『脱LINE』や『LINE離れ』が困難な理由は“Web 2.0病”

キーワードは『サイロ化』と『バンドワゴン効果』
『脱LINE』や『LINE離れ』が困難な理由は“Web 2.0病”
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記事のポイント
  • インフラ化してしまってる以上『脱LINE』や『LINE離れ』は非現実的で困難
  • 自分だけ『脱LINE』は簡単だが“民族大移動”してくれないと孤立するのがオチ
  • LINEに人が集まるのはWeb 2.0が生み出したサイロ化とバンドワゴン効果

『脱LINE』や『LINE離れ』を標榜する人は少なくないが、QOLや人間関係を維持したまま、それを実行するのは非常に困難。そんな、LINEを“やめたいけどやめられない”。その元凶こそ、Web 2.0の構造そのものが起因しているというお話。

まの

LINE(の通話とメッセージ)がRCS準拠になれば解決するのですが、RCS準拠なのに相互接続できない『+メッセージ』の前例もありますからね。

二条ねこ

その肝心のRCSも、“zombie spec”と揶揄されてますな。

さたえり

Web 1.0時代では生じかなった悩みやんね。

『脱LINE』『LINE離れ』は非現実的で困難

日本でもっとも利用されているアプリのひとつ、それが『LINE』。

広義でのLINEは、いわゆるメッセージアプリ。ですが、ニュースの閲覧機能・電子マネーのウォレット機能・ショート動画の投稿機能、などが内包されており、もはやLINEは単なるメッセージアプリではなく、統合的な機能を持つスーパーアプリとなっています。

LINEがスーパーアプリ化していることによる恩恵も多いかと思われますが、「ピュアで軽量なメッセージアプリが使いたい」と思っているユーザーも少なくありません。つまり、『脱LINE』や『LINE離れ』です。

なので、LINE以外のメッセージアプリに乗り換えをしようと試みるわけですが、メッセージアプリの特性上、自分だけが脱LINEやLINE離れをしても意味がありません。加えて、日本におけるメッセージアプリのシェアはLINEの一強状態で、企業や行政までが乗っかっているデファクトスタンダード状態になっています。

そこで生じてくるのが、『脱LINE』や『LINE離れ』はしたいけれども、実際にはそう思いどおりには行かないというジレンマ。それくらい、『脱LINE』『LINE離れ』は非現実的で困難なのです。

まの

『脱LINE』や『LINE離れ』をする理由にも、いろいろありますがね。

二条ねこ

人間関係を断ち切りたいとか、俗世間から離れたいとか、そういう理由なら簡単なんだけどねー。

さたえり

情報漏洩やガバナンス基準が不安で代替アプリを探してるなら、かなり難しいところではあるやんね。

まの

2021年には個人情報の取り扱いに関する懸念報道もありましたものね。

『脱LINE』『LINE離れ』が困難な理由

タイトル
  1. メッセージ内容やシステム情報のサイロ化
  2. バンドワゴン効果とデファクトスタンダード

『脱LINE』『LINE離れ』は非現実的で困難、その理由として挙げたいのが上記の2つ。

メッセージ内容やシステム情報のサイロ化

理由①、メッセージ内容やシステム情報のサイロ化。

LINEというサービスは、RCS(Rich Communication Services)を実装しておらず、OTTプレーヤーとして、相互互換性のない独立したメッセージ機能や音声通話機能を提供しています。したがって、 脱LINEをする = 電話帳を捨てる ということになるわけです。

要するに、メッセージ内容やシステム情報がサイロ化しているため、LINEを使えば使うほど、やめづらく、結果として使わざるを得ない状況に陥ってしまうのです。

加えて、LINEの電話帳に載っている相手に対しても、LINE以外の連絡手段を伝える必要があり、代替手段を伝えられた相手からすれば、「わざわざこの人だけ、面倒臭い」と思われてしまうかもしれません。

