- 「Adobe RGB対応」を謳う4Kモニターは安くても20万円強
- 業務用途なら『ハードウェアキャリブレーション』対応必須
- 色域のカバー率だけでなく“正確な色表示と諧調表現”も重要
写真編集やDTP(出版)に適した、“Adobe RGBカバー率が90%以上”かつ“ハードウェアキャリブレーション対応”の『4Kデザイナーモニター』を探してまとめました。……おまけで、「ここをチェックしておくと良いぞ」という話もしておきます。
色覚や色順応の問題がありますものね。
うーん、奥が深い世界なんやね。
目次
はじめに
- 25万円 〜 50万円
- Adobe RGBカバー率
- 輝度(DisplayHDR)
- コントラスト比
- 色差(ΔE)
- ルックアップテーブル
- キャリブレーション対応状況
言ったそばから……なのですが、『デザイナーモニター』という表現、キャッチーなので喧伝されがちなフレーズではありますが、対象を明確にしないとナンセンスなフレーズでもあります。便利な表現ゆえ、定義が曖昧だというわけです。
ですので、本稿における『デザイナーモニター』というのは、『Adobe RGB(Adobe RGB (1998) color space)』色空間が重視されるユーザーのためのモニター、だということを明確にしておきます。
- DTPデザイナー
- グラフィックデザイナー(印刷系)
- フォトグラファー(出力が紙媒体)
- イラストレーター(出力が紙媒体)
- Webデザイナー
- グラフィックデザイナー(Web系)
- フォトグラファー(出力がWeb媒体)
- イラストレーター(出力がWeb媒体)
Adobe RGBカバー率の高い広色域モニター、予算の折り合いがつくのであれば、どんなクリエイターでも持っておいて損はないでしょう。
しかしながら、上掲しているように、最終的なアウトプットがWeb媒体であるならば、Adobe RGBを扱うことはまずなくなります。ですので、その予算を別の機材に回したほうが合理的です(Adobe RGB対応モニターは高価なので)。
もっと踏み込んで言うと、最終的なアプトプットが紙媒体だとしても、生業としてないなら別にあってもなくても……ですな。
Adobe RGB対応の4Kモニター
①BenQ『SW321C』(Adobe RGB:99%)
BenQ SW321C |
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---|---|
実勢価格 | 23万円前後 |
画面サイズ | 32インチ |
画面パネル | LCD (IPS LED) |
画面解像度 | 3,840×2,160 |
輝度 | 250cd/㎡ |
DisplayHDR | 不明 |
HDR | HDR10 HLG |
最大表示色 | 約10億7,000万色 |
カラービット | 10bit |
ルックアップテーブル | 採用 (3D-LUT) |
コントラスト比 | 1,000:1 |
色域 | sRGB 100% (カバー率) |
Adobe RGB 99% (カバー率) |
|
DCI-P3 95% (カバー率) |
|
色差 | ΔE ≤ 2 |
Pantone Validated | 認証済 |
Calman Ready | 対応 |
ファクトリーキャリブレーション | 実施済 |
ハードウェアキャリブレーション | 対応 (キャリブレータ別売) |
映像入力 (アップストリーム) |
USB Type-C ×1 (USB PD 60W) |
DisplayPort 1.4 ×1 | |
HDMI 2.0 ×2 |
BenQ『SW321C』は、32インチ・Adobe RGB 99%対応の4Kデザイナーモニター。実勢価格は23万円前後。
主な特長は、Adobe RGB 99%カバーに加えて、16bit 3D-LUTを採用している点。また、色差も ΔE ≤ 2 であることが公表されている。そして、多彩な編集モード(異なる色空間を左右に並列表示可能な『GamutDuo』機能など)も搭載。
ただし、DisplayHDRが不明で、輝度やコントラスト比も普通。とはいえ、Adobe RGB 99%カバーかつ、ハードウェアキャリブレーション対応の4Kモニターとしては、かなり手が届きやすい価格になっております。
②Dell『UP2720Q』(Adobe RGB:100%)
Dell UP2720Q |
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---|---|
実勢価格 | 28.5万円前後 |
画面サイズ | 27インチ |
画面パネル | LCD (IPS LED TFT) |
画面解像度 | 3,840×2,160 |
輝度 | 250cd/㎡ |
DisplayHDR | 不明 |
HDR | 不明 |
最大表示色 | 約10億7,000万色 |
カラービット | 10bit |
ルックアップテーブル | 不明 |
コントラスト比 | 1,300:1 |
色域 | sRGB 非公表 |
Adobe RGB 100% | |
DCI-P3 98% | |
色差 | ΔE ≤ 2 |
Pantone Validated | 不明 |
Calman Ready | 対応 |
ファクトリーキャリブレーション | 実施済 |
ハードウェアキャリブレーション | 対応 (キャリブレーションセンサー内蔵) |
映像入力 (アップストリーム) |
