Alienware x15がI/O的にも『VR Ready』な理由

Thunderbolt 4とdGPUのややこしい関係
Alienware x15がI/O的にも『VR Ready』な理由
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記事のポイント
  • USB-Cは2基あるが片方だけThunderbolt 4という謎
  • I/Oから分かったノートPCでVR HMDを接続するややこしさ
  • Alienware x15はスペック的にもI/O的にもVRに最適

Alienware x15にはUSB-Cが2基あるのですが、1つめが『Thunderbolt 4』、2つめが『USB 3.2』、という構成になってます。「なぜ、2つともThunderbolt 4にしないの?」と考えた結果…実に“考えられた仕様”だったことが判明しました

二条ねこ

Thunderbolt 4 ×2 のほうが良さそうだけど、実際は Thunderbolt 4 + USB 3.2 が大正解なのであーるっ!

まの

奥が深そうですわね。

さたえり

つまり、“あえてそうしてる”仕様なわけやね。

はじめに

Alienware x15

DellのゲーミングノートPC『Alienware x15』には、合計2基のUSB Type-Cポートが搭載されており、1つめが『Thunderbolt 4』2つめが『USB 3.2 Gen 2』、となっています。

このAlienware x15には、Intel CPUが採用されているので、Thunderbolt 4ポートが搭載されています。このこと自体については、ハイエンドモデルとして考えると、至極当然な流れだと言えます。

しかしながら、大抵のハイエンドモデルでは、USB Type-Cポートを可能な限り、Thunderbolt 4に対応させて搭載してきます。要するに、今回のパターンだと、2基ともThunderbolt 4ポートでもよいわけです。ですが、実際にはThunderbolt 4ポートは1基だけで、もう1基は普通のUSBとして搭載されています。

そうなると、「どうして、2基ともThunderbolt 4ポートにしないのか?」ということが気になってきます。

それを考えた結果、腑に落ちる結論に至ったので記事としてまとめた、というわけなのです。ですなの。

まの

Thunderbolt 4 ×2
にできるはずなのに、
Thunderbolt 4 + USB 3.2 Gen 2
としているのには、何か意図的な理由があるというわけですね?

二条ねこ

そういうことあーる!

ゲーミングノートPCをやっと買った!Alienware x15にした!!

ゲーミングノートPCをやっと買った!Alienware x15にした!!

2022年3月30日

Alienware x15とVR

本稿の核心に迫るための重要なファクターとなってくるのが、『VR』や『VR HMD』の存在。

少しばかり記事の本筋から逸れてしまうのですが、VRについて先に話したほうが、結果的には分かりやすくなるので、まずはAlienware x15とVRについてを触れていきます。

Alienware x15は『VR Ready』

OS Windows 10 64-bit以上
CPU Intel Core i5以上
AMD Ryzen 5以上
GPU NVIDIA GeForce RTX 3060以上
RAM 8GB以上

PCでVRコンテンツを快適に楽しめる指標として、GPUメーカー主導で『VR Ready』というものが策定されています。

そして、この『VR Ready』に対応したゲーミングノートPCのひとつが、今回のDell『Alienware x15』というわけです。

とどのつまり、「Alienware x15を買えば、VRコンテンツが快適に楽しめるよ」という、言わば“お墨付き”を頂いているような感じになります。

VR HMDのシステム要件

前述した『VR Ready』だけを満たしていればよいというわけではなく、VR HMD自体にもシステム要件が定められています

VR HMD側が求めるシステム要件については、各VR HMDの公式サイトで確認することが可能です。

本稿では、特にメジャーなVR HMDとして、『Valve Index』と『VIVE Pro 2』の動作に必要なスペックについて、それぞれ順番に見ていきます。

Valve Indexのシステム要件

GPU NVIDIA GeForce GTX 1070以上
RAM 8GB以上
映像出力 DisplayPort 1.2以上
USBポート USB 3.2 Gen 1以上

Valve Indexのシステム要件を見てみると、GPUやRAMだけでなく、映像出力やUSBポートについても、細かく要求スペックが定められていることが分かります。

このValve Indexの場合、映像出力は『DisplayPort 1.2』、USBポートは『USB 3.2 Gen 1』、というのが最低ラインになってきます。

二条ねこ

『HDMI』じゃなく『DisplayPort』指定なのが、ひとつのポイントですな。

VIVE Pro 2のシステム要件

CPU Intel Core i5-4590以上
GPU NVIDIA GeForce RTX 20 Series以上
RAM 8GB以上
映像出力 DisplayPort 1.4以上
(VESA DSC搭載必須)
USBポート USB 3.2 Gen 1以上

※フル解像度表示の場合

前掲したValve Indexのシステム要件よりも、シビアになってくるのが、このVIVE Pro 2のシステム要件。

フル解像度表示をするのであれば、映像出力は『DisplayPort 1.4(VESA DSC)』、USBポートは『USB 3.2 Gen 1』、が要求されます。

まの

『DisplayPort 1.4』ですか、一気にハードルが上がりましたわね。

二条ねこ

おそらく、「デスクトップPCでやってね」というメッセージでしょうなー。

Alienware x15とI/O

『VR』や『VR HMD』を動作させるために必要なスペック。これを見てきたわけですが、お次はいよいよ本題。

今回の疑問である「どうして、2基ともThunderbolt 4ポートにしないのか?」を紐解くため、Alienware x15とI/Oについて触れていきます。

Alienware x15のI/O仕様

USB Type-A USB 3.2 Gen 1 ×1
USB Type-C USB 3.2 Gen 2 ×1
├ USB PD 3.0
└ DisplayPort 1.4
Thunderbolt Thunderbolt 4 ×1
├ USB PD 3.0
└ DisplayPort 1.4
HDMI HDMI 2.1 ×1