まの

プラットフォームとして、見事に囲い込んでいるわけです。

二条ねこ

LINEの代替アプリとして『Signal』や『Discord』を教えても、それと使ってくれるかどうかは分からないもんねー。

バンドワゴン効果とデファクトスタンダード

理由②、バンドワゴン効果とデファクトスタンダード。

プロスペクト理論によれば、人間というのは、ベネフィットを増やすことよりもロスを回避する傾向、つまり『損失回避性』を持っていると考えられております。

この損失回避性をLINEに置き換えて話すと、脱LINEやLINEを使わないことによる人間関係の損失を回避するために、おのずとユーザーの母数が多いLINEに吸い寄せられていく、というわけです。つまり、人が人を呼ぶ『バンドワゴン効果』が作用しているわけです。

また、企業や行政でも、LINEが積極的に活用されており、ある種の“行政お墨付き”なメッセージアプリになっております。その結果として、バンドワゴン効果が加速することになりますし、日本におけるメッセージアプリのデファクトスタンダード、という既成事実が作られていきます。

こうなってしまうと、どこに行っても、誰と会っても『LINE』がコミュニケーション中心軸に。なので、こちらも結果として使わざるを得ない状況に陥ってしまうわけです。

さたえり

企業や行政が使い始めると、否応がなしに使うことになりそうやもんね。

まの

そんなに依存して大丈夫なのか、心配になりますわね。

『脱LINE』『LINE離れ』と“Web 2.0病”

このような、『脱LINE』や『LINE離れ』をしたくてもできない状況、Web 2.0時代における、企業の独占的なプラットフォームが生み出した弊害なのかもしれません。これを“Web 2.0病”、とでも言いましょうか。

2005年以前の『Web 1.0』というのは、SMTP/POP/IMAPやHTTPなどのプロトコルを、ユーザーがそのまま扱うことが多かった時代だと認識しています。例えば、電子メールやタグ直打ちの静的な個人ウェブサイトなど。これらのプロトコルはオープン性があり、コミュニティによって管理されているため、いち企業が特定のカテゴリにおいて、支配や独占をすることはなかったのではないでしょうか。

ところが、『Web 2.0』に入り、プロトコルとユーザーの間にプラットフォーマーとなる企業が介入してきました。それにより、我々の多くはWeb 1.0時代に比べて、ありとあらゆることができるようになりました。しかし、その利便性の代償として、常にプラットフォーマーに首根っ子を押さえられる状況に陥ってしまったのです。

前述した、LINEにおけるサイロ化やデファクトスタンダード化が、まさにその証左。

プラットフォーマーによって、Web 1.0の電子メール時代にはなかったような、プラットフォーム間での“鎖国”が生じてしまったのです。中には、「それではいかん」と、GSMAのようにメッセージの標準化を図ろうとする団体が現れますが、キャリアメッセージがコモディティ化してしまった現在、海外メディアの一部では糠に釘がごとく、冷ややかな目線で捉えられております。

もはやこうなってしまった以上、Web 2.0が完全に終焉を迎えるまでは、『脱LINE』や『LINE離れ』は非常に困難であり、QOLや人間関係を維持したまま行うのは不可能に近いと言えるでしょう。

二条ねこ

『RCS(Rich Communication Services)』も期待できず、ですな。

まの

残念ながら、利用者はマイノリティのようですわね。

まとめ「“民族大移動”でも起きない限り不可能」

まとめ
『脱LINE』『LINE離れ』が困難な理由

メッセージ内容やシステム情報のサイロ化。
バンドワゴン効果とデファクトスタンダード。

『脱LINE』『LINE離れ』の根本的な問題

Web 2.0時代が生み出した、プラットフォーマーによる独占。
その利便性の代償として、常にプラットフォーマーに首根っ子を押さえられる状況に陥ってしまった。

『脱LINE』や『LINE離れ』、“民族大移動”でも起きない限りは不可能な気がしました。

まの

『+メッセージ』も微妙…ですものね。

記事に登場したガジェット

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おまけ

二条ねこ

解決策ナシ、ですな。

まの

行政が導入してしまってますからね。

さたえり

消化不良、って感じやね。

おわり