- 色域の『XX比』と『XXカバー率』は意味がまるで違うので注意!
- デザイナーやフォトグラファーなら『XXカバー率』に注目!
- メーカーによって解釈の差異があるので公称値を鵜呑みにはできない!
Adobe RGB比○○% ≠ Adobe RGBカバー率○○%
広色域モニターで見かける「Adobe RGB比○○%」や「Adobe RGBカバー率○○%」という表記。実は『XX比』と『XXカバー率』とで…意味がまったく違う!そこでこの違いをお勉強してみます。
なに…それ……。
厄介ですわね。
目次
TL;DR
- 『XX比』と『XXカバー率』では意味が別物
- 『XX比』は或る色域が持つ面積比からの算出値
- 『XXカバー率』は或る色域の網羅率からの算出値
- XX比とXXカバー率が混同利用されている可能性有
- モニター購入時はXXカバー率に注目
とりあえずはこんな感じですなー。
『XX比』と『XXカバー率』の違い
パソコン用のモニターを購入するときに、「Adobe RGB比95%」や「Adobe RGBカバー率90%」といった、特定の色域をカタログ等に表記しているのをよく見かけるはずです。
この2つスペックを示す表現、非常に似ていてややこしいのですが、実はまったく解釈の異なったものをそれぞれ示しているのです。なので、まず知っておかなければならないのが、この『XX比』と『XXカバー率』は“別物”ということ。ここを知っておかないと、広色域モニター選びで失敗する確率が上がってしまいます。
それを踏まえて問題あーる!
Adobe RGB比95%とAdobe RGBカバー率90%
…どっちがAdobe RGBの色域で広色域と言えるでしょうか?
もち、Adobe RGB比95%やんね!
実は同じ…とかですかね!?
『XX比』と『XXカバー率』とは?
モニターの色域スペックを示す、『XX比』と『XXカバー率』とが、まったく別の解釈を持ったもの、ということはここまでで分かりました。ならば、何がどう違うのでしょうか。それをここからは見ていきます。
『XX比』とは?
色域の『XX比』とは、ある色域規格全体の面積とモニターの色域の面積を比較した値を指します。
例えば、あるパソコンモニターが持つ色域とAdobe RGBの色域を、xy色度図(ガマット図)で可視化して比較したとします。
このとき、Adobe RGBが持つ色域の面積Aを100とし、パソコンモニターが持つ色域の面積Bも100だとします。そして、この面積Bが面積Aと比べて、幾分かズレているとします。つまり、AとBの面積のサイズは同値ですが、ピッタリと重なっているわけではなく座標が異なっているという状態です。
このときのパソコンモニターのAdobe RGB比は100%となります。
要するに、この色域の『XX比』というのは、単純に特定の色域とモニターが持つ色域の面積のサイズだけを比べているというわけです。このとき、モニターが持つ色域の座標は考慮されていないので、どれだけズレていてもXX比には影響されないということになります。
『XXカバー率』とは?
色域の『XXカバー率』とは、ある色域規格の範囲とモニターの色域の範囲とが重なっている部分を比較した値を指します。
例えば、あるパソコンモニターが持つ色域とAdobe RGBの色域を、xy色度図(ガマット図)で可視化して比較したとします。
このとき、Adobe RGBが持つ色域の面積Aを100とし、パソコンモニターが持つ色域の面積Bも100だとします。そして、この面積Bが面積Aと比べて、幾分かズレているとします。つまり、AとBの面積のサイズは同値ですが、ピッタリと重なっているわけではなく座標が異なっているというわけです。
このときのパソコンモニターのAdobe RGBカバー率は100%未満になります。
要するに、この色域の『XXカバー率』というのは、特定の色域が持つ範囲をモニターが持つ色域の範囲がどれくらい覆っているのかを比べているというわけです。先程のXX比とは異なり、モニターが持つ色域の座標も考慮されているので、色域の範囲そのものと、各色域の頂点となる座標位置も考慮されていることになります。
正確なのはカバー率
色域の『XX比』と『XXカバー率』とは何か、それらについて理解すると、モニターの色再現性を正確に示す指標なのは『XXカバー率』のほうだということが分かります。
仮に、Adobe RGB比110%と謳っているパソコンモニターがあったとしても、この『XX比』という概念では単純に面積比でしか表していないので、本当にAdobe RGB色域をフルカバーしているのかは、分からないということになってしまうのです。
ですので、Adobe RGB比95%のモニターと、Adobe RGBカバー率90%のモニターとが2つあったとしても、どちらがAdobe RGB色域をより多くカバーしているのかは数値だけでは何とも言えないとなってしまうのです。ただ、正確にAdobe RGB色域における色再現性の指標が分かるのは、Adobe RGBカバー率90%のモニターになります。つまり、『XX比』という表現だと、未確定要素があるのでアテにはならないのです。
最初に問題を出した、
Adobe RGB比95%とAdobe RGBカバー率90%
…どっちがAdobe RGB色域で広色域と言えるのかは、分からないが答えになるのでしたっ!
うーん、ずるいクイズやね……。
それだけ、色域の『XX比』という表現が曖昧ということなのですね。
問題点
XX比 = XXカバー率 混同問題
ITmedia PC USERの記事によると、どうやら困ったことに、パソコンモニターを販売しているメーカーによっては、『XX比』を『XXカバー率』と同じ解釈で使っていることもあるようです。
ちゃんとすべてのメーカーが区別をして表記をしてくれると助かるのですが、残念ながら実際のところはそうはなっていないということに……。
XXカバー率を完全信用できない
XX比とXXカバー率が混同されてしまっているという問題と関係するのですが、『XXカバー率』がメーカーによって、XX比と同じ解釈で表記されてしまっていることを考えると、このXXカバー率すらもメーカーによっては信用できない可能性が出てきます。
こうなると、信用できるメーカーから買うか、他のユーザーがキャリブレーション時の測定値を公表してもらって参考にする、ってことになるよねー。
まとめ「モニター購入時は『XXカバー率』に注目」
『XX比』と『XXカバー率』の違いは、
- XX比:ある色域規格全体の面積とモニターの色域の面積を比較した値
- XXカバー率:ある色域規格の範囲とモニターの色域の範囲とが重なっている部分を比較した値
…ということになります。
最後はちょっとモヤモヤして感じになってしまいましたが、デザイナーなフォトグラファーがモニターを購入する際には、『XXカバー率』に注目というわけです。
そもそも、色域カバー率を公表してない製品も多いという事実……。
おまけ
Appleも色域カバー率をちゃんと公表してくれないかなー?
なぜか公表しませんわね。
『Display P3』の色域規格を作ってるくらいやのにね。
うーん、謎あーる。
おわり
■Reference
ITmedia PC USER, Spectra Co-op
大事なのは『XXカバー率』なのだっ!
でも、カバー率を比率と混同して使ってる場合もあーる。