というオチでした。
これって、OSのアップデートで解決する問題なのかなー!?
おまけ
あとで分かったんだけど、Sidecar利用時の色域の狭さは既知の問題だったみたいであーる。
そうだったのですね。
前から色味が変だとは思ってたんだけど、調べてみると全然違ってたから、今後の取り回し方には要注意かなー。
液タブとして使うには、色域が足りないやんね。
そうなんだよねー。
スタンドアローンとSidecarを使い分ける必要があるわけですなー。
おわり
SidecarだとLiquid Retina XDRが活かせない…うーむ。