Thunderbolt 3 ×1 (USB PD 90W) |
DisplayPort 1.4 ×1 | |
HDMI 2.0 ×2 |
Dell『UP2720Q』は、27インチ・Adobe RGB 100%対応の4Kデザイナーモニター。実勢価格は28.5万円前後。
主な特長は、Adobe RGB 100%対応で、色差が ΔE ≤ 2 という点。また、キャリブレーションセンサーが内蔵されており、別途キャリブレータを購入する必要もありません。Thunderbolt 3接続対応も良。
ただ、輝度とコントラスト比は普通。そして、Adobe RGB 100%となっているが、これがカバー率なのか、単なる比率なのかが不明(価格的に比率を指している気もするが確証がない)。
③Dell『UP3221Q』(Adobe RGB:93%)
Dell UP3221Q |
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---|---|
実勢価格 | 53万円前後 |
画面サイズ | 31.5インチ |
画面パネル | LCD (IPS mini-LED TFT) |
画面解像度 | 3,840×2,160 |
輝度 | 1,000cd/㎡ |
DisplayHDR | DisplayHDR 1000 |
HDR | HDR10 HLG |
最大表示色 | 約10億7,000万色 |
カラービット | 10bit |
ルックアップテーブル | 採用 (3D-LUT) |
コントラスト比 | 1,300:1 |
色域 | sRGB 非公表 |
Adobe RGB 93% (カバー率) |
|
DCI-P3 99.8% (カバー率) |
|
色差 | ΔE < 1 |
Pantone Validated | 不明 |
Calman Ready | 対応 |
ファクトリーキャリブレーション | 実施済 |
ハードウェアキャリブレーション | 対応 (キャリブレーションセンサー内蔵) |
映像入力 (アップストリーム) |
Thunderbolt 3 ×1 (USB PD 90W) |
DisplayPort 1.4 ×1 | |
HDMI 2.0 ×2 |
Dell『UP3221Q』は、31.5インチ・Adobe RGB 93%対応の4Kデザイナーモニター。実勢価格は53万円前後。
主な特長は、Adobe RGB 93%カバーもさることながら、3D-LUT採用で、色差 ΔE < 1 であること。また、DisplayHDR 1000を取得しており、かなりの高輝度を誇る。加えて、キャリブレータも内蔵。
パネルがmini-LEDということもあり、申し分ない仕様となっているが、当然のように価格も跳ね上がってきます。
④LG『32EP950-B』(Adobe RGB:99%)
LG 32EP950-B |
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実勢価格 | 50万円前後 |
画面サイズ | 31.5インチ |
画面パネル | OLED |
画面解像度 | 3,840×2,160 |
輝度 | 500cd/㎡ |
DisplayHDR | DisplayHDR True Black 400 |
HDR | HDR10 |
最大表示色 | 約10億7,000万色 |
カラービット | 10bit |
ルックアップテーブル | 不明 |
コントラスト比 | 1,000,000:1 |
色域 | sRGB 非公表 |
Adobe RGB 99% (カバー率) |
|
DCI-P3 99% (カバー率) |
|
色差 | 不明 |
Pantone Validated | 不明 |
Calman Ready | 不明 |
ファクトリーキャリブレーション | 実施済 |
ハードウェアキャリブレーション | 対応 (キャリブレータ別売) |
映像入力 (アップストリーム) |
USB Type-C ×1 (USB PD 90W) |
DisplayPort 1.4 ×2 | |
HDMI 2.0 ×1 |
LG『32EP950-B』は、31.5インチ・Adobe RGB 99%対応の4Kデザイナーモニター。実勢価格は50万円前後。
主な特長は、パネルにDisplayHDR True Black 400認証を取得した有機ELを採用している点。加えて、輝度も500cd/㎡も高く、100万:1という超高コントラストを誇っている。
色差やLUTの記載はなかったものの、パネル品質から推測するに、諧調表現も豊かでパキっとした表示をしてくれるものだと推測できる。ただし、同時に価格も手が出しづらいものに。
⑤ASUS『PA32UCX-PK』(Adobe RGB:99.5%)
ASUS PA32UCX-PK |
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実勢価格 | 32万円前後 |
画面サイズ | 32インチ |
画面パネル | LCD (IPS mini-LED) |
画面解像度 | 3,840×2,160 |
輝度 | 1,200cd/㎡ |
DisplayHDR | DisplayHDR 1000 |
HDR | HDR10 Dolby Vision HLG |
最大表示色 | 約10億7,000万色 |
カラービット | 10bit |
ルックアップテーブル | 不明 |
コントラスト比 | 1,000,000:1 |
色域 | sRGB 100% (カバー率) |
