- USB-Cは2基あるが片方だけThunderbolt 4という謎
- I/Oから分かったノートPCでVR HMDを接続するややこしさ
- Alienware x15はスペック的にもI/O的にもVRに最適
Alienware x15にはUSB-Cが2基あるのですが、1つめが『Thunderbolt 4』、2つめが『USB 3.2』、という構成になってます。「なぜ、2つともThunderbolt 4にしないの?」と考えた結果…実に“考えられた仕様”だったことが判明しました。
奥が深そうですわね。
つまり、“あえてそうしてる”仕様なわけやね。
目次
はじめに
DellのゲーミングノートPC『Alienware x15』には、合計2基のUSB Type-Cポートが搭載されており、1つめが『Thunderbolt 4』、2つめが『USB 3.2 Gen 2』、となっています。
このAlienware x15には、Intel CPUが採用されているので、Thunderbolt 4ポートが搭載されています。このこと自体については、ハイエンドモデルとして考えると、至極当然な流れだと言えます。
しかしながら、大抵のハイエンドモデルでは、USB Type-Cポートを可能な限り、Thunderbolt 4に対応させて搭載してきます。要するに、今回のパターンだと、2基ともThunderbolt 4ポートでもよいわけです。ですが、実際にはThunderbolt 4ポートは1基だけで、もう1基は普通のUSBとして搭載されています。
そうなると、「どうして、2基ともThunderbolt 4ポートにしないのか?」ということが気になってきます。
それを考えた結果、腑に落ちる結論に至ったので記事としてまとめた、というわけなのです。ですなの。
Thunderbolt 4 ×2
にできるはずなのに、
Thunderbolt 4 + USB 3.2 Gen 2
としているのには、何か意図的な理由があるというわけですね?
そういうことあーる!
①Alienware x15とVR
本稿の核心に迫るための重要なファクターとなってくるのが、『VR』や『VR HMD』の存在。
少しばかり記事の本筋から逸れてしまうのですが、VRについて先に話したほうが、結果的には分かりやすくなるので、まずはAlienware x15とVRについてを触れていきます。
Alienware x15は『VR Ready』
OS | Windows 10 64-bit以上 |
CPU | Intel Core i5以上 AMD Ryzen 5以上 |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 3060以上 |
RAM | 8GB以上 |
PCでVRコンテンツを快適に楽しめる指標として、GPUメーカー主導で『VR Ready』というものが策定されています。
そして、この『VR Ready』に対応したゲーミングノートPCのひとつが、今回のDell『Alienware x15』というわけです。
とどのつまり、「Alienware x15を買えば、VRコンテンツが快適に楽しめるよ」という、言わば“お墨付き”を頂いているような感じになります。
VR HMDのシステム要件
前述した『VR Ready』だけを満たしていればよいというわけではなく、VR HMD自体にもシステム要件が定められています。
VR HMD側が求めるシステム要件については、各VR HMDの公式サイトで確認することが可能です。
本稿では、特にメジャーなVR HMDとして、『Valve Index』と『VIVE Pro 2』の動作に必要なスペックについて、それぞれ順番に見ていきます。
Valve Indexのシステム要件
GPU | NVIDIA GeForce GTX 1070以上 |
RAM | 8GB以上 |
映像出力 | DisplayPort 1.2以上 |
USBポート | USB 3.2 Gen 1以上 |
Valve Indexのシステム要件を見てみると、GPUやRAMだけでなく、映像出力やUSBポートについても、細かく要求スペックが定められていることが分かります。
このValve Indexの場合、映像出力は『DisplayPort 1.2』、USBポートは『USB 3.2 Gen 1』、というのが最低ラインになってきます。
『HDMI』じゃなく『DisplayPort』指定なのが、ひとつのポイントですな。
VIVE Pro 2のシステム要件
CPU | Intel Core i5-4590以上 |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 20 Series以上 |
RAM | 8GB以上 |
映像出力 | DisplayPort 1.4以上 (VESA DSC搭載必須) |
USBポート | USB 3.2 Gen 1以上 |
※フル解像度表示の場合
前掲したValve Indexのシステム要件よりも、シビアになってくるのが、このVIVE Pro 2のシステム要件。
フル解像度表示をするのであれば、映像出力は『DisplayPort 1.4(VESA DSC)』、USBポートは『USB 3.2 Gen 1』、が要求されます。
『DisplayPort 1.4』ですか、一気にハードルが上がりましたわね。
おそらく、「デスクトップPCでやってね」というメッセージでしょうなー。
②Alienware x15とI/O
『VR』や『VR HMD』を動作させるために必要なスペック。これを見てきたわけですが、お次はいよいよ本題。
今回の疑問である「どうして、2基ともThunderbolt 4ポートにしないのか?」を紐解くため、Alienware x15とI/Oについて触れていきます。
Alienware x15のI/O仕様
USB Type-A | USB 3.2 Gen 1 ×1 |
USB Type-C | USB 3.2 Gen 2 ×1 ├ USB PD 3.0 └ DisplayPort 1.4 |
Thunderbolt | Thunderbolt 4 ×1 ├ USB PD 3.0 └ DisplayPort 1.4 |
HDMI | HDMI 2.1 ×1 |
『Alienware x15』のI/Oを整理すると、上表のとおり。
Alienware x15には、『USB 3.2 Gen 2 Type-C』と『Thunderbolt 4』が搭載されており、双方ともにDisplayPort Alternate Modeとして『DisplayPort 1.4』に対応しています。
USB Type-CのDisplayPort Alternate Modeは、『DisplayPort 1.2』の場合もあるのですが、本機では『DisplayPort 1.4』もサポートされています。
ThunderboltではないUSB Type-Cが『DisplayPort 1.4』に対応している。
…これが超重要だったのであーる!理由は後述!!