『Alienware x15』のI/Oを整理すると、上表のとおり。

Alienware x15には、『USB 3.2 Gen 2 Type-C』と『Thunderbolt 4』が搭載されており、双方ともにDisplayPort Alternate Modeとして『DisplayPort 1.4』に対応しています。

USB Type-CのDisplayPort Alternate Modeは、『DisplayPort 1.2』の場合もあるのですが、本機では『DisplayPort 1.4』もサポートされています。

二条ねこ

ThunderboltではないUSB Type-Cが『DisplayPort 1.4』に対応している。
…これが超重要だったのであーる!理由は後述!!

VR HMDとI/O

タイトル
VR HMDの利用に必要なI/O
  • DisplayPort 1.2以上
  • USB 3.2 Gen 1以上

前掲した各VR HMDのシステム要件から抜粋してまとめると、映像出力に『DisplayPort 1.2』、USBポートに『USB 3.2 Gen 1』、というのがPC側に必要なI/Oとなってきます。

付け加えると、VIVE Pro 2のように、フル解像度表示をするのに『DisplayPort 1.4』を要求してくるVR HMDも存在しています。これから登場するVR HMDのことも考えると、長く現役で使うためには『DisplayPort 1.4』が搭載されているゲーミングノートPCを選ぶとよさそうです。

要するに、『Alienware x15』は、VR HMDを接続して使うのに問題はないI/O仕様になっているわけです(当然、dGPUやRAMも満たしている必要はある)。

まの

『VR Ready』を謳っていますし、当然ですわね。

二条ねこ

そう言われたらぐうの音も出ないけど、どうしてそうなっているかの理由を考えることが楽しいのであーる!

「なぜ、2つともThunderbolt 4にしないの?」の答え

さて、いよいよ本題。

Alienware x15のI/Oにおける、「どうして、 Thunderbolt 4 ×2 じゃなくて、 Thunderbolt 4 + USB 3.2 Gen 2 Type-C という構成になっているの?」という疑問に対して、その答えをハッキリさせていきます。

何度も言うようですが、全部のUSB Type-Cポートを『Thunderbolt 4』にしたほうが、転送速度やeGPUの活用も含めて理想っぽく見えます。にもかかわらず、あえて下位互換の『USB 3.2 Gen 2 Type-C』を残している。ここがキーポイントです。

Alienware x15の『PhysX構成の設定』

その疑問に対する答えなのですが、NVIDIAコントロールパネル内の『PhysX構成の設定』を見れば明らかとなります

そうです。何と驚くことに、Alienware x15のThunderbolt 4ポートなのですが、『dGPU(NVIDIA RTX 3080 Laptop GPU)』ではなく、『iGPU(Intel UHD Graphics)』側に接続されてしまっているのです。

対して、USB 3.2 Gen 2 Type-Cポートのほうは、ちゃんと『dGPU(NVIDIA RTX 3080 Laptop GPU)』側と接続されています。

このことから、『DisplayPort Alternate Mode』には、dGPU経由・iGPU経由、という2種類が存在することが分かります。当然、iGPUではVR HMDは動きません。

どうやら、『Thunderbolt 3』や『Thunderbolt 4』から出力されるDisplayPort Alternate Modeというのは、iGPU経由で出力される仕様になっていることが多いようです。対して、『USB 3.2』から出力されるDisplayPort Alternate Modeは、dGPUが搭載されているPCであれば、ちゃんとdGPUを経由して出力してくれます。

結論としては、「Thunderbolt 4のDisplayPort Alternate ModeがiGPUに接続されてしまっているから、dGPU経由で出力可能なUSB USB 3.2 Gen 2 Type-Cを意図的に残している」というわけだったのです(たぶん)。

まの

薄型ノートPCだと、DisplayPortそのものを搭載せず、USB Type-CからDisplayPort Alternate Modeで出力する製品が多いですから、ちょっと…というか、かなり厄介ですわね。

二条ねこ

しかも、『Surface Laptop Studio』だと、『PhysX構成の設定』を見ても、今回のような出力情報の掲載がなかったんだよねー。

さたえり

そうなると、最終的には実際に接続して判断することになるやんね。

二条ねこ

うーむ。
…判定ツールのようなものがあればいいんだけどねー。

まとめ「VR HMDとThunderbolt 4は悪相性」

単純にCPUやGPUのスペックを満たしているから、『Alienware x15』は『VR Ready』の認定を貰っているのだと思っていました。

しかし、ひょっとしたら、VR HMDのシステム要件をI/O的にも満たしているからこその『VR Ready』なのかもしれません。

…というか、Thunderbolt 4の仕様も混沌としすぎ。そして、VR HMDと相性が悪い。

二条ねこ

今後は、DisplayPort Alternate Modeに対応した『USB USB 3.2 Gen 2 Type-C』についても、評価していかないといけませぬなー。

記事に登場したガジェット

おまけ

二条ねこ

あ、そうなってくると、AMD機のゲーミングノートPCのほうが便利かも!?

まの

AMD CPUだと、Thunderboltが載せられませんものね。

さたえり

まさかのAMDerのアドバンテージ発見やん!

おわり