Adobe RGB 99.5% (カバー率) |
|
DCI-P3 99% (カバー率) |
|
色差 | ΔE < 1 |
Pantone Validated | 不明 |
Calman Ready | 対応 |
ファクトリーキャリブレーション | 実施済 |
ハードウェアキャリブレーション | 対応 (キャリブレータ別売) |
映像入力 (アップストリーム) |
Thunderbolt 3 ×1 (USB PD 65W) |
DisplayPort 1.2 ×1 | |
HDMI 2.0 ×3 |
ASUS『PA32UCX-PK』は、32インチ・Adobe RGB 99.5%対応の4Kデザイナーモニター。実勢価格は32万円前後。
主な特長は、DisplayHDR 1000を取得したmini-LEDパネルを採用している点。また、ピーク時輝度も1,200cd/㎡と高く、高コントラスト比を誇る。そして、色差も ΔE < 1 と非常に優秀。
高性能にもかかわらず、価格が30万円強。この手の4Kデザイナーモニターとしては破格。ただし、DisplayPort 1.2というのがネック。DisplayPort 1.4ではありません。
⑥ASUS『PA32UCG』(Adobe RGB:99.5%)
ASUS PA32UCG |
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実勢価格 | 42万円前後 |
画面サイズ | 32インチ |
画面パネル | LCD (IPS mini-LED) |
画面解像度 | 3,840×2,160 |
輝度 | 1,600cd/㎡ |
DisplayHDR | DisplayHDR 1400 |
HDR | HDR10 Dolby Vision HLG |
最大表示色 | 約10億7,000万色 |
カラービット | 10bit |
ルックアップテーブル | 不明 |
コントラスト比 | 1,000,000:1 |
色域 | sRGB 100% (カバー率) |
Adobe RGB 99.5% (カバー率) |
|
DCI-P3 98% (カバー率) |
|
色差 | ΔE < 1 |
Pantone Validated | 不明 |
Calman Ready | 対応 |
ファクトリーキャリブレーション | 実施済 |
ハードウェアキャリブレーション | 対応 (キャリブレータ別売) |
映像入力 (アップストリーム) |
Thunderbolt 3 ×1 (USB PD ?W) |
DisplayPort 1.4 ×1 | |
HDMI 2.1 ×1 HDMI 2.0 ×2 |
ASUS『PA32UCG』は、32インチ・Adobe RGB 99.5%対応の4Kデザイナーモニター。実勢価格は42万円前後。
主な特長は、DisplayHDRとして最上位となる、DisplayHDR 1400を取得している点。そして、パネルにmini-LEDを採用。1,600nitと120Hz VRRの同時対応は世界初とのこと。HDMI 2.1入力にも対応。
高色域かつ高リフレッシュレート(可変対応)なので、写真やDTPだけでなく、ゲーム開発やビデオグラファーにも非常に向いている。価格は42万円前後と高価だが、All-in-One機と考えれば、実はお得な気も。
購入ガイド(FAQ)
デザイナーモニターを探す上で、想定される質問を以下にまとめておきました。
Adobe RGB色域のコンテンツを扱っており、正確な色表現が必要な場合は重要。
写真編集やデザイン業に従事しているなら必要となってくるが、Web媒体への入稿が主であれば、そこまで重要とはなってこない。フルカラーでの出版系は重要。
モニターは 200時間 〜 300時間 利用すると色ズレするので、非対応だとカラーマネジメント上厄介。
ソフトウェアキャリブレーションは手間もかかり、行為自体に精度が求められてくるので、ハードウェアキャリブレーションへの対応は必須。キャリブレータ内蔵型だと、手間も少なくなり、なお良い。
ハードウェアキャリブレーション対応モニターでも、キャリブレータ非搭載型は多いので、別途キャリブレータを購入する必要があります。
色空間をワンボタンで変更できる機能や、PIP・PBPがあると便利。
プロ向けを謳っているデザイナーモニターであれば、これらの機能は大抵の場合において搭載されています。
サポート年数やドット抜け(無輝点)保証も要確認。
色域については、カバー率と比率は意味が異なるので、メーカーがどちらの解釈で記載しているのかも要チェック。ただし、曖昧に記載されている場合も多いため、購入前にはメーカーへ問い合わせ推奨。
作業するスペースの照明における、色温度や明度も気にしておくのがおすすめ。
疑問点があれば、本稿も含めて第三者情報を鵜呑みにせず、責任の所在がハッキリしているメーカー担当者に直接質問をしましょう。
持っておくと便利なアイテム
モニターと併せて、以下のアイテムを持っておくと作業効率が向上します。
まとめ「色域も色差も諧調も全部重要」
広義でのデザイナーモニターを探す際にも、各色空間のカバー率だけでなく、正確な諧調表現が可能な製品を選ぶことをおすすめします。
要するに、総合力勝負なのです。ですなの。
価格が高価なのは仕方ないあーる。
おまけ
うーむ、色の世界は奥が深いっ!
私たちも、日々研鑽を積む必要がありますわね。
毎日が勉強ってわけやね!
そういうことですな。
おわり
ハードに囚われがちだけど、“自分の視覚を信用しすぎない”のも大切ですな!