VR HMDとI/O
- DisplayPort 1.2以上
- USB 3.2 Gen 1以上
前掲した各VR HMDのシステム要件から抜粋してまとめると、映像出力に『DisplayPort 1.2』、USBポートに『USB 3.2 Gen 1』、というのがPC側に必要なI/Oとなってきます。
付け加えると、VIVE Pro 2のように、フル解像度表示をするのに『DisplayPort 1.4』を要求してくるVR HMDも存在しています。これから登場するVR HMDのことも考えると、長く現役で使うためには『DisplayPort 1.4』が搭載されているゲーミングノートPCを選ぶとよさそうです。
要するに、『Alienware x15』は、VR HMDを接続して使うのに問題はないI/O仕様になっているわけです(当然、dGPUやRAMも満たしている必要はある)。
『VR Ready』を謳っていますし、当然ですわね。
そう言われたらぐうの音も出ないけど、どうしてそうなっているかの理由を考えることが楽しいのであーる!
「なぜ、2つともThunderbolt 4にしないの?」の答え
さて、いよいよ本題。
Alienware x15のI/Oにおける、「どうして、 Thunderbolt 4 ×2 じゃなくて、 Thunderbolt 4 + USB 3.2 Gen 2 Type-C という構成になっているの?」という疑問に対して、その答えをハッキリさせていきます。
何度も言うようですが、全部のUSB Type-Cポートを『Thunderbolt 4』にしたほうが、転送速度やeGPUの活用も含めて理想っぽく見えます。にもかかわらず、あえて下位互換の『USB 3.2 Gen 2 Type-C』を残している。ここがキーポイントです。
その疑問に対する答えなのですが、NVIDIAコントロールパネル内の『PhysX構成の設定』を見れば明らかとなります。
そうです。何と驚くことに、Alienware x15のThunderbolt 4ポートなのですが、『dGPU(NVIDIA RTX 3080 Laptop GPU)』ではなく、『iGPU(Intel UHD Graphics)』側に接続されてしまっているのです。
対して、USB 3.2 Gen 2 Type-Cポートのほうは、ちゃんと『dGPU(NVIDIA RTX 3080 Laptop GPU)』側と接続されています。
このことから、『DisplayPort Alternate Mode』には、dGPU経由・iGPU経由、という2種類が存在することが分かります。当然、iGPUではVR HMDは動きません。
どうやら、『Thunderbolt 3』や『Thunderbolt 4』から出力されるDisplayPort Alternate Modeというのは、iGPU経由で出力される仕様になっていることが多いようです。対して、『USB 3.2』から出力されるDisplayPort Alternate Modeは、dGPUが搭載されているPCであれば、ちゃんとdGPUを経由して出力してくれます。
結論としては、「Thunderbolt 4のDisplayPort Alternate ModeがiGPUに接続されてしまっているから、dGPU経由で出力可能なUSB USB 3.2 Gen 2 Type-Cを意図的に残している」というわけだったのです(たぶん)。
薄型ノートPCだと、DisplayPortそのものを搭載せず、USB Type-CからDisplayPort Alternate Modeで出力する製品が多いですから、ちょっと…というか、かなり厄介ですわね。
しかも、『Surface Laptop Studio』だと、『PhysX構成の設定』を見ても、今回のような出力情報の掲載がなかったんだよねー。
そうなると、最終的には実際に接続して判断することになるやんね。
うーむ。
…判定ツールのようなものがあればいいんだけどねー。
まとめ「VR HMDとThunderbolt 4は悪相性」
単純にCPUやGPUのスペックを満たしているから、『Alienware x15』は『VR Ready』の認定を貰っているのだと思っていました。
しかし、ひょっとしたら、VR HMDのシステム要件をI/O的にも満たしているからこその『VR Ready』なのかもしれません。
…というか、Thunderbolt 4の仕様も混沌としすぎ。そして、VR HMDと相性が悪い。
今後は、DisplayPort Alternate Modeに対応した『USB USB 3.2 Gen 2 Type-C』についても、評価していかないといけませぬなー。
おまけ
あ、そうなってくると、AMD機のゲーミングノートPCのほうが便利かも!?
AMD CPUだと、Thunderboltが載せられませんものね。
まさかのAMDerのアドバンテージ発見やん!
おわり
Thunderbolt 4 ×2 のほうが良さそうだけど、実際は Thunderbolt 4 + USB 3.2 が大正解なのであーるっ!