『中国SF(中華SF)』を読まなかった後悔

SF小説で感じる“文化圏”の発見
『中国SF(中華SF)』を読まなかった後悔
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記事のポイント
  • 『中国SF(中華SF)』を名前避けするのは損
  • ハードSFからノスタルジーまでバラエティ豊か
  • おすすめ本は“好き”が見つかる『時のきざはし』

皆さんは『中国SF(中華SF)』という、文学ジャンルをご存知でしょうか。……ずっと、食わず嫌い状態だったのですが、「もっと早く読めばよかった」と思うくらい後悔しています。

まの

科学技術とSF小説の発展は…相関しているのかも!?

二条ねこ

数年前から流行している『中国SF』ですな。

さたえり

劉慈欣の『三体』とかやんね。

『中国SF(中華SF)』とは?

『中国SF』や『中華SF』と呼ばれる文学ジャンルは、広義では中国圏におけるSF作品を指すようです。なので、台湾や香港などの作家が中国語で書いた小説も『中国SF』や『中華SF』に含まれるとのこと。実際、中華SFアンソロジーとして出版されている書籍の中には、台湾人作家の作品も収録されております。

ただ、『台湾SF』のように明確に分類されていることもあるため、“どこからどこまで”という線引きは難しいかもしれません。強いて言えば、『中華SF』とすれば中国圏における広義のSF文学、『中国SF』とすれば中国に限定した狭義のSF文学、となるのかもしれません。

なお、本稿では定義づけ論争をしたいわけではないので、間口を広く取るためにも、中国圏におけるSF作品を包括的に『中国SF』と呼ぶことにします。

中国SFブームの火付け役『三体』

日本ないし世界における、中国SF小説ブームの火付け役となった作品といえば、劉慈欣の『三体』というハードSF超大作。これに異を唱える人は、まずいないでしょう。

和訳された『三体』が日本で発売されたのが、2019年7月のこと。ですが、英訳自体は2014年にされており、かなり前から英語圏での高い評価を得ていました。Meta CEOのMark Zuckerbergや、元米大統領Barack Obamaらも、絶賛しているというのは非常に有名な話。もちろん、日本でも『三体』は高い評価を得ております。

ちなみにこの『三体』、3つのパートから構成されており、和訳本は『三体』『三体 II 黒暗森林 (上)』『三体 II 黒暗森林 (下)』『三体 III 死神永生 (上)』『三体 III 死神永生 (上)』という、合計5冊に分けられて収録されております。ここに別作家のスピンオフ作品『三体 X 観想之宙』を加えると……。

権威あるSF系文学賞である『ヒューゴー賞』も受賞しており、著者の劉慈欣は『中国SF四天王』と呼ばれる大家であるため、“読んでいて損はない作品”なのは間違いない。ですが、本を読む習慣がない人にとっては、その圧倒的な物量から、手を出すのが億劫になるのは想像に難くない。

加えて、やはり好みというものはあるので、安易に薦めづらいというのも。手に取った最初の作品によって、ハマる・ハマらない、が決まってしまうものですし。なので、少しずつ沼に嵌るという意味でも、まずは長編小説ではなく、アンソロジーから読み進めるのが筆者としてはおすすめです。

中国SFアンソロジーで“好き”を見つけて

そういうわけで、ひとくちに『中国SF』や『中華SF』といっても、硬派な作品から、切ないロマンス作品まで存在しており、非常にバリエーション豊か。“軽食”で言うなれば、ただ単に味の違うおにぎりがズラリと並んでいるわけではなく、おにぎりもあれば、ちまきもあるし、クロックムッシュまである…という感じなのです。

だからこそ、まずはアンソロジーから手を出して、好きな作家や好きな作品を探してみてほしいのです。『三体』に代表される長編小説を読むのは、それからでも遅くはありません。もちろん、『三体』から中国SF入った人も、ぜひアンソロジーに。

ちなみに、筆者が中国SF小説に興味を持つ契機となったのが、中国SFアンソロジー『時のきざはし』に収録されている『プラチナの結婚指輪(著:凌晨)』という作品。

この『プラチナの結婚指輪』は、結婚したいがお金がない田舎の男性が、顔が真っ平で地球の言葉が話せない異星人と結婚する物語。

中国では、長年の『一人っ子政策』による男女比率の大きな偏りから、『剰男』と呼ばれる結婚できない男性が増加傾向にあるという社会問題を抱えています。その背景を知った上で読み進めると、より考えさせてくれる作品です。

まの

中国SFアンソロジーだと、『折りたたみ北京』や『月の光』も定番ですわね。

まとめ「読まなかった後悔は大きい」

筆者は“本の虫”ではないため、あまり言えることは多くないのですが、ぜひ毛嫌いせずに『中国SF』『中華SF』を読んでみてください。

読まなかった後悔は大きい……かもしれません。

まの

『時のきざはし』からだと、『七重のSHELL』や『鯨座を見た人』もおすすめですわ。

記事に登場したガジェット

おまけ

二条ねこ

わたしの中の中国といえば、嘘っぽいワニCGやサメCGが出てくるB級映画なんだけどねー。

まの

ま、まぁ…そうですわね。

さたえり

ほんと、そういうの好きやね……ねこちゃんは。

おわり